成長戦略会議 「世界直行型」開発実現に施策パッケージ ファーストインクラス・ベストインクラス創出へ
公開日時 2026/03/11 05:01
政府は3月10日に開いた日本成長戦略会議で、危機管理投資・成長投資を行うと位置付けた17分野で、優先的に投資する61製品・技術を選定した。医薬品関連で選定された「ファーストインクラス・ベストインクラス製品」については、官民投資ロードマップ素案も提示。「世界直行型」の開発の実現により、成長が見込まれる海外市場の獲得につなげることを“勝ち筋”として、人材や治験実施体制強化に加え、「AI・データ利活用による研究開発プロセスの高度化・効率化」を実現に向けて講じるべき施策にあげた。高市早苗首相は片山財務相に、危機管理投資や成長投資への活用に向けて予算を「別枠」として管理する方針を示した。今夏に取りまとめる骨太方針の策定前に、投資額や日本経済への定量的インパクトなどの試算を示す方針。
同日の成長戦略会議では、優先的に投資する61製品・技術に加え、検討が先行している品目・技術に対して、官民投資ロードマップ素案も示された。
「創薬・先端医療」分野では、ファーストインクラス製品・ベストインクラス製品(医薬品、再生医療等製品)、感染症対応製品が先行して検討が進められている。
◎目標に「特許品のグローバル市場の年平均成長率9.6%と同水準の成長実現」掲げる
ファーストインクラス製品・ベストインクラス製品(医薬品、再生医療等製品)をめぐっては、“勝ち筋(基本戦略)”として、基礎研究力や高品質な治験の強みを活かし、成長が見込まれる海外市場の獲得につなげる「世界直行型」の開発を実現。優れたシーズを起点に国内外から投資を呼び込み、その資金と環境を次の研究開発につなげる好循環を生み出すこととした。
目標としては日米欧同時承認に加え、日本の製薬企業がグローバルで獲得する特許品の市場規模について、特許品のグローバル市場の年平均成長率(年平均9.6%)と同水準の成長を実現することを目標に据えた。また、アンメットメディカルニーズを満たす製品を生み出すことで、健康医療安全保障を実現することも掲げた。
実現に向けて講じるべき施策として、実用化を担う人材の育成・流動化、スタートアップ等への投資呼び込み、基礎研究力・治験実施体制の更なる強化、AI・医療データ利活用推進による研究開発プロセスの高度化・効率化をあげた。これにより、新たな創薬シーズの創出から実用化までを一気通貫で進める環境を整備する考え。具体的な官民投資の内容としては、スタートアップ・製薬企業によるPOC取得(有効性・実現可能性の初期段階での確認)までの研究開発投資・設備投資、日本での国際共同治験をあげた。
◎感染症対応製品 国内安定供給、技術力を生かして輸出も
感染症対応製品をめぐっては、ワクチン、治療薬等は、供給が途絶すれば国民の生命に直結するものであり、健康医療安全保障上、供給途絶リスクを低減する自律性確保が急務と指摘。平時と有事の需給変動が大きいため、生産体制の安定的な維持が難しい。抗菌薬は、原材料等を特定国に極度に依存しており、免疫グロブリンは原材料や製造能力不足により平時から国内自給できていない。一部の海外メガファーマが撤退している抗菌薬等の新薬や我が国が強みを有する診断薬等の感染症対応医薬品の海外展開により、一定の世界シェア獲得が見込まれるとした。
一方、日本は、供給計画遵守力の高さや生産技術、測定技術等の強みを有していると説明。国内の安定供給に加え、技術力を活かした高品質な製品を輸出する姿を目指す。このため、“安定的な需給の確保”の必要性を指摘。感染症対応医薬品の研究開発や製造施設の整備、ワクチン・抗菌薬等の買上げ・備蓄、安定供給に資する措置の推進、原料血漿確保体制の強化などを講じるべき施策として示した。
投資内容については、感染症対応医薬品(原材料・原薬を含む)の研究開発支援や国内製造施設整備・国内生産体制確保、製薬企業における抗菌薬の原薬・原材料備蓄の支援、免疫グロブリンの原料血漿確保体制の確保をあげた。
◎国内バイオ医薬品 国内製造拠点による製造目指す 2040年に売上高23兆円
「合成生物学・バイオ」分野では、「バイオ医薬品・再生医療等製品等」について先行して検討を進めている。ワクチンを含むバイオ医薬品・再生医療等製品等は、国民の健康や命に直結する、医療・経済安全保障上、極めて重要な分野と指摘。他国依存の現状を脱却し、感染症危機や海外情勢に左右されることなく、国内供給できる体制を構築する危機管理投資が必要と説明。世界の医薬品市場は、2022年で約200兆円規模と推計されており、今後も高い成長率が見込まれている。輸入超過・他国依存の構造を転換し、経済成長を牽引する産業とする必要があるとした。このため、感染症危機や海外情勢に左右されることなく、国内供給を完結できる体制の構築を目指す。
iPS細胞製品や抗体薬物複合体等の技術基盤や、製造技術などの我が国の強みを活かし、国内外のバイオ医薬品・再生医療等製品等の創薬・製造市場獲得する必要性も指摘。2040年の日本企業の売上目標は、23.0兆円と掲げた。
◎危機管理投資、成長投資を別枠管理へ 投資額や日本経済への定量的インパクト踏まえ
今後、ロードマップは、成長戦略会議の下部組織に当たるワーキンググループで、国内投資の内容や規模、時期などについて議論を深め、今夏の骨太方針策定を見据えて決定する見通し。
高市首相は、優先的に投資する製品・技術について、「国内のリスク低減の必要性、海外市場の獲得可能性、関係技術の革新性などの観点から、戦略的に選択した」と説明。「各製品・技術等について、日本が取り得る”勝ち筋”を見い出し、供給及び需要の両面にアプローチする多角的な観点からの総合支援策を明らかにするということとともに、これによって引き出される国内投資の内容、規模、時期などを明らかにしてください」と関係閣僚に指示した。
また、片山さつき財務相には、17戦略分野における投資額や日本経済への定量的インパクトを踏まえ、「政府債務残高の対GDP比を安定的に引き下げていく中でも可能となる財政規模を精査した上で、危機管理投資、成長投資などに活用するため、別枠管理する方策について検討してください」と指示した。