大塚製薬 次世代PTSD薬候補「TSND-201」 30年頃の米国上市、ピーク時売上1000億円以上目指す
公開日時 2026/04/13 04:52

大塚製薬の渡邊武・常務執行役員事業開発部長は4月10日、米トランセンド・セラピューティクス社買収に関するオンライン説明会で、獲得する次世代PTSD治療薬候補「TSND-201」(開発コード)について、2030年頃の米国上市とピーク時売上1000億円以上を目指す方針を示した。渡邊氏は、同剤の特長について、「脳の神経回路の再編を促す神経可塑性を誘導し、速効性、高い有効性、持続性を兼ね備えたPTSD治療が期待できる」と説明。新薬が20年以上登場していないPTSD市場のパラダイムシフトになり得るとの見方を示した。用途特許は最長2047年(42年+最大5年の延長)まで維持されることも明らかにした。
トランセンド社を買収して獲得するTSND-201は、メチロンを有効成分とする迅速作用型のニューロプラストゲン(脳内ニューロンの神経可塑性を誘導する化合物)で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などを対象とした治療薬候補として開発が進められている。
成人の PTSD 患者を対象に同剤の有効性、安全性、忍容性を評価する第2相臨床試験(IMPACT-1)はすでに完了している。同試験では、TSND-201またはプラセボを週1回、計4回経口投与した後、その後6週間追跡した。その結果、TSND-201群はプラセボ群と比較して、CAPS-5 総重症度スコアにおいて、ベースラインから 64日目までに速効性かつ統計学的に有意な改善を示し、主要評価項目を達成した。
渡邊氏は、同試験の結果について、投与2回目以降(10日目)からプラセボと有意差があったことに触れながら、「週1回投与が可能で、速効性があり、大きな有効性を示している。治療期間後の効果持続も示唆され、既存薬SSRIにはない有用性が期待できる」と述べた。安全性については、有害事象による中止例はなく、良好な忍容性を確認したことに加え、「中枢神経系に作用する化合物として想定される範囲内の安全性プロファイル」であり、「精神展開剤で知られている典型的な幻覚作用は認められなかった」と説明した。
◎第3相試験は3月に開始 再投与に関する試験も計画
第3相臨床試験(EMPOWER-1)は3月から開始した。被験者数は300例を予定し、主要評価項目はベースラインからのCAPS-5総スコアの変化量。渡邊氏は、TSND-201がこれまでの試験結果により米FDAからブレークスルーセラピー指定を受けたことを紹介しながら、第3相試験はFDAとの合意のもと、「FDAの精神展開剤ガイダンスに則り、適切な開発を実施する」と強調した。また、承認取得には至らなかったものの、抗精神病薬・レキサルティのPTSDの適応追加に向けて米国で開発を進めた経験やノウハウを生かし、開発のスピードアップを図る考えも示した。
米国での承認申請に向け、投与間隔の把握(再投与)を目的とした第3相の非盲検継続投与試験を計画していることも明らかにした。
◎レキサルティなどで得た事業収益 「次世代に投資していくリズム感と連続性が大事」
トランセンド社は2021年設立の精神・神経疾患への迅速作用型治療薬の開発を進めるバイオテクノロジー企業。大塚製薬は米国子会社を通じて、2026年第2四半期中にトランセンド社の買収手続きを完了し、完全子会社化する予定。買収対価は、完了時に7億米ドルを支払うほか、開発品の売上に応じた販売マイルストンとして最大5億2500万米ドルを支払う可能性がある。
大塚製薬がトランセンド社を買収する戦略的意義は、▽コア事業領域の精神・神経領域における後期開発品の拡充による事業基盤の強化、▽次世代の精神科治療アプローチの確立、▽米国で25年近く蓄積した精神・神経領域の事業基盤を活用した事業の最大化――の3点となる。
渡邊氏は、「レキサルティ、エビリファイメンテナ(アリピプラゾールの1カ月製剤)、エビリファイアシムトファイ(同2カ月製剤)による非常に多くの事業収益を、次の後期開発品へPL上のやり取りで投資していくことが非常に重要」だと指摘。「十分な利益を生んでいる間に、次世代(の新薬)へ投資していくリズム感と連続性が大事だ」と述べ、主力品による強固な事業収益で精神神経領域の継続成長を支える次の柱を育てる戦略的意義を強調した。