Heartseed iPS由来心筋球のカテーテル投与1例目を報告 低侵襲化の重症心不全治療で臨床試験開始
公開日時 2026/06/15 04:51

慶應義塾大医学部発ベンチャー・Heartseedの福田惠一代表取締役兼執行役員CEOは6月12日の会見で、重症心不全患者を対象に他家iPS細胞由来の心筋球をカテーテルで投与する「HS-005」の国内第Ⅰ/Ⅱ相試験(EMERALD 試験)で1例目の投与を実施したと報告した。同社は、2026年内の申請を目指す開胸手術による投与ルートに加え、低侵襲なカテーテル投与のアプローチを確立し、手術が難しい重症心不全患者への治療機会の拡大を目指す。福田CEOは、「日本主導で世界標準治療になるようにしたい」と抱負を述べた。
HS-005は、他家iPS細胞由来の心筋細胞の微小組織・心筋球を、専用のカテーテルシステムを用いて患者の心筋内に投与する治療プログラム。心筋球は約1000個の心筋細胞で構成されており、直接心筋壁へ投与することで心筋機能を補填し、心臓の収縮力改善を図る。
HS-005の国内第Ⅰ/Ⅱ相試験(EMERALD試験)は、虚血性心疾患または拡張型心筋症による重症心不全を対象とするもの。3月には、信州大学医学部附属病院で最初の患者への投与を実施。拡張型心筋症による心不全患者に対して15か所に合計1億5000万個の心筋細胞を移植した。同院によると、投与後に左室駆出率の改善が認められたほか、安全性に関しても重篤な合併症はなく、免疫抑制剤のコントロールが安定していた。また、30秒以上持続する不整脈も認められなかったという。
さらに、独立安全性評価委員会は、患者の4週間のデータを評価した結果、拡張型心筋症群における治験の継続を承認した。今後も虚血性心疾患と拡張型心筋症の各7例、合わせて14例を対象とした臨床評価を進めていく計画で、2年間で症例の組み入れ完了を目指す。
◎開胸投与とカテーテル投与の両輪で治療選択肢を提供
同社はすでに、開胸下で心筋球を投与するLAPiS試験において、虚血性心疾患による重症心不全患者10例への投与を完了している。26年内の承認申請、27年内の承認取得を目指しており、福田CEOは開胸投与とカテーテル投与について、「両方とも重要である」との認識を示した。
その理由として、開胸投与については病変部を直接確認しながら投与できるため、「選択性の高さ」があると説明した。一方、カテーテル投与は低侵襲であることから、手術が困難な患者にも投与が可能になることに加え、入院期間が短縮することも想定されるという。
福田CEOは、「症例によって選ぶことができること」を重視。「カテーテルの治験では15か所の移植で進めているが、今後どのような形でこれを発展させていくのかを慎重に検討してベストの方法を見つけていく」と述べた。今後は、患者自身のiPS細胞を活用した、高付加価値な「テーラーメイド」の医療の実現に向けた準備も進める考えを示した。