アステラス・田中営業本部長 地域戦略強化に向けMR改革 MRは員数の議論より役割見直しが必要
公開日時 2017/02/21 03:52
アステラス製薬の田中信朗・執行役員営業本部長は、このほど本誌のインタビューに応じ、これまで進めてきた支店・営業所の再編に続き、MR改革を進め、地域戦略を強化すると強調した。地域医療構想、地域包括ケアシステムの推進で、地域ごとに異なる医療体制、ニーズが生ずることから、地域戦略立案を支店、戦略の実行を営業所と機能を明確化。その上で、全製品を担当するMRが、地域医療連携・多職種連携の必要性を含め「ニーズを把握し、地域医療の役に立てる提案を行う」とし、エリアごとのニーズに応えていく活動へ転換すると説明した。その結果として製品価値の最大化を図る考えという。２次医療圏ごとにプレゼンスを高めるため、医薬品卸との協業が重要になるとの認識も示した。
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田中氏は、改革の必要性について▽成長製品がプライマリケア製品から抗がん剤などスペシャリティ製品へとポートフォリオが変化▽地域包括ケアに向け地域ごとに医療提供体制が変化－－していることを指摘。それに対応するため2012年に支店体制を４減らし14とし、14年には営業所を50減らし109に再編。15年には全製品担当を基本に、がんなど一部に領域専任を置くMR体制に改め、「組織の改革」と「個（MR）の改革」を継続的に進めてきた。
地域戦略を強化するため、「支店体制は、支店の戦略立案の最適単位という観点から再編した。次に、地域医療の要となる二次医療圏を考慮して営業所を戦略の立案と実行単位の観点から最適化した」と説明。2015年のMR体制を見直しを「一連の営業改革の総仕上げ」と位置付けた。
田中氏は「これ（自社製品）を使ってくださいといったプロダクトアウトの活動ではなく、医師が地域の中で、どういう役割を担い、どういう患者さんを診て、どのようなニーズを持っているかを把握した上で、アステラスの製品を地域医療に役に立てる提案を行うといった姿を描いている」と説明。その活動を行うには「幅広く情報提供ができる全製品を担当した活動が必須と判断した」と強調した。新たな活動を全MRに促すため評価体系を見直した。MR改革の成果については「道半ば。そう簡単なことではないことは覚悟して進めている」と話した。
全製品担当MRの長期収載品に対する営業資源配分については、「MRも必要に応じて訪問するが、卸に定期的な情報提供をお願いするといった資源配分が課題になる。地域包括ケアシステムが本格的に動き出すマーケットにおいては、長期収載品において卸の力を借りる場面はあると思っている」との認識を示した。
２次医療圏ごとにプレゼンスを高めるため、医薬品卸との協業が重要になるとした。地域ごとの広がりが見込まれる共同購入・共同交渉への対応については「地域ごとの購買の変化を支店単位で見極め、日々の製品価値の最大化に向け、取引卸との関わり方を考えることになると思う」と述べるにとどまった。
ＭＲ体制・役割 ４つの視点から判断
2400人という業界最多水準のMR数の今後については、MRの体制・役割を考える際の視点として▽製品ポートフォリオの変化▽地域医療の変化▽営業活動の規制▽ビッグデータ、リアルワールドインフォマティクスの進展―― を挙げ、「この４つのポイントから、MRが製品の価値を最大化するのに必要な役割はどのようなものなのかが、変わってくると思っている」との考えを示した。
その上で、「私たちの製品の価値を最大化するのに必要な要員数と、１人当たりの生産性だけを見た要員数とは当然異なってくる。私たちが、どんな製品をポートフォリオにもち、価値をいかに届けるかを考えると、単純に数の議論に落とすのはまだ早いと考えている」と述べた。
医療ICT進展でMRの役割・マーケ戦略変化 全社的な戦略は模索中
その上で、ビッグデータ、リアルワールドインフォマティクスなど医療ICTの進展による医薬営業への影響にも触れ、臨床医の診療プロセスが変わることに伴い「MRの医師への接し方も変わるだろう。すなわちMRの役割や機能にも変化が求められる。マーケティング戦略についても、ビッグデータをハンドリングすることで戦略立案の仕方が変わってくる可能性がある」と指摘。具体的な方向性は示さなかったが、「MRだけではなく、アステラス全体としてサポートすることが必要になると考えている」と述べ、全社的に情報戦略を模索としていることを明かした。