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18年度予算大臣折衝 診療報酬本体0.55%引上げ 薬価改革の両輪に「日本創薬力強化プラン」

公開日時 2017/12/19 03:52

加藤厚労相と麻生財務相は12月18日、2018年度厚生労働省予算案について大臣折衝を行い、診療報酬本体について0.55%引き上げることを決めた。各科改定率は、医科0.63%、歯科0.69%、調剤0.19%それぞれ引き上げる。「1:1.1:0.3」の配分は維持した。ただ、調剤報酬は、大型門前薬局について外枠で国費ベース60億円程度の引き下げが決まり、調剤の一人負けが鮮明となった。一方、改定財源となった薬価は1.36%、材料価格を含めると1.45%の引き下げとなる。これに薬価制度改革分を加えると1.74%の引き下げとなる。薬価制度改革を通じて、産業構造転換を迫られた製薬産業だが、革新的新薬を創出する仕組みの両輪として、「日本創薬力強化プラン(緊急政策パッケージ)」(本誌18日付既報、記事はこちら)について約529億円措置することも大臣折衝で合意した。

文末の「関連ファイル」に、大臣折衝事項の資料を掲載しました(12月19日のみ無料公開、その後はプレミア会員限定コンテンツになります)。

政府は、今回の診療報酬・介護報酬の同時改定について、2025年に到来する超高齢社会への方向性を決定づける“分水嶺”と位置づけて予算編成作業を行ってきた。財務省からは社会保障費の伸びを抑制する目的で、診療報酬本体の引き下げを提案したが、10月22日投開票の衆院総選挙で与党・自民党が大勝したことを契機に、その支持母体である日本医師会など医療関係団体が、地域医療を守る観点からプラス改定奪取に強気の攻勢に出た。その後、11月8日に公表された医療経済実態調査で病院経営の厳しさが指摘されたことに加え、安倍首相が3%の賃上げ目標を掲げたことで、与党内からも医療関係職種に対して人件費を補填する必要性を指摘する声が沸き上がり、診療報酬本体引上げへの機運が俄然高まった。潮目が変わった瞬間でもある。

大臣折衝後に記者会見に臨んだ加藤厚労相は、「改定率は厳しい財政事情の中で、医療機関の経営状況、医療従事者の賃金動向などを考慮した」と述べ、0.55%の本体引き上げに踏み切った背景を説明した。厚労省は2025年の超高齢化社会に向け地域包括ケアシステムの構築に注力する。今回の大臣折衝でも、次期診療報酬改定で地域の医療機関の機能分化・連携を評価する方向が示されたことに加え、「地域医療介護総合確保基金」として30億円積み増しすることも決めた。

一方で、調剤については、大型門前薬局で損益率が高いことなどを踏まえ、適正化(国費▲60億円程度)を行うことも合意した。集中率の操作に伴う調剤報酬の付替請求が明るみになるなど、結果的に2016年度改定を上回る規模で調剤報酬を引き下げる方針が固まった。今後、大型門前を定義づける処方せん枚数と集中率などが焦点となりそうだ。

◎薬価改定 長期収載品の薬価段階的引き下げで国費140億円程度

薬価については、市場実勢価格による薬価引下げ分と特例拡大再算定・市場拡大再算定などをあわせて1.36%(国費▲1500億円程度)引き下げることを決めた。さらに、①新薬創出等加算について、平均乖離率要件を撤廃し、対象品目を革新性・有用性に着目して判断するなどの抜本的な見直し(国費▲110億円程度)、②後発品上市後10年を経過した長期収載品の薬価についての段階的な引き下げ(国費▲140億円程度)、③費用対効果評価による価格調整―を行う。

薬価制度の抜本改革は、長期収載品に依存する製薬企業のビジネスモデルを脱却し、革新的新薬を創出するモデルへと転換するとのメッセージを強力に発信するものとなった。新薬創出等加算の見直しをめぐっては、日米欧の製薬団体が厚労省の骨子案に再考を突き付けた。その後、政府と自民党間での修正協議を踏まえ、最終的には新薬創出等加算の企業要件と品目要件を拡大するなど、新薬メーカーへの打撃は緩和された。一方で、長期収載品比率の高い内資系企業などでは、長期収載品の引下げが経営を直撃することも想定される。

厚労省は今回の予算編成に際し、薬価制度抜本改革との両輪として、緊急政策パッケージ「日本創薬力強化プラン」を策定し、この日の大臣折衝に臨んだ。18年度予算案では約529億円を計上、さらにAMED関連費を補正予算案に計上し、総額約860億円規模(本誌既報)の大型プロジェクトとして打ち出した。このプロジェクトは、内閣官房健康・医療戦略室、経済産業省と連携した予算措置を行うことも合意された。「医薬品産業強化総合戦略」の改訂に際し、日本発のシーズが生まれる研究開発の環境整備やリアルワールドデータ(RWD)を活用した創薬コストの低減と効率性向上、最適使用推進ガイドラインを通じた適正な医薬品の評価の環境・基盤整備などを柱に、国内の創薬力強化に力を入れる姿勢を改めて示した。


◎加藤厚労相 緊急政策パッケージ「我が国の創薬をしっかりと強化したい」


加藤厚労相は同日の会見で、新薬創出等加算の見直しが薬価制度抜本改革の柱になっているとした上で、「革新的新薬を創出するための効果的・効率的な仕組みに見直していく」と説明。「それと同時に、日本の創薬力を強化することは非常に大事だ。日本発のシーズが生まれる研究開発の改善を行う。これらを総合的に製薬企業に活用していただいて我が国の創薬をしっかりと強化を図っていただきたい」と述べた。

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