【解説】薬機法改正で不正の抑止力に 虚偽・誇大広告への課徴金、役員の解任命令も

公開日時 2018/06/08 03:52
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厚生労働省は、虚偽・誇大広告を行った製薬企業に対する課徴金や役員の解任命令などを視野に、不正に対する行政措置を大幅に見直す方針だ(本誌既報)。次期の医薬品医療機器等法(薬機法)改正の焦点に浮上してきた。ここ数年の間に、ARB・ディオバンのデータ改ざんに端を発し、副作用報告遅延や不正製造問題などが相次いで明るみになった。過大な売上目標の設定や、従業員への過剰な利益追求など、経営を優先するあまり企業経営陣のガバナンスの効かない事例が散見されたことが問題視されている。次期薬機法改正では役員の行政措置を検討し、その責務を問う狙いが込められている。社内ガバナンスを強化することで、不正の摘発のみならず、不正事案を未然に防ぐ、いわば抑止力として機能させたい考えだ。

◎横並びに罰則を科す尺度ではない


「欧米の考え方では、罰則を科すときに抑止できるかどうかがひとつの判断基準だ。横並びにどこまで罰則を科すかという絶対的な尺度ではなく、これだけのペナルティーであれば次からやらなくなるだろうということ」-。6月7日に開かれた厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で森田朗部会長(津田塾大総合政策学部教授)はこう指摘した。

ディオバン問題、CASE-J問題、化血研の不正製造、山本化学工業の原薬不正製造、副作用報告遅延-。ここ数年間だけでも、製薬業界を取り巻く数多くの不正が起きた。薬機法第66条で虚偽・誇大広告に違反した場合の罰金も個人、法人ともに最高でも200万円。一方で、薬機法第66条違反を問われ、現在東京高裁で係争中のディオバン問題も、問題発生当時には1000億円を超えるブロックバスターに成長している。業務停止となった化血研も、代替品がない製品については流通が続けられてきた。不正により得た収益を明確にすることは難しいが、企業が継続して不当な経済的インセンティブを享受していたという事実は動かしがたい。特に大型製品では、いわば違反の”やり得”となってしまう可能性まではらむ。こうした中で、厚労省は、行政措置の見直しを行うことが必要と判断した。

この日の部会では、法律の専門家である山本隆司委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授)が、行政処分である課徴金は、起訴や裁判の必要な刑罰に比べて実施しやすく、「利得をすべて回収させることができるという点でも実効性があるのではないか」と指摘した。部会で大きな異論はなく、今後、課徴金の範囲や手法へ議論が移ることとなりそうだ。処罰の範囲は故意を中心に議論が進むことが想定されるが、重過失を含め、どの範囲まで法律の適応とするかも焦点となることが想定される。

不正により得られるインセンティブをはるかに上回るペナルティーがなければ抑止力とならないと指摘する声もある。森田部会長は、「収益の数%」を課徴金とすることを提案。「発生確率×ペナルティーで期待値を大きくして抑止を図る」必要性を強調している。


◎企業内の抑止力として三役の機能が重要に


不正が起きる背景として、企業経営陣の責任は重大と言わざるを得ない。次期薬機法改正の中では、役員の責務が問われることになる。これにあわせて、総括製造販売責任者(総責)、品質保証責任者、安全管理責任者のいわゆる「三役」の要件・責任明確化も論点となっている。特に総責については、経営会議に直接出席するなど、経営陣にモノ申せる組織内での高い地位も要件化されることとなりそうだ。企業内で抑止力を発揮する要の存在となることが期待される。経営者にとっては総責をはじめとした三役を通じたガバナンスをいかに構築するかが、重要になる。

医薬品のプロモーションをめぐっては、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の策定に向けた検討が進められている。自社品の情報提供に使用する資材について、使用実態などの点検、監督(モニタリング)を社内で義務づけることが盛り込まれる方針で、薬機法上で役員の責務が明確化されるのと一貫した流れとみることもできる。当然のことながら、MRの行うプロモーションについても、経営陣のガバナンスが発揮されることが求められる。医薬品のプロモーションひとつとっても、経営陣がプロマネやMRの一個人の責任と言い逃れることはできない。本来、経営陣の責務とは株主に対してだけでなく、従業員、そして製品を通じて患者に対して果たすことではないか。薬機法改正の議論は、経営陣としての責務を突き付けている。(望月英梨)

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