官民対話で製薬業界団体 研究開発税制改正を見据えオープンイノベーションの重要性強調

公開日時 2018/11/13 03:52
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日米欧の製薬業界団体は11月12日、厚労省、文科省、経産省と内閣府、アカデミアの代表が一堂に集う「革新的医薬品創出のための官民対話」で、2019年度税制改正で焦点となる研究開発税制を見据え、革新的創薬に向けたオープンイノベーションの重要性を訴えた。社会保障改革の論点が労働生産人口の確保や医療介護給付費の増大などに移るなか、製薬産業側に構造転換を求める声が日増しに高まっている。こうした環境変化を受け、製薬業界も次世代技術をビジネスの主軸に取り入れるため、アカデミアやベンチャーだけでなく、人工知能(AI)やIT、デジタル産業、医療機器産業など周辺産業との連携を模索する動きも高まってきた。業界側は19年度税制改正要望で焦点となる研究開発税制については、オープンイノベーション型について、「大企業などへの委託研究」を対象に含めるなどの拡充を要望している。

革新的新薬創出に向けてエコシステムの構築が喫緊の課題となるなかで、研究開発税制の拡充により、量・質両面から投資を呼び込みたい考え。具体的には、投資の”量”向上に向けて、法人税の控除上限の25%から30%への引上げや、試験研究費の対売上高研究費率が10%超の場合の“高水準型”の3年間の延長などを求める。さらに、“質”向上へ、“オープンイノベーション型”を大企業などへの委託研究まで拡大することを要望している。

◎根本厚労省「研究開発、創薬、オープンイノベーションを支援」


会議の冒頭で、根本匠厚労相は「創薬力を高めていくためには魅力的なシーズを持つアカデミアとの連携を持つオープンイノベーションを推進することが重要。アカデミアと製薬企業との研究開発、創薬、オープンイノベーションを支援する」と表明した。

厚労省は2018年末、薬価制度抜本改革を断行し、産業構造改革を迫った。それと同時に、緊急政策パッケージ「日本創薬力強化プラン」を策定し、厚労省分として529億4000万円を確保。創薬環境を整備し、長期収載品依存モデルから脱却し、より高い創薬力を持つ産業となるよう、構造転換を後押ししていた。2019年度予算概算要求では約100億円を積み増しし、628億5000万円を求めている。

◎製薬協・中山会長「世界最先端のヘルスケアエコシステム」構築を


国が“創薬大国”の実現を掲げるなかで、日本製薬工業協会(製薬協)の中山讓治会長(第一三共代表取締役会長)は、「日本を最先端のヘルスケアイノベーション創出国」とするための提案を行った。提案は、①イノベーションの推進に向けた研究開発の基盤整備・体制構築、②イノベーションを評価・促進する仕組みづくり―の2点。

なかでも、アカデミアやベンチャーキャピタル、ファンド、行政、医療機関などが連携し、「世界最先端のヘルスケアエコシステム」を構築する必要性を強調した。がんゲノムやiPS細胞など新たなモダリティーが出現し、創薬アプローチが変化するなかで、基礎研究から医薬品の実用化までの橋渡し研究の推進や、医療系ベンチャーの創出の必要性も高まっている。

さらに、日本国内だけでなく、米国をはじめとした海外の研究機関・研究者や投資家などのネットワークと連携し、「世界とつながるエコシステム」の構築が必要との考えを示した。米国研究製薬工業協会(PhRMA)の原田明久・在日執行委員会副委員長(ファイザー代表取締役社長)は、日本の次世代を担う若手研究者に米国の行政やアカデミアなどでトランスレーショナルリサーチの重要性を学んでもらう機会の必要性を指摘している。こうした取り組みにより、「世界最高の医薬・医療イノベーション創出拠点の実現」を目指す。

◎予防・先制医療の実現に向けRWDの利活用など基盤整備求める


超高齢社会が到来し、健康寿命の延伸が重視されるなかで、予防や早期介入の必要性が高まっていると指摘。健康・医療情報データの利活用や前向きコホート研究の推進により、疾患の発症・進行メカニズムを解明し、発症・重症化を防ぐ“予防・先制医療”を次世代医療に位置付け、推進を求めた。

こうした”次世代医療”実現のために、リアルワールドデータ(RWD)の利活用や薬事規制などの基盤整備の重要性を製薬業界側は強調した。RWDの利活用については次世代医療基盤法や、改正議論の進む医薬品医療機器等法(薬機法)を見据え、業界側から利活用の目的を明確にすることの必要性を指摘する声などもあがったという。また、薬事規制では、欧米の規制当局で承認されればアジアなど広く承認されるが、PMDAでの承認は異なることの指摘もあった。

◎製薬産業の未来占う 東北大メディシナルハブ


アカデミア側の立場からは、国立がん研究センターの全ゲノム解析への取り組みが紹介された。また、東北大が、研究開発に加えてビジネスも実践できる拠点として、“東北大学医薬品開発オープンイノベーション・プラットフォーム(東北大学メディシナルハブ)”の構築に取り組んでいることを紹介した。従来型の製薬企業は基盤研究から開発、製造・販売までを自前で賄ってきた。これに対し、今後はRWDの利活用を視野に入れ、ITやバイオベンチャー、ヘルステック企業、投資家など“構造改革を補完する周辺産業”と製薬企業がタイアップし、プラットフォームを構築する姿を描いた。

石川昭政経済産業大臣政務官は、「治療のみならず予防への投資も加速する必要がある。世界でも、AIやIoTなどの技術を活用しながら製薬企業から総合ヘルスケアサービス提供企業へと転換を目指す動きも活発化している」と説明。さらに、「デジタル分野等の異業種参入・連携も含めた将来の創薬、ヘルスケア産業の在り方を描くことは必要だ。こうした連携を進めるため、研究開発税制によるオープンイノベーションの支援の拡大が必要だ」との見解を示した。 

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