メディパルHD 新型コロナで環境激変 デジタル投資やPMS事業で収益回復モデル構築へ 20年度上期決算
公開日時 2020/11/04 04:52
メディパルHDの依田俊英専務取締役IR担当兼事業開発本部長は11月2日、2021年3月期第2四半期決算発表のカンファレンスコールに臨み、4月の薬価改定に加えて新型コロナの感染拡大に伴う受診抑制等で連結売上高は前年同期比4.0％減、営業利益は35.6％減になったと説明した。メディセオ事業だけで営業利益は72.2％減となる。依田専務は、新型コロナの影響など「医療機関の厳しい環境はこのまま続く」と見通し、収益回復に向けて、物流の効率化や希望退職者の募集、PMS事業の育成やデジタル化の推進に注力する姿勢を表明した。
第2四半期の連結業績は、売上高１兆5884億円（前年同期比4.0％減）、販管費890億円（2.7％減）、営業利益180億円（35.6％減）。うち医療用医薬品等卸事業のメディセオ事業は、売上高１兆304億円（4.3％減）、販管費579億円（3.6％減）、営業利益35億円（72.2％減）となった。
◎まさに変革期 医療機関の経営環境も厳しさがこれからも続く
依田専務は電話会議で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う患者の受診抑制などで「想定より大きく環境が変化した」と強調。20年４～9月期の市場成長率マイナス5.1％（クレコンR&C速報値）に照らして、「売上高は市場並みの実績を確保したが、利益率が大きく低下した。販管費は物流改革などを生産性向上に努めたが、営業利益は大幅な減益となった」と述べた。一方で顧客側の医療機関がコロナ患者の受入れに伴う経営悪化や感染拡大に伴う一般患者の受診抑制などで「変革期の中で医療機関の厳しい環境がこれからも続く。あまり大きく改善することはないのではないか。」と見通し、これをサポートする戦略を立案・実行しながら、収益回復に向けた具体的な取り組みを推進する姿勢を鮮明にした。
芝野博之取締役営業本部長は、「価格競争は起こっていない」としながらも粗利が下がった背景については、メーカーの高仕切価と新型コロナの影響を受けた医療機関側の価格下げ圧力によって価格の下落を招いているとした。また、「仕切価についてはカテゴリーチェンジの影響もあって、薬価改定ごとにあがってきている。21年度に薬価改定（毎年薬価改定）があるとすると、この傾向は今後も続くことが予想される」との認識を示した。
◎コスト競争力の強化と新規事業推進の２本柱で収益回復
収益回復に向けた取り組みでは、①コスト競争力の強化、②新規事業の推進―をあげた。コスト競争力では、ALCの高機能物流を活かし、配送回数や検品時間の短縮など、さらなる物流の効率化でコスト削減を進める。これにより得意先の業務効率化に貢献するほか、CO2排出量の削減やSDGｓの目標達成への取り組みを進める。人員構成の適正化では、今年12月にメディセオ、エバルス、アトルの3社で希望退職者を募集する（関連記事）。
新規事業については、10月に設立した子会社「ファルフィールド」のPMS事業を「次の成長ステージに押し上げる」とした。メディセオ、エバルス、アトルの3社にあったPMS事業を新会社に集約させ、1月から事業を開始する。メディパルHDは21年3月期の通期売上予想として３億円を計上している。製薬企業がPMSをアウトソーシングする動きは今後増加すると見込んでおり、今後の事業収益モデルに成長すると期待している。
◎「Clinical Cloud by MEDIPAL」の成長に期待
デジタル事業では、医師を対象としたプラットフォーム「Clinical Cloud by MEDIPAL」を構築している。KOLの動画配信を通じ、診療所の医師に最先端の情報提供を行っている。会員数は現在4万人超で、稼働率や視聴率の向上に向けた取り組みに注力している。依田専務はデジタル事業について、「いまは先行投資の段階」と述べながらも、製薬企業からのフィーが一つ大きな収入源になると期待感を示し、「将来的には会員数５万人～10万人を考えている」と強調した。
◎9月段階の妥結率94.9％ 「交渉時期遅れも最後に妥結できた」
この日は価格妥結率も報告された。9月段階の妥結率は94.9％だった。昨年9月の妥結率は99.7％、一昨年9月は91.4％となっている。当初、新型コロナ感染症の感染拡大に伴い、価格交渉自体が行えないとの観測もあったが、「交渉自体の時期が遅れたのは事実だが、最後になって妥結できた」としている。