【中医協薬価専門部会 8月6日 議事要旨 薬価算定組織からの意見、令和8年度薬価改定について】
公開日時 2025/08/07 08:32
中医協薬価専門部会が8月6日に開かれ、薬価算定組織からの意見、令和8年度薬価改定について議論した。本誌は、質疑における診療・支払各側の発言内容を議事要旨として公開する。
(※薬価算定組織からの意見および令和8年度薬価改定に関する事務局説明は略)
城山部会長:ありがとうございました。それでは薬価算定組織からの意見および令和8年度薬価改定に関しまして、ご質問等ありましたらよろしくお願いいたします。はい、江澤委員よろしくお願いします。
江澤委員:ありがとうございます。いくつかご質問があるので申し上げさせていただきます。まず資料「薬―1」(薬価算定の基準に関する意見)の1ページの「1.イノベーションの適切な評価」の「意見」のところですが、規格間調整のみによる算定における補正加算については、この意見ですと、市場性加算2以外の補正加算に対応することとなりますが、そもそも類似薬があることで規格間調整により算定されている新薬でありますので、企業側としては既に開発ノウハウがあって、薬理作用や医薬品の特性としての新規性が高くないものもあると思います。したがいまして、この意見の必要性について説明を伺いたいと思います。
もう一点は資料「薬―1」の2ページ目の「(2)標準的治療法に関する改定時加算の評価」の「意見」の下から3行目です。「本邦で標準的治療法となったと判断できる場合」とは、どこで判断し、どこで承認するのか。もし現行でお分かりであれば教えていただきたいと思います。
最後に資料「薬―1」の「2.薬価算定の妥当性・透明性の向上」の「意見」の1行目から2行目にかけて「専門的見地からの検討が必要な場合」というのは具体的にはどういった場合が想定されるのか、おわかりであれば教えていただければと思います。以上でございます。
城山部会長:事務局からということでよろしいですか。はい、よろしくお願いします。
事務局:薬剤管理官でございます。ご意見ありがとうございます。いま薬価算定組織から提案が出ておりますが、今後具体的に検討するときに、より具体的な資料を提出し、ご議論いただこうかと思っております。
具体的に一つ目の規格間調整につきましては資料「薬―1-2」(参考資料)の3ページ目に模式図をつけております。より具体的な品目がありますので、そちらの方を示しながら、ご検討いただければと思っております。
それから、診療ガイドラインの記載でございますが。こちらは国内のガイドラインに記載をしているということになっておりまして、前回の制度改正のところでは、日本で開発されるのが早い場合は日本国内外のガイドラインに当然載っておりませんので、海外のガイドラインも参考とできるということにしております。それでもガイドラインに載っている、載っていないというところは非常に大きいですので、製販後にガイドラインに載った場合でも、後から加算をしてはどうかというようなものでございます。
最後、3つ目でございます。こちらの方の「必要性があるもの」につきましては、薬事承認のところで全く新しい用法用量ができるとか、あるいは剤形ができるとか、そういったもので新たな評価が必要なものについてと考えております。いずれにいたしましても今後の議論のところで資料を追加して、ご検討いただきたいと思っております。以上でございます。
城山部会長:いかがでしょうか?
江澤委員:はい、ありがとうございます。一番目については、しっかりと科学的な妥当性があるかどうか、必要性を十分検証して、またご検討いただければと思います。2番目については結局どこでどういったプロセスで判断するのかという質問だったのですけれども。いかがでしょうか?
事務局:(薬剤管理官)国内で一般的に使われている臨床ガイドラインがあると思うのですが、そちらの方にきちんと薬剤が記載されているというところが一つのメルクマールになっております。
江澤委員:はい、了解です。ありがとうございます。
城山部会長:他いかがでしょうか? 森委員お願いします。
森委員:はい、ありがとうございました。令和8年度薬価改定について課題整理について示されました検討案について異論がありませんが、いくつかコメントをさせていただければと思います。資料「薬―2」(令和8年度薬価改定について・論点整理)の2ページ目をご覧いただければと思います。まず、国民皆保険の持続性で示されている「先発品・後発医薬品の薬価逆転の防止」についてです。
本年4月の薬価改定で先発品と後発の薬価の逆転がかなり多くの品目で起きました。その影響によって長期収載品の選定療養であるとか、後発医薬品の調剤体制加算等のカットオフ値要件が大きな影響を受けています。
これまで選定療養の対象だった患者さんが薬価改定を経て選定療養の対象外となり、患者さんへの説明に関しても苦慮している。なぜ、これまで選定療養だったものが外れたのかを(患者に)説明してもなかなか一般の人は理解をしていただけない。非常に苦労しています。(患者さんに話しても)「薬価制度といっても」っていう話になって、かなり苦労しています。さらに今回、選定療養から外れるのであれば、再度、先発品に戻すことを希望する患者さんもいて、現場はかなり苦慮しているところになります。
薬価改定のたびにこのようなことが起こると現場も大変ですけど、患者側も非常に大変だということで、この事の対応の必要があるというふうに考えます。
また、カットオフ値ですけれども、導入当初と今でカットオフ値の算出の対象や根拠などが異なるため、例えば改定前後で同じように後発品を一生懸命に積極的に使っていても、カットオフ値要件を満たせなくなってしまった薬局が出ている現状があります。こうしたことが起こらないような薬価制度にすべきであるというふうに考えております。
それから先ほどの保険材料専門部会の議論でも逆ザヤの問題がありましたけれども、逆ザヤに関しては、できる限り早く対応いただきたいと思います。そして次回改定にはきちんと解消できるようにしていくべきと考えます。
以前、中医協で事務局の方にしっかりと現状を把握していただくようお願しましたけれども、スケジュール感など分かるようであれば教えていただきたいと思っております。
次に、包装単位の適正化についてです。以前、内服薬の高額薬剤についてそういう実態に合わせた販売包装単位にするようお願いしたところですけども、この件に関しては注射薬も同様の対応が必要であるというふうに考えております。
注射薬の場合、ビン単位で薬価が収載されており、全量を使用しないことが当然あり得ます。仮に通常用量で使用して多くの量が余るようなことでは大きな無駄となってしまうと考えます。
高額な薬剤が増加する中で、医療費の節減の点から、注射薬についても投与量に合わせた開発が必要だというふうに考えます。通常投与量と販売包装単位が異なる量の場合、薬価上の評価をどのようにするのか、加算や減算を含めた検討が必要だと思っております。以上です。
城山部会長:いくつかの点について事務局に見解を求めていました。事務局の方からいかがでしょうか?
事務局:医薬産業振興・医療情報企画課長です。いまご指摘のありました逆ザヤの実態把握に向けた調査ということでございますが、現在、業界関係者の意見を踏まえながら内部で検討しているところでございます。卸と医療機関、薬局との間での取引価格の妥結状況なども踏まえる必要があると考えておりまして、それらも踏まえて適切な時期に向けて検討してまいりたいと考えております。以上です。
城山部会長:森委員どうぞ。
森委員:はい、ありがとうございました。逆ザヤ問題ですが、これは薬局、医療機関にとって非常に大きな問題なので、しっかり対応いただきたい。それから逆ザヤが増えるっていうことですけども、中間年改定を行うことによって逆ザヤの影響ということもあると思いますので、しっかりそのことも踏まえて議論していくべきだというふうに考えております。以上です。
城山部会長:はい、どうもありがとうございました。それではいかがでしょうか? 松本委員お願いします。
松本委員:それでは薬価算定組織からのご意見につきましてコメントさせていただきます。まずはご意見をまとめていただきました薬価算定組織の皆様方に感謝申し上げたいというふうに思います。
次期薬価制度改革に向けまして貴重なご提案というふうに受け止めております。その上で先ほど江澤委員からもありましたけども、少し規格間調整についてコメントを差し上げたいというふうに思います。
一般論として新薬の開発といいますのは、医療のニーズ、技術革新、企業戦略など様々な要素を踏まえて行われるもので、その中でコストをかけてイノベーションを起こした場合に加算で評価するという必要性は十分理解しております。
規格間調整のみで薬価算定された医薬品についても、開発そのものを否定するつもりはございませんけども、様々なパターンがあると思いますので、資料「薬―1-2」の2ページ、3ページに一応示していただいておりますけども、具体的にどのような製品を想定しているのか、また、過去に加算を受けられなかったものや、さらには現在開発中のものなど、もう少し具体的な実例を示していただきながら議論する必要があるのではないかと考えております。
続きまして、令和8年度薬価改定についてコメントいたします。今回の事務局案につきましては現時点で課題となっていることを整理したということで、いずれも議論すること自体には異論はございません。私からは追加の課題も含めて何点かコメント差し上げたいというふうに思います。
まず資料「薬―2」の2ページ(令和8年度薬価改定に向けた検討について・案)のイノベーションの評価についてですが、原価計算方式で算定した新薬の中で加算の条件を満たしたにもかかわらず、係数がゼロになるケースが非常に目立っております。このことは透明性を高めるという政策目的が達成されていないと言わざるを得ません。
原価を開示できないから類似薬効比較方式の対象を広げるということではなく、製品原価の妥当性を含め、改めて原価計算方式のあり方を議論すべきだというふうに考えます。
続きまして国民皆保険の持続性の観点では長期収載品の選定要領が導入され、後発品の使用促進について、ある意味で潮目が変わった印象を持っております。
新薬の特許が切れたら速やかに後発品に市場を譲るということを前提としまして、どのような薬価制度上の対応を考えられるのか議論が必要だというふうに考えております。
その意味でここにも挙げておりますけども、オーソライズジェネリック(AG)の取り扱いについてもしっかり議論させていただきたいというふうに思います。また、類似薬効比較方式(Ⅱ)につきましては、新規性に乏しい新薬を保険給付する必要性があるのかどうかを含めて根本に立ち返った議論をさせていただきたいというふうに思っております。
次に3番目の安定供給の確保についてですが、これも再三申し上げておりますけども、薬価の下支えをした製品が、薬価差益の「調整弁」になっていないか、実態を慎重に見極める必要があると考えております。
続いて4番の薬価に関するルールについてです。先ほど薬剤管理官から説明ございましたけども、新薬の薬価収載を年4回から年7回に変更した際に、我々の方から指摘したことにつきまして論点を取り上げていただくことにつきまして感謝申し上げたいというふうに思います。いわゆる四半期再算定など新薬の薬価収載に合わせて対処したルールにつきましてはどのようなタイミングで実施すべきか、ぜひ議論したいというふうに思います。
また、これも以前に指摘させていただきましたが、新薬の特許が切れたら速やかに後発品に市場を譲るということを前提といたしますと、後発品が薬価収載された時点で新薬創出等加算の累積額は控除するのが本来のあるべき姿だろうというふうに考えております。
最後に「その他」項目についてですけども、診療報酬改定のある年・ない年に関わらず、毎年粛々と薬価改定を実施するというのが健保連のスタンスであることは変わっていないということを改めて申し上げさせていただきます。また本日の事務局案には記載されておりませんけども、これまで議論ができていない「調整幅」のあり方についてもぜひ議論させていただきたいというふうに思います。
令和7年度の実勢価改定で、医薬品のカテゴリー別に対応した実績や投与経路別の流通経費の違い、医薬品の高額化による影響等も踏まえ、どのような対応を考えられるのか、「率」だけでなく「額」も含め、実態を見ながら議論したいと考えております。私からは以上でございます。
城山部会長:ありがとうございました。ご意見ということでよろしいでしょうか? 他にございますか? 鳥潟委員お願いします。
鳥潟委員:はい、ありがとうございます。令和8年度薬価改定についてですが、ご説明いただいた内容に異存はございません。ドラッグ・ラグの解消や安定供給の確保に向けては、前回の制度改正を踏まえて、業界でどのような対応がなされたか、状況が改善されたかという点を確認した上で、評価の充実のみならず、適正化の観点から論点の議論ができればと思っております。
業界ヒアリングで少し触れさせていただきましたけども、安定供給について繰り返し特例対応してきている中、今回も継続ということではなく、実態を踏まえたメリハリのある評価が必要だと思います。その点よろしくお願いいたします。
ただし、こうした課題は薬価制度のみならず、様々な施策を組み合わせて対応していくものであり、国において制度改正や、予算措置等の施策の実施、検討を進めているものと思います。そうした状況も確認しながら議論を進めていきたいと考えております。以上です。
城山部会長:ご意見ということでよろしいでしょうか? はい、どうもありがとうございました。他にございますか? よろしいでしょうか? それでは本件に関する質疑はこの辺りとして、今後事務局において本日いただいたご意見を踏まえてご対応いただくということにしたいと思います。
次に薬剤費等の年次推移を議題といたします。事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。
事務局:薬剤管理官でございます。資料「薬―3」をご覧ください。薬剤費等の年次推移についての定例的な報告でございます。資料2ページより薬剤費等の年次推移をお示ししておりますが、令和4年度分につきまして推計が整いました。3ページ目の赤枠の通りご報告いたします。報告は以上となります。
城山部会長:はい、ありがとうございました。ただいまの説明についてご意見、ご質問などございましたらよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか?
特に、ご意見等もないということでございましたら、この議題についてはこのあたりとしたいと思います。本日の議題は以上です。次回の日程につきましては追って事務局より連絡させていただきますのでよろしくお願いいたします。それでは本日の薬価専門部会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。