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中医協 バイオAGの薬価「先行品と同一に」との意見も 市場占有でバイオシミラーの開発阻害

公開日時 2025/10/30 09:30
中医協薬価専門部会は10月29日、バイオAGをめぐり議論を行った。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「先行品と同じにすべき」と述べるなど、バイオシミラーとの薬価差をつける必要性を強調した。バイオAGは先行品と同一であるため、市場を占有。バイオシミラーの開発阻害要因となっていると指摘されており、「適切な競争環境を維持する」ための制度設計が望まれている。厚労省はAGについても、バイオAGの検討を踏まえて制度設計を進める考えだが、企業間の契約で客観的にAGか判断することの難しさも課題となる。

◎バイオAG 薬価収載せず先行品の価格維持のケースも

現行ルールでは、バイオAGの薬価はバイオシミラーと同様、バイオ先行品の0.7掛けとなっている。ただ、バイオAGは先行品と同一であるという利点があり、バイオシミラーと価格競争の条件を同様にした場合、高い市場占有率を獲得することになる。バイオAGが存在することで、開発期間や経費のかかるバイオシミラーを開発する阻害要因となっている。厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、「この結果、バイオシミラーの開発自体が行われず、先行品企業と関係が深いバイオAG製造販売業者は、薬価収載をせず、先行品のみが薬価上存在し、価格が維持されることとなり得る」と指摘した。このため、「バイオシミラーとの適切な競争環境の維持等を踏まえて設定」する必要性を指摘した。

診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「医療保険財政的には、バイオシミラーを普及させる必要性があることは理解しているが、その一方で、臨床現場としては、バイオAGが選択されやすい素地にあると察している」と述べた。そのうえで、「この問題を解決するためには、バイオAGの価格に対し、一程程度価格を抑えたバイオシミラーの薬価を設定することが必要。あくまで現行のバイオAGの薬価の設定を維持した上で、医療保険の持続や、患者負担も踏まえて、どういった対応がふさわしいのか、事務局にはご検討いただきたい」と要望した。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「実質的には先行品と同じ製品で、むしろ、先行品とはもって非なるバイオシミラーと同じ扱いをすることに違和感を覚える。バイオAGの薬価の扱いについては、先行品と同じにすべき」との見解を示した。

◎AGの薬価 診療側・江澤委員「当然、先発品より低く抑えられるべき」

AGについても俎上にあげた。先発品企業がAGの製造販売業者からライセンス料を得るケースが多く、“形を変えた先発品企業の長期収載品依存”と指摘されている。また、収載時期によらず、後発品に比べてAGのシェアが高くなる傾向であることも示されている。診療側の江澤委員は、「AGの薬価は当然、先発品より低く抑えられるべき。一方で、先発品企業へのライセンス料といった複雑な背景もあり、後発品との市場バランスを踏まえた対応は、幅広い視野で検討していくべき重要な課題であり、引き続き検討していくべきものだ」との見解を示した。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「AGは先発医薬品メーカーの許諾のもとで製造されるため、後発医薬品の使用促進の当初は、後発医薬品の使用に不安を抱く患者にお勧めしやすい製品で、AGならではの役割を果てたしてきた」と認めた。そのうえで、「AGのシェアは後発医薬品に比べて大きく、先発医薬品企業は特許期間中、研究開発投資を回収し、後発医薬品の上市後は市場から撤退し、後発医薬品企業に安定供給等の役割を譲るという目指すべき医薬品のライフサイクルに鑑みると、これらの状況などを踏まえたAGのあり方を検討する必要がある」と述べた。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「基本的には、長期収載品と同様に扱うべき」と表明。「新薬メーカーはAGの発売がほぼ確実に予見できると思いますので、長期収載品の取り扱いを工夫するということもあり得る」と述べた。

支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も、「AGやバイオAGは、後発品やバイオシミラーの市場における健全な競争を守り、最終的に患者さんの自己負担の軽減につながることから、特別な対応を検討していくべき」との見解を示した。

◎“客観的なAGの判断”がカギに バイオAGは添付文書などで判断可能

一方で、AGをめぐっては、「先発品メーカーの許諾を受けて製造販売されるものであり、企業間の契約によるものであることから客観的にAGであるか否かを判断することが困難」との課題がある。厚労省の清原薬剤管理官は、一般的に後発品には薬機法で生物学的同等性試験が課されるが、「バイオAGの中で、先発品と全く同じものを小分けするようなものは、製品までは全く同じで、明示されている。添付文書等から見られるので、第三者であるものは一部、我々としても判断ができる」と説明。さらに、「先発品の特許期間中に後発品を収載する、あるいは承認をされるという手続きがなされる場合は、個社の間で許諾が得られているということがわかる」と説明。「ただ、すべてが、わかるような状況ではない」と述べた。

診療側の江澤委員は、「そのあたりの審議は、大変重要なので、しっかりと透明性が確保できるよう、前向きに取り組んでいただければ」と要望した。

◎後発品の3価格帯集約 「例外」 企業区分Aの特例は品目ごとの改定に

後発品の価格帯集約についても議論になった。現行ルールでは原則3価格帯だが、G1/G2品目にかかわる最初の後発品上市後12年を経過した後の薬価改定で原則1価格帯に集約するとされている。この日は、このルールを適用する“例外”が議論となった。企業指標がA区分となった企業の安定確保医薬品A・Bなどで一定の要件を満たした品目については品目ごとの改定とすることを診療・支払各側が了承した。なお、25年度薬価改定では最大7価格帯。

同一規格・剤形内の品目数が少ない注射薬やバイオシミラーの価格帯集約をめぐっては、診療側の江澤委員は、「価格帯集約が行えない実態も理解するが、単に価格帯の統一が難しくなったから元に戻すということではなく、例外的な扱いを認める必要性や、例外を許容できる取り扱いなどの判断基準について十分に検討した上で、対応すべき」と主張。最高価格の30%を下回る算定額となる後発品の価格帯集約や内用薬・外用薬の拡大・集約の実施については、「維持すべき」と述べた。支払側の松本委員は、「価格帯を集約する必要性が乏しいが、品目数の多い内服薬と外用薬は、現行の取り扱いは継続すべき」と主張した。

G1・G2品目にかかわる後発品を上市後12年経過した後に1価格帯に集約するルールの見直しについては、診療側の江澤委員が「付け焼刃的な対応ではなく、今後に与える影響も含めて総合的に検討していただきたい」と指摘。診療側の森委員は、「企業区分のような他の薬価改定のルールにより、価格帯数が増加していることを踏まえると、価格帯集約のあり方の検討を行う必要がある」と必要性を認めた。支払側の松本委員は、「長期収載品に代わった後発品を増産する動きにつながらないのであれば、廃止に異論はない」と述べた。

24年度薬価改定で、企業指標がA区分で安定確保医薬品A又はBなど要件を満たした品目は、3価格帯とは別に、該当する品目のみを集約するというルールが試行的に導入されたが、価格帯が必ずしも最も高くならないなどの課題があった。厚労省は一定の要件を満たした品目について価格帯集約を行わず、品目ごとの改定とすることを提案した。

診療側の森委員は、「現在、安定供給にかかる企業指標が導入され、努力している企業や安定供給に取り組む企業が、市場での評価が反映されるような形にすべき」と賛成の姿勢を強調。支払側の松本委員も、「安定供給の確保や産業の構造転換への影響を注視しつつ、試行は継続すべき」と述べた。支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も、「企業指標の影響分について、さらに特別扱いをしていくという方針には賛成だ。業界から企業指標をうまく活用し、A区分の企業を増やしていきたいといった趣旨のご発言があったと認識しており、当方も同じ意見だ」と述べた。
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