厚労省 「先駆け審査指定制度」に6品目指定 HER2発現胃がんに用いる抗体薬物複合体など
公開日時 2018/03/28 03:52
厚生労働省は3月27日、HER2発現胃がんの治療に用いる抗体薬物複合体など開発中の医薬品6品目を、早期の実用化に向け支援する「先駆け審査指定制度」の対象に指定したと発表した。薬事承認に向けた相談・審査を優先的に行い、目標審査期間を6か月に短縮を図る。
2017年11月までに指定申請があった医薬品21品目を評価し、選んだ。指定品目要件は▽治療薬の画期性▽対象疾患の重篤性▽対象疾患に係る極めて高い有効性▽世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思・体制を持つこと――の全てに該当する必要がある。医薬品の先駆け指定は17年4月の5品目に続き3回目。
対象品目は以下の通り。カッコ内は予定効能・効果、申請者。
▽RTA 402(糖尿病性腎臓病、協和発酵キリン):国内フェーズ3。既承認薬は、いずれもその治療効果は腎機能の低下抑制であり、現時点で腎機能を改善する薬剤は存在しない。同剤は、臨床試験で腎機能の改善が認められている。新規作用機序医薬品で、体内のストレス防御反応において中心的な役割を果たす転写因子「Nrf2」の分解を抑制し、過剰な酸化ストレス及び炎症から腎臓を保護すると考えられている。
▽JR-141(ムコ多糖症II型(ハンター症候群)、JCRファーマ):国内フェーズ2/3。既存治療では、欠損している酵素を補充するが、補充された酵素は中枢神経系に移行しないため、中枢神経症状に対して効果は期待できない。同剤は、対象疾患で欠損している酵素とトランスフェリン受容体を特異的に認識する抗体を結合させた医薬品で、これにより酵素を中枢神経系へ送達させる新規の薬物送達技術を有する。
▽タファミジスメグルミン(トランスサイレチン型心アミロイドーシス、ファイザー):国内フェーズ3。現在の治療法は対症療法のほかに肝移植や心臓移植のみで、現在までに有効性が確立した治療薬はない。同剤は、トランスサイレチン(TTR)の4量体を安定化させることにより、心筋へのアミロイド沈着を抑制してTTR-CMの進行を抑制する。
▽MSC2156119J(METエクソン14スキッピング変異を有する進行(IIIB/IV期)非小細胞肺癌、メルクセローノ):国内フェーズ2。がんゲノム情報に基づいて開発中の新規作用機序医薬品。肝細胞増殖因子受容体(c-MET)に対して阻害作用を有する。
▽Trastuzumab deruxtecan(がん化学療法後に増悪したHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌、第一三共):国内フェーズ2。抗ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型(HER2)抗体に薬物(癌細胞の細胞死を誘導する低分子化合物)を連結させた抗体薬物複合体(ADC)。ADCは、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届ける。これにより、薬物の全身暴露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高める。
▽Entrectinib(前治療後に疾患が進行又は許容可能な標準治療がないNTRK融合遺伝子陽性の局所進行又は遠隔転移を有する成人及び小児固形がん患者の治療、Ignyta):国内フェーズ2。がんゲノム情報に基づいて開発中の新規作用機序医薬品。TRK(tropomyosin receptor kinase)等に対して阻害作用を有する。