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製薬協 MA・MSLの基本的考え方公表 販売情報提供活動GLとの線引きの甘さや矛盾点も

公開日時 2019/04/03 03:52

日本製薬工業協会(製薬協)は4月2日、「MA/MSLの活動に関する基本的考え方」をまとめ、ホームページ上に公表した。MA活動については、自社医薬品の販売目的ではないことや、営業活動からの独立性を担保することなどを明記した。ただ、“販売活動”の定義は、厚労省が4月1日に施行した「医療用医薬品の販売情報提供活動ガイドライン」とズレを生じている。MSLの評価指標(KPI)も「売上目標等営業活動に関連するものではなく、高度な科学的情報提供やエビデンス創出など」と明記し、「社外医科学専門家」への訪問回数も可能とした。基本的考え方策定における議論の過程では、MSLへの訪問先はKOLとしていたが、厚労省内や医療界から「販売情報提供活動に該当する」と指摘され、記載を変更した経緯がある。しかし、今回の基本的考え方でも、社外医科学専門家とKOLの区別はつかない。MR活動との線引きの甘さや矛盾点を指摘する声が早くも業界内外からあがっている。

◎MAの役割・業務で4つの例示 疾患啓発も


今回公表された基本的考え方のうち、「メディカルアフェアーズ(MA)」の役割と業務については、①社外医科学専門家との医学・科学的交流に伴う「アンメットメディカルニーズの把握」、②エビデンス創出に関する戦略作成など「メディカルプラン作成」、③研究者が発案する研究の支援・窓口業務など「エビデンスの創出」、④医療関係者等からの求めに応じたオフラベル情報の提供や疾患啓発活動など「医学・科学的情報の発信、提供」-の4項目を例示した。

「メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)」については、要件として、医学、薬学等の自然科学分野での学位取得(少なくとも学士の取得は必須)をあげた。役割と業務は、営業部門から独立し、MA部の作成したメディカルプランに沿って活動することを明記した。また、MSL が提供する情報には自社医薬品の販売促進を意図した内容を含まないことも規定している。なお、「未承認薬や適応外の情報提供は、社外医科学専門家からの要求に対して受動的に応じる場合に限る」とした。

厚労省が4月に施行した医療用医薬品の販売情報提供活動GLでは、その策定過程で、未承認・適応外薬の情報提供については販売情報提供活動からの切り分けが求められた。これを受け業界内では、外資系企業を中心にMA・MSLの確立を急ぐ声があがっていた。公表されたMAの基本的考え方では、「製薬企業間にばらつきがあるため、医療関係者をはじめとするステークホルダーの MA 業務に対する認識や認知に混乱をきたすリスクが生じている。そのため MA の意義、果たすべき役割が十分に理解されず、MA 活動が十分に展開できていない可能性がある」と説明。「必要な情報が医療関係者に提供されないことで、患者に対する診断・治療や医療の発展に対して不利益を及ぼすことも懸念される」と必要性について理解を求めた。ただ、ディオバン問題や、バイエル、アレクシオン問題など、過去の不正はMA・MSLやマーケティング部門に端を発しているケースばかり。MA・MSLを“前科一犯”と評する声も業界内にはある。グレーゾーンの情報提供をMA・MSLが担うことをコンプライアンス上、不安視する声がすでに業界内外からあがっている。

◎Q&Aも公表 MSL活動「企業活動の一端」との疑念は払しょくできない

今回は基本的考え方とあわせてQ&Aも公表した。4月1日から厚労省の販売情報提供活動GLが施行したことに伴い、業界側もGLの趣旨に沿って、医療関係者から誤解を生まないルールの明確化が求められている。ところが、Q&Aでは、「MSL活動に関連する規制等」について、販売情報提供活動GLの遵守をあげながら、企業活動の一端であることから販売促進を目的とした活動であるとの疑念が生じる可能性を自ら指摘。「販売促進を目的とするものではないとの担保方法が各会員企業間で統一されていない」として、業界内にもこうした活動に対し、慎重論が唱えられていることを明記した。厚労省側も「MSLの位置づけ及び活動が一律に定まっているものでない」との見解を昨年9月に公表しており、当時、業界内にあったMSLのGLからの除外を一蹴していた。そのため、今回の基本的考え方では、この辺の課題をクリアすることが求められたが、結果的に現時点で共通のコンセンサスを得るには至らなかったことから、見切り発車的な状況にあることを印象づけている。

「販売促進活動」の定義も、施行された販売情報提供活動GLや製薬協のプロモーションコードに比べて狭義だ。「自社医薬品の処方、供給、購買、あるいは使用を勧誘する効果を持つものであり、その成果が処方量や販売量等の営業的指標により評価される活動」と定義されている。なお、GLでは「能動的・受動的を問わず、医薬品製造販売業者等が、特定の医療用医薬品の名称又は有効性・安全性の認知の向上等による販売促進を期待して、当該医療用医薬品に関する情報を提供すること」と定義されている。基本的考え方では、疾患啓発活動(学会サテライトシンポジウム開催、医学・科学的コンテンツ発信)や、学会メディカルブースの企画・実施などもMAの活動範囲に含まれており、販売情報提供活動GLの範疇に含まれるものも記載されていると解釈できる。

◎アドバイザリーボードの交通手配はMRでも可? MSLの頻回訪問がKPI?

このほかにも厚労省の販売情報活動GLや過去の広告モニター制度からの報告、さらには最近の不適切事例に照らし、MA、MSLの活動において線引きが不透明で誤解を生じる事例が散見される。

例えば、営業部門から独立した運営をMSLに求めながらも、実務上MRとの接点を容認している事例がある。Q&Aでは、アドバイザリーボードの開催について、「会議会場の手配や出席メンバーの交通手段の手配等、会議の内容に影響を及ぼさない行為に営業部門が関わることは制約されない」と規定している。もちろん会議そのものに出席することや記録の作成に営業部員が関わることはできないが、会場や交通チケットの手配となると、会議に出席する医師に直接コンタクトすることになり、かつ、その際の目的を医師に伝えることから、たとえMAが主催するアドバイザリーボードであったとしても、受け手側の医師は「企業活動の一端」と捉える。MRが関わった段階で、コマーシャルの介在を認めることにもなりかねない。

そのほかMSL の評価指標(KPI)についてQ&Aでは、「社外医科学専門家への訪問回数や収集したクリニカルクエスチョンの件数等の数値目標を設定することは問題ないか」との質問に対し、「営業活動に関連しない項目であれば数値目標を設定することに問題はない」と回答している。これまでのMR評価(KPI)は、売上目標のほかに、定期訪問の回数、コール数、医局説明会の回数などが規定されていた。MSLにも社外医科学専門家という名の医師を定期訪問させることは、先述と同様に、「企業活動の一端」と捉えられる可能性は極めて高い。まして、MSL活動の透明性を「医師の求めに応じ(リアクティブ)」とするならば、果たして定期訪問することの意義とは何だろうか。同じ社外医科学専門家という医師をあらかじめ選定するにせよ、MSLとMRがそれぞれ頻繁に訪問する事態を、医師は正確に理解し、対処できるか不透明だ。ミクス編集部が過去に行った医師調査でも、MSLとMRを峻別できる割合は低く、依然として医療従事者の認知は進んでいない。

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