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厚労省 新薬16製品を承認 中外製薬のNTRK融合遺伝子陽性がん治療薬など

公開日時 2019/06/19 03:51
厚生労働省は6月18日、新薬として16製品24品目を承認した。この中には中外製薬がNTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がんの治療薬として承認申請したロズリートレク(一般名:エヌトレクチニブ)がある。非小細胞肺がんや大腸がんなど主要ながんではNTRK融合遺伝子陽性は1%未満とされるが、治療法が限られる進行・再発がんに対する選択肢となる。また、臓器別ではなく個々の遺伝子変異に応じて治療を提供する抗がん剤となる。がん種を問わない抗がん剤の承認は、MSDの抗PD-1抗体キイトルーダに続き2製品目。

承認された製品は次のとおり(カッコ内は一般名、申請企業名)
ロズリートレクカプセル100mg、同200mg(エヌトレクチニブ、中外製薬):「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。先駆け審査指定医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。

NTRK融合遺伝子から作られる融合TRKにより、がん細胞の増殖が促進されると考えられている。同剤はTRKの働きを阻害し、増殖を抑えるとされる。NTRK融合遺伝子を標的にする初の薬剤となる。NTRK融合遺伝子は、様々な固形がんで認められるが、非小細胞肺がんや結腸・直腸がんなどの患者数の多いがん種では1%未満とされる。他方、患者数の少ない神経内分泌腫瘍、唾液腺がんでは多く認められるという。

がん種を問わない抗がん剤は2製品目になる。MSDの抗PD-1抗体キイトルーダは、特定のがん種を定めない「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん(標準的な治療が困難な場合に限る)」の適応を持つ。

ポートラーザ点滴静注液800mg(ネシツムマブ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー):「切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。薬効分類:429。

ゲムシタビン、シスプラチンと併用する。通常、成人には1回800mgをおよそ60分かけて点滴静注する。週1回投与を2週連続行い、3週目は休薬。これを1コースとして投与を繰り返す。8月1日付で日本化薬が製造販売承認を承継する予定。

イナビル吸入懸濁用160mgセット(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、第一三共):「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療」を効能・効果とする新剤形医薬品。再審査期間4年。薬効分類:625。

既存薬も吸入剤だが、同剤ではネブライザーに懸濁した薬液を投入し、霧状にすることで、自発呼吸で薬剤を吸い込めるよう設計した。5歳未満の小児や、気管支喘息など肺機能が著しく低下する呼吸器疾患を合併している患者でも使いやすくする。また、既存薬では添加剤として乳糖水和物を含有していたため、乳製品に対し過敏症の既往症がある患者は、慎重投与とされていたが、今回の新製剤には添加されておらず、慎重投与扱いにはならない。

ロナセンテープ20mg、同30mg、同40mg(ブロナンセリン、大日本住友製薬):「統合失調症」を効能・効果とする初めての貼付剤。新投与経路医薬品。再審査期間6年。薬効分類:6年。

ロナセンは、同社が創製した経口の非定型抗精神病薬。すでに錠剤が承認されている。テープ剤は40mgを1 日1回貼付し、患者の状態に応じて最大80mgを1日1回貼付できる。24時間ごとに貼りかえる。同社によると、経口剤に比べ、食事の影響を受けにくく、食生活が不規則な患者や、経口服薬が困難な患者への投与を可能にする。

ゾルトファイ配合注フレックスタッチ(インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)、ノボ ノルディスクファーマ):「インスリン療法が適応となる2型糖尿病」を効能・効果とする新医療用配合剤。再審査期間4年。薬効分類:396.

持効型インスリンアナログのトレシーバ(インスリン デグルデク(IDeg))と、GLP-1受容体作動薬ビクトーザ(リラグルチド(Lira))を固定比率で配合した注射剤。IDeg1単位にLira0.036mgを固定比率で配合しており、IDeg1~50単位/Lira0.036~1.8mgの範囲で患者の状態に応じた用量調節ができる。初めてのインスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤。

ミニリンメルトOD錠25µg、同50µg(デスモプレシン酢酸塩水和物、フェリング・ファーマ):「男性における夜間多尿による夜間頻尿」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間4年。薬効分類:241.

既存の60μg、120μg、240μg製剤は、尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症と、中枢性尿崩症を効能・効果としている。今回の適応追加に伴い、25μgと50μgの規格を追加した。1日1回就寝前に50μgを経口投与する。なお25μg製剤、50μg製剤は、既存の効能・効果には使えない。

低用量のOD錠が開発された経緯は、夜間頻尿の治療に既存の規格を用いると、低ナトリウム血症の発現リスクがあるため。既存のままでは、65歳以上の高齢者が同剤で治療を開始することを推奨しておらず、高齢者に対する適切な治療が求められていた。

フェリングは、OD錠の25µgと50µg規格について、キッセイ薬品と日本でコ・プロモーションを行う。

アジマイシン点眼液1%(アジスロマイシン水和物、千寿製薬):結膜炎、眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎を適応症とする新投与経路医薬品。再審査期間6年。薬効分類:131.

同成分を含有する経口剤、注射剤はすでに承認されている。

ビレーズトリエアロスフィア56吸入、同120吸入(ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物、アストラゼネカ):「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤、長時間作用型吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品、新医療用配合剤。再審査期間6年。薬効分類:229。

ビベスピエアロスフィア28吸入、同120吸入(グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物、アストラゼネカ):「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用型吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品、新医療用配合剤。再審査期間6年。薬効分類:225。

ビレーズトリエアロスフィアは、吸入ステロイド剤(ICS)、長時間作用性抗コリン剤(LAMA)、長時間作動型β2刺激剤(LABA)の3剤配合。ビベスピエアロスフィアはLAMA、LABAの2剤配合。

オンパットロ点滴静注2mg/mL(パチシランナトリウム、Alnylam Japan):「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。

適応疾患は、トランスサイレチンタンパク由来の不溶性線維状タンパクの末梢神経や各種臓器への沈着により発症する。生存期間の中央値は診断後4.7年との報告もある。症状としては感覚消失、異常感覚などの全身性の感覚神経障害、運動神経障害、自律神経障害、心筋症などの臓器障害など。推定患者数は100人強。同剤は、RNA干渉によりトランスサイレチンタンパクの発現を抑える。

ユルトミリス点滴静注300mg(ラブリズマブ(遺伝子組換え)、アレクシオンファーマ):「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。

適応疾患は、後天的な遺伝子の突然変異で、慢性的な血管内溶血(赤血球破壊)を引き起こす造血幹細胞疾患で、指定難病。難病情報センターによると、国内の患者数は約400人と推定される。

ヴァンフリタ錠17.7mg、同26.5mg(キザルチニブ塩酸塩、第一三共):「再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間10年。

がんの増殖に関与するとされるFLT3の働きを阻害し、増殖を抑えると考えられている。1日1回26.5mgを2週間経口投与し、それ以降は1日1回53mgを経口投与する。

急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄における白血病細胞の異常な増殖の結果、正常な血液細胞の産生が著しく阻害され、治療しないと短期間で致死的になる予後不良な血液疾患。FLT3-ITD変異はAML患者の約25%に認められるとされる。FLT3-ITD変異を有する患者は、変異のない患者と比べ、再発率が高く生存期間が短いとされている。

デファイテリオ静注200mg(デフィブロチドナトリウム、日本新薬):「肝類洞閉塞症候群(肝中心静脈閉塞症)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。

この疾患は、血液がんなどの治療に実施される造血幹細胞移植の合併症として知られている。症状は、ビリルビン値の上昇、体重増加、肝腫大、腹水、黄疸などだが、重症の場合は多臓器不全により死亡率が80%に至る。同疾患に適応のある承認薬はない。医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議を経て、厚労省が開発要請した品目。

シムツーザ配合錠(ダルナビル エタノール付加物/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩、ヤンセンファーマ):「HIV-1感染症」を効能・効果とする新医療用配合剤。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。

いずれも日本で既承認の有効成分で4成分を固定用量で配合する。具体的にはダルナビル(DRV)800 mg、コビシスタット(COBI)150 mg、エムトリシタビン(FTC)200 mg、テノホビル アラフェナミド(TAF)10 m。日本の抗HIV治療のガイドラインで推奨されるレジメンの有効成分を1日1回1錠で投与できる。

DRVとCOBIによる固定用量配合錠はプレジコビックス配合錠として販売され、他の抗HIV薬と併用して使う。FTCとTAFによる固定用量配合錠はデシコビ配合錠として販売され、他のクラスの抗HIV薬と併用して使用されている。

ロミプレート皮下注250μg調製用(ロミプロスチム(遺伝子組換え)、協和発酵キリン):「既存治療で効果不十分な再生不良性貧血」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間は5年10か月。

同剤は、血小板産生を促す因子トロンボポエチン(TPO)受容体作動薬。今回追加する効能・効果に合わせ用法・用量も新たに定める。2011年4月から指定難病の慢性特発性血小板減少性紫斑病の治療薬として販売している。

インチュニブ錠1mg、同3mg(グアンファシン塩酸塩、塩野義製薬):「注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」を効能・効果とし、成人にも使えるようにする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(2025年3月29日)。

現在は18歳未満の小児期の適応のみ。今回、18歳以上の用法・用量も新たに定める。1日2mgより投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、1日4~6mgの維持用量まで増量する。1日1回経口投与する。

同剤については塩野義製薬と武田薬品は、コ・プロモーションを行っている。

◎新薬以外の承認も レパーサ、スタチン適さない患者で単剤使用可能に


同日は新たな適応症や用法・用量を追加する新薬以外の承認もあった。この中でアステラス・アムジェン・バイオファーマの高コレステロール血症治療薬・レパーサについて、スタチンによる治療が適さない患者で単剤使用可能になった。

レパーサ皮下注140mgシリンジ、同140mgペン、同420mgオートミニドーザー(エボロクマブ(遺伝子組換え)、アステラス・アムジェン・バイオファーマ):現在の効能・効果は、家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症について、「心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る」となっているが、今回、「HMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない」患者にも使えるようにする。新効能医薬品。再審査期間は残余(2024年1月21日まで)。

これまで「スタチンと併用すること」が「用法・用量に関連する使用上の注意」に記載されていた。一変承認により、副作用の既往歴や使用の禁忌などによりスタチンの服用が困難な患者に単剤で使えるようになった。

ジェムザール注射用200mg、同1g(ゲムシタビン塩酸塩、日本イーライリリー):効能・効果の「非小細胞肺がん」に用法・用量を追加する新用量医薬品。今回承認ポートラーザと使うことを前提とした用法・用量を追加した。再審査期間なし。

サイラムザ点滴静注液100mg、同500mg(ラムシルマブ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー):「がん化学療法後に増悪した血清AFP値が400ng/mL以上の切除不能な肝細胞がん」を効能・効果に追加する新効能医薬品。再審査期間は残余(2023年3月25日まで)。

メトトレキサートカプセル2mg「サワイ」(メトトレキサート、沢井製薬)
メトトレキサートカプセル2mg「トーワ」、同錠2mg「トーワ」(同、東和薬品)
メトトレキサート錠2mg「日医工」(同、日医工)
効能・効果に「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬」「関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症」を追加。先発医薬品との適応不一致が解消された。

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