英国労働党のJeremy Corbyn党首は9月24日、同党大会で、英NHS(国民保健サービス)の財政健全化には高騰が続く薬価を抑制し、国民の医薬品アクセスを改善する必要があるとした。そのための方策として、公営のジェネリック医薬品企業を設立することを提言した。英米主要メディアが報じた。

構想は、同党が発表した、「Medicine for the May: Public Health before Private Profit」(多数のための医薬品：私益のまえに公衆衛生を) と題するNHI改善および薬価問題解決方策案で明らかになった。

同案では、英国NHSの現況、英国のイノベーション状況、R&D投資実態などを示したうえで、現行薬事政策、今後の薬価政策、NHSの財政改善策、製薬企業・行政・政治家・学界・消費者団体などの協力の在り方などについて提言した。

そのなかで、安価な価格の医薬品をNHSに提供するためには、政府の製薬企業への関与を強化、公営の製薬企業を設立、ジェネリック医薬品を扱わせることを提言した。この提言の背景のひとつとして、Vertex社の嚢胞性線維症治療薬Orkambi（ivacaftor/lumcaftor）の英政府とNHS納入について価格交渉が3年に及び、未だNHSに適正な価格で納入されていないことを上げた。

Corbyn党首は、製薬企業は利益を追求しすぎるとの立場から、「先発品のジェネリックバージョンを確保するために特許の強制実施権を使い、私的な利益を守るのではなく、公衆衛生を維持するために制度（NHS）を再設計するつもりである」と述べたうえで、「我々は、製薬企業に対して、公的研究資金を欲するなら、彼らは医薬品を誰も入手できるようにしなければならないと言いたい」（ブルームバーグ通信）と注文を付けた。さらに、「我々は、NHSの財政支援と患者の生命を救うために新たに安価な薬剤を供給する公営のジェネリック医薬品製造業を設立する考えである」（ロイター通信）と話した。

今回のCorbin党首の演説は、Boris Johnson首相が議会を閉会したのは閉会の合理的理由がなく憲法違反だとの24日の最高裁の判決が出された後、行われた。

英国では、現在、EU離脱問題を抱え、政治情勢が流動的で、与野党の思惑もからみ、総選挙がいつ実施されるか不透明だ。仮に労働党が勝利するとCorbyn党首が首相に指名されるとみられており、そうなった場合に同案は現実味を帯びるとみられる。