インテージヘルスケア（HC）が血液がん患者とその家族計60人にヒアリング調査をしたところ、病気や治療で頼りになる情報源のトップは「かかりつけ医（主治医）」で、次いで国立がん研究センターが運営している「がん情報サービス」との結果となった。主治医を挙げたのは38％、がん情報サービスは32％だった。一方で、製薬企業のサイトは、４人に１人が利用したことはあるものの、「頼りにしている」との回答は３％にとどまった。頼りにしにくい理由として、「医療関係者しか訪問できないページがあり、隠しているのかな、と思う時がある」（50代女性、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者）との声もあった。

調査は、キャンサーネットジャパンが主催した「かながわ血液がんフォーラム」に参加した血液がん患者とその家族を対象に実施した。有効回答数は60サンプル。調査時期は2019年11月。調査方法はヒアリング調査。

がん情報サービスを頼りにしている理由として、「一番たくさん患者の体験をみていて、一番情報を持っている。公平なものだと思う」（60代女性、多発性骨髄腫患者）といった声が寄せられた。公的な機関が発信する情報への安心感が背景にあるようだ。

一方で、メーカーサイトを頼りにしにくい理由には、「隠しているかも」との印象のほか、「製薬企業サイトは利益優先のイメージがあって不安」（60代男性、濾胞性リンパ腫の患者家族）といった声もあった。インテージHCは、「製薬企業サイトは、一部の患者・家族においては『不安感』を持たれている可能性がある」とし、「製薬企業にプロモーションの規制等があり、患者とのコミュニケーションが難しいことが一つの要因になっていると考えられる」と分析している。

ただ、「近年、製薬企業に、中立的な立場で疾患や薬についての情報を発信することがより求められるようになった」として、「今後、製薬企業からそのような情報が多く発信されることで、患者の『不安感』は次第に『安心感』へと変わっていくことが推察される。製薬企業が不足する情報を満たす存在になる可能性は大きい」とも指摘している。

■血液がん患者のために頑張っている企業　１位はセルジーン

血液がん患者のために頑張っていると感じている製薬企業も聞いたところ、４割の患者が具体的な企業を挙げた。１位はセルジーンだったという。

頑張っていると感じる理由の多くは、「自身の疾患・病型に有効な薬を開発している」ということ。また、少数意見ではあるものの、「薬をもらうだけでなく、詳しい説明のある薬のメーカーは信頼できる」（60代女性、多発性骨髄腫患者）との声もあった。医療者から患者への説明に満足すると、その薬を手掛けるメーカーも信頼できる、頑張っていると受け止めているということのようだ。

■製薬企業に期待すること　多くが「新薬開発」　「皆保険の負担になりたくない」との声も

製薬企業に期待することを聞いたところ、自身の疾患・病型に有効な新薬開発を期待する患者が多かった。自身の薬剤費負担だけでなく、医療保険財政への影響を懸念する声もあった。

具体的には新薬開発に関しては、「新薬の開発について、お金のこともあると思うが、開発の進捗に一喜一憂している患者がいることも知ってほしい」（50代女性、マントル細胞リンパ腫患者）、「少ない患者の疾患でも、少しでも広く適応をとってほしい」（50代女性、小リンパ球性リンパ腫患者）――といった内容だった。

薬剤費負担及び医療保険財政については、「退院後も薬は継続して飲む。高額医療費制度のギリギリ上限くらいの出費がずっと続くのは厳しい。病院に支払うお金より、薬局に支払うお金の方が高い」（40代女性、急性リンパ性白血病患者）や、「皆保険の負担になりたくないので、私は高い薬は使わない。そういう患者がそれなりにいることを理解してほしい。お金より命と言っても、（皆保険が）続かなければ意味がない」（40代女性、急性リンパ性白血病患者）といった声が寄せられた。

インテージHCによると、医療保険財政に影響するほどの高額な薬価は受け入れにくいとの意見は複数あったとし、「自己負担の軽減だけでなく、医療保険財政への影響を懸念している血液がん患者の期待にいかに応えるか」も重要な課題だと指摘している。