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中医協薬価専門部会 中間年改定の薬価調査 新型コロナ影響で慎重意見相次ぐ 業界は「反対」姿勢

公開日時 2020/05/28 04:52
中医協薬価専門部会は5月27日、中間年改定(薬価毎年改定)の薬価調査をテーマに議論した。この日は、薬価調査のスケジュールや手法などを議論することが主目的だったが、製薬業界代表の上出厚志専門委員(アステラス製薬上席執行役員渉外部長)は、「今回の薬価調査、薬価改定は実施するような状況ではない」と述べ、実施に反対する姿勢を鮮明にした。新型コロナウイルスの感染拡大の煽りを受け、地域の病院や診療所の経営を揺さぶっている。さらに医薬品卸と医療機関の価格交渉にも影響が出始めている。例年とは異なるマーケットトレンドのなかで中間年改定の議論がスタートしたことに、各側および専門委員の発言が注目された。

厚労省はこの日の中医協に、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、「例年と同様の価格交渉や医薬品流通ができていないと考えられる」として、まずは製薬業界や医薬品卸からヒアリングを行った上で議論する考えを提案した。そのうえで、通常改定のスケジュールを踏襲すれば、調査に必要な準備期間を考慮すると、遅くとも6月中旬には実施準備を開始する必要があると説明した。

同省はまた、具体的な論点として、新型コロナの感染により医療現場が打撃を受けるなかで、調査結果の正確性を担保するために実施される購入側調査(病院、診療所、薬局から無作為抽出)の実施方法や、医薬品卸の負担軽減を考慮した販売側調査(医薬品卸)などをあげた。さらに地域医療機能推進機構(JCHO)をめぐる医薬品卸の談合疑いで公正取引委員会が調査中であることから、「念のため」として今回調査対象から外すことを提案した。

◎診療側・松本委員 新型コロナの影響大「(薬価調査は)現時点で全くイメージできない」

議論では、診療・支払各側ともに、新型コロナの感染下で、通常の薬価調査が実施できないことを踏まえた意見が相次いだ。診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「意見聴取の結果に関係なく薬価調査を実施しようとしているように見えるのは大変問題だ」と述べ、中間年改定の実施ありきの議論を牽制した。「新型コロナウイルスの感染拡大で、医療提供体制全体が崩壊の瀬戸際まで追い込まれ、経営的に大打撃を受けている」と述べ、「2021年度の薬価改定に向けてどんな調査を、どう行うのが適当か現時点で全くイメージできない」と強調。製薬業界の意見陳述以降の論点については「時期尚早」と述べた。ただ、薬価調査の実施反対との明言は避けた。

中間年改定は、2016年末に4大臣合意した薬価制度抜本改革に向けた基本方針で実施が明記され、18年度薬価制度抜本改革で、「全ての医薬品卸から、大手事業者を含め調査対象を抽出し、全品目の薬価調査を実施する」との方向性が固まった。厚労省医政局の林俊宏経済課長は、「政府としては、過去の類似の決定を踏まえ、やるとなった場合の実施方法を考えておく必要がある」と述べ、議論の継続に理解を求めた。

◎支払側・幸野委員 通常状態とは乖離ある「特例的、暫定的な薬価調査」で検討も

支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「中間年の薬価改定は閣議決定されたものであり、この方針は変更されていない。中医協の役割としては、6月を目指し薬価調査の在り方について粛々と検討していくべき」との立場を表明。ただ、通常の状態とは乖離があるとして、中間年改定時のルールとしてではなく、“今年限り”の「特例的、暫定的な薬価調査として検討していくべきではないか」と提案した。

支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も、「流通現場の影響を勘案すれば、やめるべきという意見も出てくる恐れがある」としたうえで、「このような環境下で実施するのであれば最低限実施可能なのか、前向きな方向でヒアリングが進むよう、厚労省には事前準備をお願いしたい。業界団体にもその点を勘案して意見をいただきたい」と業界側に要望した。

◎村井専門委員 卸側も通常とは異なる業務に終始 価格交渉の遅れを懸念

これに対し、業界側は「実施するような状況ではないのではないか」(上出専門委員)、「薬品卸としては、本年の薬価調査の実施は極めて難しい状況だと考えている」(専門委員の村井泰介委員・バイタルケーエスケー・ホールディングス代表取締役社長)と即座に難色を示した。

村井委員は、医薬品卸が感染拡大を防止する観点から、輪番制など配送スタッフの勤務体制の変更、配送回数の変更、営業活動の自粛などに取り組んでいることを説明。「医薬品卸は医療機関、薬局への配送業務に特化した活動にシフトしている」と述べた。さらに、800品目超が品薄で、製薬企業から出荷調整がかかっており、「商品手配、在庫配分の調整などに多くの労力を費やしている状況だ」と述べ、通常とは異なる業務に終始していると説明した。

このため、「ほとんど価格交渉が行われておらず、多くの場合見積書も提出していない」と現状を説明。通常通り9月に薬価調査を実施すると、妥結までに「極めてタイトな時間枠での交渉となることが予想される」と述べた。購入側の医療機関、薬局も新型コロナウイルス感染の影響を受け、「全く異なった状況となっており、果たして適切な価格交渉が行うことができるのか憂慮している」と訴えた。「購入側も卸側もこのような状況下で未妥結減算という事態だけはできるだけ避けたいと考えている。短期間の交渉のなかで未妥結減算をクリアするために単品総価や部分妥結が大幅に増えるのではないか」と述べ、価格の正確性にも疑問を投げかけた。そのうえで、「今回の新型コロナウイルス感染症の影響で価格交渉の状況が通常とは大きく異なっていることから、薬価調査のための環境整備どころではない。医薬品卸としては、本年の薬価調査の実施は極めて難しい状況だと考えている」と述べた。

◎診療側・有澤委員「通常時と同様のスケジュールは問題」と実施に難色

診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、製薬企業が医薬品の原薬調達に苦慮している実態に触れ、「安定供給、流通コストの上昇から流通価格に影響を与える可能性がある」と指摘。「通常時と同様のスケジュールは問題があると考えざるを得ない」と述べた。

◎上出専門委員 医薬品の原薬高騰を指摘 企業努力も訴え

上出専門委員も原薬の調達に奔走している状況などを説明。「製薬各社は他の企業との連携、もしくは関係機関との連携を図りつつ新型コロナへのワクチンや治療薬に鋭意取り組んでいる。医薬品の原薬調達や製造等のサプライチェーンの状況を注視し、安定供給に取り組んでいる。生産工場においてはマスクやアルコール消毒などの衛生環境の整備、検温、従業員同士の適切な距離間隔確保の徹底など、感染拡大防止につとめながら操業を継続している。業界団体としても安定供給に支障を来たす事態を早期に把握し、会員企業が相互に協力できるスキームを策定し、代替薬リストを作るなどの取り組みをしているところだ」と述べた。そのうえで、原薬について、「海外から調達するケースも多く、各国のロックダウンの対応に伴って現地工場の閉鎖や輸送ルートの寸断、日本へ輸出するための航空便の運航停止など様々な事象が発生しており、これらに対し、チャーター便を確保するなど、各社が業界として原薬の確保、安定供給に努めている。原薬の調達コストが上昇するリスクも承知している」と述べ、製造原価に跳ね返る可能性を指摘した。

さらに「新型コロナの影響で原薬調達から製造、供給に至るまでの医薬品のサプライチェーンが平時とは大きく異なるなか、医薬品の安定供給を継続して図っていく必要がある。医療現場は非常に厳しい中医療の提供に努めている。流通も非常に厳しい環境のなか、安定供給を確保している。これらの状況を踏まえると、今回の薬価調査、薬価改定は実施するような状況ではないのではないか」と理解を求めた。

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