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厚労省有識者検討会・薬価差は経営原資 なくすと医療機関・薬局の経営に影響

公開日時 2022/10/13 06:33
厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」(座長:遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は10月12日、薬価差をめぐる議論を行った。医療機関経営をコンサルティングする川原丈貴構成員(川原経営総合センター代表取締役社長)は、医療機関の損益差額が小さいことなどを踏まえ、「経営原資になっているというのはおそらく間違いのないところだと思う。これを全てなくしてしまった場合には、医療機関、調剤薬局への多大な経営に対する影響がある」と指摘した。製薬業界は9月22日の業界ヒアリングで、薬価差が医療機関の経営原資となっていることを共通認識としていいか、問題提起していた。

香取照幸構成員(上智大総合人間学部社会福祉学科教授)は、品目や取引条件などに価格がバラつくにもかかわらず、薬価が公定価格であるために薬価差が生じる楮的な課題があると指摘。「そもそも薬価差が良いのか悪いのかという議論は意味がないと私は思っている。問題にするならば公定価格やめればいいので、それこそ納入価で請求をすれば薬価差はなくなる」との見解を表明。薬価差が医療機関の経営原資になっていることについては、「本来診療報酬で手当すべきものを薬価差という形で薬価に押し付けていると、そういうことができるような価格設定の仕方をしているがゆえに、現実問題として発生している」との認識を示した。

◎坂巻構成員「薬価差は国民のもの」 肯定・否定 きちんとしたデータに基づく議論を

坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大大学院教授)は、「薬価差は誰のものだという議論があったが、元々は保険料・税金なので国民のものだと思う。国民のいないところで薬価差をどう取り合うという議論はあまり品のいい議論ではない。おそらく薬価差肯定と否定のちょうど中間に妥協策があるわけだが、妥協策の議論としては、きちんとしたデータを基づく議論が必要だと思う」と指摘した。

◎菅原委員 医療機関や調剤薬局で薬価差益が一定の役割果たしたことは事実

菅原琢磨構成員(法政大経済学部教授)は、「医療機関や調剤薬局のなかで明らかに薬価差益が一定の役割を果たしているということは事実だと思う。それと同時に、もう少しマクロに考えると、薬価差益を追求するなかで次回の改定で改定財源が生まれてきて、改定財源を原資として、これは医療機関だけではないが、他の社会保障財源の手当てになっているということは事実だ」との見解を表明。「ちょっと穿った見方をすると、医療機関や保険薬局が自らの差益を追求することによって、新たなマクロな改定財源が大きくなって、その改定財源が大きくなることで診療報酬にさらに財源が回っていくというような構造になっているということは事実だ。基本的にはこの構造を放っておくと、ある意味では薬価は循環的に低下せざるを得ない。利益の追求の方向のベクトルが合っているのでそういう方向にしかベクトルが働かないという構造的な問題があると思う。医療機関が悪いとか、保険薬局が悪いとかいう話ではなくて、当然の経済原理でこういう仕組みで、そのようになるのは当たり前のことだ」と指摘した。そのうえで、データに基づいた議論の必要性を指摘した。小黒一正構成員(法政大経済学部教授)も、「本質的な問題は薬価差の差益の総額がどう配分されているかという資料が抜けている」と指摘した。

◎香取構成員 処方権のある人と薬局とでは「医療行為として違うのでは」

処方権の有無、つまり医療機関と薬局による薬価差の考え方も議論の俎上にのぼった。香取構成員は、「医療機関が行っている薬の処方は、医療行為の一環として行われており、診療報酬でどう評価するかによって違ってくる。薬局の販売は、文字通り薬の販売をしているわけだ。別途処方料がついている。考えると、やっぱり処方権があって、ある人たちが薬を処方して提供者に渡しているのと、薬局が渡しているのとでは、その医療行為として違うものなのではないか」と指摘した。

◎堀構成員「医療と一体的な形でサービスを提供する薬と調剤薬局はそもそも同じ薬価制度でよいか」

堀真奈美構成員(東海大健康学部長・健康マネジメント学科教授)も、「医師が医療と一体的な形でサービスを提供する薬と、そうではなくて、外来で薬だけを処方されて調剤薬局ですというものがそもそも本当に同じ薬価制度の中で、いまは位置づけられているが、それがどうなのか。モダリティが変わってくるなかで検討する論点案のところに、いまの薬価制度を前提に薬価改定のあり方についてどう考えるか、そもそも薬価制度そのものがどうなのかということも考えていくべきではないか」と指摘。「公定薬価で対象とするものと、そうではないものという考え方もあるだろう。DPCのように診療とセットの場合と外来やプライマリケアで中心に行われるものというのは、本来違う慣行もあるのではないかと思う。その辺を論点の案としては決着が簡単につく問題ではないと思うが、論点としてあげてもいいのではないか」と述べた。

◎坂巻構成員 欧州の薬価制度は薬価差否定論に基づく 薬価差で儲けない

坂巻構成員は、欧州の薬価制度は、“薬価差否定論”に基づいているとの考えを表明。「薬価差が発生した場合には、そこはなるべく少なくするか、あるいは実際に発生した場合でも、それは返す」と説明。くすり未来塾の提案を引き合いに英国のクローバック方式を紹介。「基本的に薬で儲けないということが前提であって、だからこそ医薬分業が定着しているという部分もある」と述べた。

◎三浦構成員 薬価差は小売りマージン 20店舗以上のチェーン店は「すごく安く買い叩く」

三浦俊彦構成員(中央大商学部教授)は、「薬価差は小売りマージン」としたうえで、「小売りマージンをとって当たり前なのでゼロにするのはおかしい」との考えを示した。そのうえで、「ポイントやっぱり額だと思う。額が多いか少ないかはすごく大きな問題だ」と続けた。特に、「交渉力のある20店舗以上のチェーン店はすごく安く買い叩く。一方で、小さな薬局は交渉がないので、かなり高い値段で買わされることもあったりする」と規模の課題を指摘。日本保険薬局協会(NPhA)を名指しし、「NPhAだと思うが、薬価差で利益と、たぶん営業費用が出ていると思うので、それを調べていただければと思う」と述べた。

このほか、三村優美子構成員(青山学院大名誉教授)は、「いまの段階で薬価差がどこにどういう処理しているかということを分析するよりも、もっと透明度の高い価格調査、価格取引をやってほしいということを見せていくことから全てがスタートするのでは」との見解を表明。「一番大きな取引慣行の問題はやっぱり総価取引だ」との見解を表明。その背景に医薬品一律で示される平均乖離率の課題があるとして、モダリティの多様化が進むなかで、カテゴリーに応じた薬価調査、薬価制度構築の必要性を指摘した。一方で、「変えなくてもよい薬価、例えば安定確保医薬品など非常に供給者の不安視する医薬品については購入価償還でもいいかもしれないし、ある意味でも完全に現物を本当に供給するという感じでもいいのではないか」とも述べた。

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