ALS適応のラジカット内用懸濁液など7製品を審議へ 11月25日の薬食審・第一部会で
公開日時 2022/11/14 04:48
厚生労働省は11月25日に薬食審・医薬品第一部会を開き、田辺三菱製薬の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を対象疾患とするラジカット内用懸濁液2.1%など7製品を審議する。同剤はALS治療薬のラジカット注、同点滴静注バッグと同一成分を含む液剤。同社は、「注射による痛みや投与のための通院など、ALS患者の負担軽減のため経口剤を開発した」としている。なお、今年5月に承認された米国(海外製品名:ラジカヴァ経口懸濁剤)では1日1回、経口または胃ろうから服用する。
報告品目は3製品。今回の部会で承認が了承された審議品目及び報告品目は、12月中に正式承認されるとみられる。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ラジカット内用懸濁液2.1%(エダラボン、田辺三菱製薬):「筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制」を対象疾患とする新投与経路医薬品。
日本で15年6月に承認されたALS治療薬のエダラボン点滴静注製剤(製品名:ラジカット注、同点滴静注バッグ)と同一成分の経口薬。エダラボン点滴静注製剤の投与方法は、▽通院での投与▽医療従事者の訪問による在宅投与――となっており、今回の経口薬が承認されると、通院負担の軽減などが期待できる。
ALSは、症状の進行に伴って、筋力低下や呼吸不全による摂食嚥下障害があらわれる。同省は、「本剤は液剤のため飲みやすく、鼻から管を通して投与もできる製剤」だとしている。ALSは、運動神経が選択的に変性・脱落し、四肢、顔、呼吸筋などの全身の筋力低下と筋萎縮が進行的に起こる原因不明の神経変性疾患。人種や民族的背景に関連なく、発病率は10万人に2人程度といわれている。
▽ネキソブリッド外用ゲル5g(なし、科研製薬):「深達性II度又はIII度熱傷における壊死組織の除去」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
パイナップル茎由来のタンパク質分解酵素を有効成分とする外用の酵素製剤。入院が必要な重症熱傷を指す深達性II度又はIII度熱傷を対象とした外用薬。熱傷部位に塗布して4時間後に除去することで、健常な組織を温存したまま、焼痂と呼ばれる壊死組織を選択的に簡便かつ速やかに除去できるとしている。
▽ガラフォルドカプセル123mg(ミガーラスタット塩酸塩、アミカス・セラピューティクス):「ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病」を対象疾患とする新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
現在16歳以上に使用できるが、今回12歳以上に対象年齢を引き下げる。同剤はα-ガラクトシダーゼ(α-GalA)の基質であるスフィンゴ糖脂質の末端ガラクトースの類似体。薬理学的シャペロンとして変異型α-GalAに結合することで、α-GalAのリソソームへの輸送を促進し、リソソームにおけるα-GalA活性を上昇させると考えられている。
▽アリドネパッチ27.5mg、同パッチ55mg(ドネペジル、帝國製薬):「アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
承認されれば、ドネペジルを有効成分とする国内初の経皮吸収型製剤となる。ドネペジルが神経組織に含まれるアセチルコリン分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害することにより脳内アセチルコリン量を増加させ、脳内コリン作動性神経系を賦活化し、アルツハイマー型認知症患者における認知症症状の進行を抑制すると考えられている。なお、厚労省によると、経口投与のアリセプトの有効成分は「ドネペジル塩酸塩」であり、アリドネとは異なるとしている。
承認後は、興和が独占的に販売する。
▽トレプロスト吸入液1.74mg(トレプロスチニル、持田製薬):「肺動脈性肺高血圧症」を対象疾患とする新投与経路医薬品。
プロスタグランジンI2誘導体製剤。既承認の製剤は注射剤だが、今回、ネプライザーを用いた吸入剤を追加する。現在は医療機関で投与されており、吸入剤が承認されれば通院負担の軽減につながる。
▽ヴィアレブ配合持続皮下注(ホスレボドパ/ホスカルビドパ水和物、アッヴィ):「レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の症状の日内変動(wearing-off現象)の改善」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品、新医療用配合剤。
レボドパ/カルビドパの分子構造を改良したプロドラック溶液。24時間持続皮下注入(CSCI)により投与することで血中濃度を一定に保ち、効果を持続させる特長がある。
パーキンソン病では、疾患の進行に伴い脳内のドパミン濃度が不安定になり、経口のレボドパ/カルビドパ薬の頻回な服用が必要となる。一部の患者では1日平均10-11錠の経口投与により、患者や介護者の負担が大きくなっている。また、経口薬や貼布剤などの治療では症状コントロールが難しい進行期パーキンソン病患者に対する治療選択肢は現在、手術を必要とするデバイス補助治療が主であり、侵襲性が低く、入院や術後管理などの患者への負担が少ない新たな治療選択肢が求められている。
▽タバリス錠100mg、同150mg(ホスタマチニブナトリウム水和物、キッセイ薬品):「慢性特発性血小板減少性紫斑病」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
チロシンキナーゼを阻害し、マクロファージによる血小板の破壊を抑制することで、血小板の減少を抑制し、慢性特発性血小板減少性紫斑病(慢性ITP)の出血症状を改善することが期待されている。
ITPの原因は未だ明確ではないが、血小板に対する自己抗体が産生され、この自己抗体に結合することによって取り込まれやすくなった血小板が脾臓でマクロファージに破壊されるために、血小板数が減少すると考えられている。ITPの治療として、副腎皮質ステロイドやTPO(トロンボポエチン)受容体作動薬の投与、手術による脾臓の摘出などが行われている。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽マイトマイシン眼科外用液用2mg(マイトマイシンC、協和キリン):「緑内障観血的手術における補助」を対象疾患とする新投与経路医薬品。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。
協和キリンが国内販売している抗がん剤・マイトマイシン注用2mg、同10mgに対し、日本眼科学会から「緑内障、高眼圧症に対する手術時の使用」について要望がなされ、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の議論を経て、厚労省から協和キリンに開発要請された。そして協和キリンは公知申請の妥当性に係る見解を提出していた。こうした経緯の一方で、両剤の原薬製造過程での無菌性の確保に影響しうる事実が判明したため、協和キリンは19年10月から両剤を自主回収。その後、両剤の製造再開に相当な時間を要することも判明し、供給再開のメドがたたなかった。
そこで協和キリンは、眼科用外用剤としてのマイトマイシンC製剤をインドのIntas社から導入。この導入品が今回の部会で報告される。
▽イーケプラ点滴静注500mg(レベチラセタム、ユーシービージャパン):「てんかん重積状態」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。事前評価済公知申請。
日本救急医学会から開発要望が出されたもの。てんかん重積状態は、神経細胞の異常興奮により海馬(記憶を司る脳の部位)を中心に不可逆な障害を起こすことが知られており、繰り返すことで海馬が著明に萎縮し機能障害を残す。さらに呼吸循環に影響するため、時に致命的となり、早急な救急対応とその後の集中治療を必要とする。
▽スキャンドネストカートリッジ3%(メピバカイン塩酸塩、日本歯科薬品):「歯科・口腔外科領域における伝達麻酔」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。事前評価済公知申請。
歯科用局所麻酔剤。浸潤麻酔で使われているところに今回、伝達麻酔を追加する。