「ＭＲ活動」や「講演会」といったプロモーション系情報チャネルで想起された製品ランキングで、慢性心不全・高血圧症治療薬エンレスト（ノバルティスファーマ/大塚製薬）が2023年１月調査も首位をキープしたものの、想起医師数（推計）自体は減少傾向にあることがわかった。本調査は３カ月ごとに集計したもので、同剤は21年10月調査以降、６期連続１位となった。想起医師数も21年10月調査、22年１月調査、４月調査、７月調査と４期連続で２万人以上としたが、22年10月調査で２万人を下回り、今回１万5900人となった。

この調査はインテージヘルスケアが提供する医師約１万人を対象に情報チャネルごとの製品想起状況などをトラッキングする「SOC（＝Share of Channels）」によるもの。SOCは、主に「ＭＲ活動」、「講演会（Web含む）」、「eマーケティング」で構成するプロモーション系チャネルによる製品想起と、主に「医師の使用感評価」、「患者の声」、「学会ガイドライン」といったプッシュ型ではないノンプロモーション系チャネルでの製品想起状況が把握できる。同調査は１月、４月、７月、10月に実施している。

今回はプロモーション系チャネルの１月の調査結果を中心に見てみた。

１月調査でプロモーション系チャネルによってエンレストを想起した医師数は、前回22年10月調査から約3100人減った。

チャネル別にみると、「ＭＲ活動」ではチャネル内トップの8500人に想起されたが、前回調査から400人減。「講演会」でもチャネル内トップの4500人に想起されたが、約1600人減。「eマーケティング」ではチャネル内３位の2800人に想起されたが、約900人減となり、プロモーション系のこれら主要３チャネル全てで想起医師数を減らした。

◎プロモーション系チャネルのインパクト落ちても、“医師の使用感”は固まりつつある状況に

ただ、これまでの積極的なプロモーション活動もあって、「医師の使用感評価」などのノンプロモーション系チャネルで同剤を想起する医師数は右肩上がりに伸びており、今回、ノンプロモーション系チャネルによって２万人以上の医師に想起されたことも確認できた。プロモーション系チャネルでのインパクトは減っても、固まりつつある“医師の使用感”によって引き続き処方拡大する可能性が高く、フォローアップのＭＲ活動がより重要になりそうだ。

◎マンジャロが早くも７位に　ＭＲ活動などきっかけに医師5100人が想起

１月調査では、日本イーライリリーと田辺三菱製薬が手掛ける新規の２型糖尿病治療薬・マンジャロがプロモーション系チャネルの想起ランキングで一気に７位にランクインした。前回調査は30位だった。同剤は今回5100人の医師に想起され、この６割強は「ＭＲ活動」がきっかけとなっていた。

同剤は初のGIP/GLP-1受容体作動薬として22年９月に承認されて、今年３月15日付で薬価収載され、発売準備中となっている。収載まで約６カ月かかったのは、全世界でGLP-1受容体作動薬の需要が高まり、世界的な同作動薬の供給懸念が出ていることなどから、米イーライリリーがマンジャロの製造ラインを強化した上で日本で収載・上市すると判断したため。１月の本調査の時点でＭＲが収載・発売予定日を案内したとは考えづらく、医師の同剤に対する関心の高さが今回の調査結果に反映したとみられる。

１月のプロモーション系チャネルによる製品想起トップ10製品と推計想起医師数（100人未満切捨て）は以下の通り。

１位　エンレスト　想起医師数１万5900人
２位　ツイミーグ　想起医師数１万2400人
３位　フォシーガ　想起医師数１万2100人
４位　ジャディアンス　想起医師数8300人
５位　リベルサス　想起医師数6900人
６位　ビラノア　想起医師数5300人
７位　マンジャロ　想起医師数5100人
８位　リンヴォック　想起医師数4900人
９位　タケキャブ　想起医師数4900人
10位　ゾコーバ　想起医師数4500人
＊８位、９位は100人未満の想起医師数でランキング

ミクスでは１月、４月、７月、10月のSOCデータを用いて、ミクスOnlineの会員向けに全国及びエリア別にチャネル別の製品想起ランキングトップ10を公開している（連載タイトル「おくすり想起ランキング」はこちら。14日間の無料トライアルはこちら）。