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サワイHD・澤井会長 低薬価品での不採算品再算定見直しを提案 有識者検討会報告書受け改革論に期待

公開日時 2023/07/04 06:40
サワイグループホールディングスの澤井光郎代表取締役会長兼社長は7月3日、本誌インタビューに応じ、医薬品の安定供給に向けて、「低薬価品では不採算品再算定の計算方式を変え、薬価引き上げの仕組みを作るなどの議論も必要になってくる」と述べた。後発品80%時代に向けて、安定供給を前提とした新たな制度構築の必要性を強調した。厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が取りまとめた報告書を踏まえ、中医協や後発品の新たな会議体、さらには薬事の新会議体での議論本格化を前に、澤井会長は積極的に議論に参画する姿勢を強調。3価格帯集約の課題や銘柄別収載の必要性、使用量の少ない品目の製造中止など、制度改革論を熱く語った。(望月英梨)

◎「3年後にサワイはないというくらいの危機感」 今こそ制度改革を

「今回の中間年改定(23年度改定)で、サワイでは8%強の薬価が下がった。前期の売上は国内1600億円、営業利益160億円だが、8%下がるとしたら150億円ぐらいの利益が吹っ飛ぶ。毎年こんな状況が続けば、3年後にサワイがないというくらいの危機感をもっている。サワイは、新製品の開発、営業、財務体質、どこにも負けないベストな経営をしていると思う。そういう企業でさえ持たない。もう本当に何をすればいいのか、何をどう努力すれば良くなるのを考えても考えても、後発品80%時代に合致した制度に変えないとどうしようもない」-。澤井会長が本誌インタビューに語ったのは強烈な危機意識だった。

厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が取りまとめた報告書では安定供給の確保として、後発品産業の構造的課題を指摘した。有識者検討会の報告書を踏まえ、中医協や、薬事制度の側面を検討する「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」、さらには後発品の新会議体での議論本格化を前に、「まさしくこれから正念場」と気を引き締める。

◎不採算品再算定の薬価算定 低薬価品の流通経費見直しを

澤井会長が訴えるのは、後発品80%時代に、低薬価品を安定供給できる制度の構築の必要性だ。澤井会長は、「火事がいま、起きている。火元をどこだと特定しようとしている間に、全部燃え尽きてしまうので、火を消す手当をしてほしいということ」と述べ、早急な薬価上の手当を訴えた。「低薬価品では不採算品再算定の計算方式を変え、薬価引き上げの仕組みを作るなどの議論も必要になってくる」と強調した。

具体的には、不採算品再算定は原価計算でコストを積み上げる方式で、流通経費も上限7.3%に定められている。澤井会長は低薬価品目では物流費を賄うことができないと指摘。後発品では約20%の流通経費が必要とのデータを引き合いに、「実態を踏まえ、低薬価品を持続させるための薬価制度を考える議論は極めて必要ではないか」と指摘した。具体的には、薬価10円以下では20%、薬価が10~20円では15%などの数値を例にあげ、議論の必要性を指摘した。23年度薬価改定では臨時・特例的に不採算品再算定が実施されたが、「画期的だ。良く引き上げるという選択肢をとっていただいた」と評価したうえで、改定後にすでに不採算に陥っている品目があることも説明し、「低薬価品については臨機応変な対応が求められる」と表明した。

有識者検討会の報告書では、「最低薬価、不採算品再算定、基礎的医薬品といった制度やその運用の改善を検討する」ことが盛り込まれており、澤井会長は、「議論いただけるように我々としてもデータを出していきたいと思っている」と前向きな姿勢を強調した。

◎銘柄別収載訴え「薬価を下げない努力と結果をもたらす企業だけが恩恵を受けるべき」

日本の薬価制度は市場実勢価格主義であり、流通取引の中で価格が決定されている状況にある。後発品も熾烈な価格競争があり、薬価が引き下げられてきた経緯がある。澤井会長は、「不採算でない薬価にしていただけたら、その薬価で売る努力ができないところの薬価を上げる必要はないと思う。薬価を下げない努力と結果をもたらす企業だけが、そういう恩恵を受けるべきだ。努力もしないのにいつまでもそれというのは競争原理に反すると思う」と表明した。

すでに同社としては今年4月から、新たな仕切価、割戻し体系を敷いた。薬価改定後も仕切価を大きく下げず、割戻しを6ポイント減らした。「”サワイは安定供給優先で価格はもう面倒見ません”という意思を医薬品卸に伝えている」と澤井会長。「こんなことは普通したくないが、我々は安定供給をするために、ジェネリックを安売りしないということを伝えるためにあえてやった」と澤井会長。だからこそ、「努力しないところと、努力しているところと、ガラガラポンで、価格帯で加重平均されるところが我々としたら、努力が何も結果にもつながらない。そこがやはり、公正公平な競争から外れてるように思えてならない」と指摘。後発品は3価格帯に集約される仕組みに問題意識を露わにする。

このため、原則として、「銘柄別」の薬価収載の必要性を強調し、「ぜひとも、日本ジェネリック製薬協会としてもその意見を出してもらうようにお願いしているところだ」と述べた。有識者検討会の報告書には、「医薬品の安定供給等に係る企業情報(製造能力、生産計画、生産実績等)の可視化(ディスクロージャー)を行った上で、これらの情報を踏まえた新規収載時及び改定時の薬価のあり方を検討すべき」と明記されている。澤井会長はこれを引き合いに、「ここに適合する企業の品目は銘柄別にして今後薬価を算定してもらいたい。こういう考え方、意見は出せるのではと思っている」との認識を示した。

◎共同開発の見直しは「ぜひ進めてほしい」、「再編に進まざるを得なくなる」

制度面では、「共同開発」に課題認識を示した。医薬品の供給不足が起きた一因として、共同開発により、多くの企業が参入し、結果として価格競争が起きた経緯を振り返った。そのうえで、「今後の競争過多を止めていく、再発させないためにも、入口はやっぱりしっかりと閉めておく必要があるのではないか」と指摘した。

有識者検討会の報告書では、「新規品目の上市に当たって、十分な製造能力を確保していることや継続的な供給計画を有しているといった安定供給するための一定の要件」を求める必要性を指摘している。澤井会長は、「共同開発のところにもメスが入るということなのでここはうまくまとめていただけたのではないかと考えている」と述べた。

一定の品目については共同開発の必要性を認めたうえで、「何もリスクも取らずお金だけ出して物を仕入れるという共同開発は、今回の十分な製造能力等を求めるという仕組みでは、外れていくのかなと思う」とも述べた。医療現場からはどの企業が共同開発を行っているかわからないとの指摘もあり、屋号の統一を求める声もある。澤井会長は、こうした見直しについて「ぜひ進めていただきたい」と前向きな受け止めを示した。「(共同開発の見直しにより)再編の方向に向かって進まざるを得なくなる。そういう意味では共同開発の入口を絞るということは、結構大きなポイントになってくると思う」と述べた。

◎使用量少ない品目の製造中止を

もう一つ、澤井会長が提案したのが、使用量の少ない品目の製造中止を認めることだ。有識者検討会の報告書では、後発品の構造的課題として、“少量多品目生産”が指摘されている。澤井会長は、「産業構造上の問題は確かにある。ただ、これは我々が作りたくて作ったわけではなく、産業がここまで来る過程の中で、取らざるを得ずして生まれた構造」との見方を表明。ただ,日医工や小林化工の供給不足を引き合いに、「多品目が一瞬にして大量になくなったことを回復するには、少量多品目の構造は問題だとは思う」と述べた。そのうえで、「今の承認許可制度の中で解決できるのか。問題意識が出てきたとしても、解決策はあるのか」と疑問を提示した。

そのうえで、解決策として提案するのが、使用量の少ない医薬品を中止することだ。H2ブロッカーではファモチジン1剤で9割超のシェアを占めるなど、同じクラスの中に複数の成分があっても特定の成分に処方が集中しているとした。Ca拮抗薬では、アムロジピンなどに集中していることを紹介したうえで、「(医療ニーズが)少量であれば製造を中止する自由が企業にありますよ、というルールさえあれば、その製品の製造をやめて、各社アムロジピンに切り替えてくださいとすれば、もっと作ることができる。サワイとしてはそういう提言はしたい」と力を込めた。

使用量の少ない品目については在庫として積み上がり、最終的に廃棄しているケースもあるとして、「無駄にしている時間や労力を必要な薬を作る時間に、まずは置き換えることが最速で効率的なやり方だと私は考えている」と強調した。海外では必須薬以外は製造を中止できる制度があるという。後発品の上市には全規格の製造が求められるが、あわせて規格単位での製造中止を検討することも求めた。これにより、「例えば供給不安が起きたときの対応も少しはしやすくなるのではないか」と強調した。

◎サワイのトップ人事 木村社長就任の人事が「全てを物語っているのではないか」

同社は6月27日付で、沢井製薬代表取締役社長を務めてきた澤井健造氏がサワイグループHDの取締役副会長となり、業界活動に専念させるトップ人事を行った。代わりに、沢井製薬の代表取締役社長には、木村元彦取締役常務執行役員生産本部長が就いた。業界に衝撃が走ったが、澤井会長は、「前社長・会長の澤井弘行最高顧問からも、木村氏の社長就任は良い人事だと評価をもらっている。それが全てを物語っているのではないか」と話した。

業界活動に専念する澤井健造氏については、「我々はとにかく背筋が寒くなるほどの危機感を持っている。これは、制度を変えて、後発品80%にふさわしい制度に変えないともたない。それができるのは、やはり経営をしたことがある人間でないと無理だ。大阪から東京に出向いて訴えるようではダメだ。毎日こちらから攻撃するように伝えていかないと。このご時世でも、ジェネリックも儲かっていると思われている。供給不安の中で儲かるのになぜもっと作らないんだと思われている。そういう認識を変えていかないといけない。だから、今回の人事を行った」と説明した。
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