政府の経済財政諮問会議の民間議員は10月10日、2024年度の“トリプル改定”に向けて、「地域医療構想の実現等医療・介護の効率化」を前提とした議論を求めた。民間議員は、政策横断的に、「予算」・「税制」・「制度改革」等を“パッケージ”として社会保障制度改革などの議論に臨むことをスタンスとして、具体化を推進するよう岸田内閣に要望した。岸田文雄首相は、「歳出改革のみならず、制度改革等を含めて経済財政の両面から課題を提示し、政策横断的に関係会議とも連携して具体化を進める」ことを関係閣僚に指示した。

諮問会議の民間議員は、経済・財政一体改革の重点課題として、24年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定をあげた。「地域医療構想の実現等、医療・介護の効率化、医療機関等の経営状況、国民の保険料負担への影響や、物価高騰・賃金上昇」を項目としてあげ、これを踏まえた議論を求めた。また、コロナ禍で社会保障費が膨らんだことに触れ、「実際の用途が一時的なものか恒常的なものか検証し、歳出を平時に戻すための方策」も重点課題に掲げた。

◎武見厚労相　「新型コロナの特例措置縮減の影響を見極めて対応すべき」

武見敬三厚労相は、24年度改定を「６年に一度の同時改定が行われる節目の年であり、医療と介護の連携など様々な視点からの検討が必要だ」と述べた。そのうえで、「昨今の高水準となる賃上げの動向や、物価高騰の状況などを踏まえるとともに、新型コロナウイルス感染症に伴う特例措置の縮減の影響も見極めつつ、今後とも患者利用者が必要なサービスを受けられるよう対応していく」との考えを示した。「少子高齢化、人口減少時代を迎える中、社会保障制度を持続可能なものとするため、高齢者人口がピークを迎える2040年ごろを視野にマンパワーの確保や、給付と負担の見直しなど、全世代が安心できる社会保障制度を構築することが必要だ」と述べた。

西村康稔経産相は、「介護などサービス業では人手不足で、賃金も上がっていない。厚労省や経産省では人材附則対応として、介護ロボットやDXを進めている。取り組みが進んでいるところは人員配置の緩和などのインセンティブを設けることが必要ではないか」との考えを示した。

◎民間議員　KPIを設定した医療DXの推進を要望

効率化とともに質の高い医療・介護を構築する観点から、医療DXについても議論が及んだ。民間議員は、KPIを設定した医療DXの推進を要望。「歳出効率化の視点だけでなく、質の多型医療・介護提供体制が重要で、ＡＩやデータをしっかり活用していくことが必要だ」、「短期的にはエビデンスベースで、医療DXの推進や、医療・介護サービス提供体制の見直しに向けて取り組みを進める必要がある」などの声があがった。

武見厚労相は、「より良い医療や介護の実現につなげるほか、業務の効率化などを通じてコストの削減も期待できる。今後、全国医療情報プラとフォームの構築や診療報酬改定DXの推進などに向けて、医療・介護分野において工程表に沿って取り組みを進める」と述べた。また、「医療・介護のイノベーションの基本。PHRの整備・活用、電子カルテの普及、診療報酬のモジュール化についても私が推進チームに入って進捗確認を行っており、広報戦略も早急に検討していく」とも述べた。

◎「創薬力強化」、「薬剤自己負担の見直し」は重要課題

医薬品関連では民間議員は、「社会課題の解決を通じた競争力強化」を見据えた「創薬力強化」も重点課題の一つにあげた。民間議員は、「ヘルスケア分野でのイノベーション促進も
喫緊の課題。医療データ利活用の促進、創薬力の強化に向けた規制改革や環境整備に積極的に取り組んでいくべき」との声もあがった。イノベーションの観点から、予防医療は「ニュー・フロンティア」として経済的な効果が見込めるほか、健康寿命を延伸し、国民のウェルビーイング向上に資するとして、積極的な促進を求める声もあがった。一方、「薬剤自己負担の見直し」も重点課題にあげられた。