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製造方法変更手続きで「中等度変更事項」を試行導入へ 審査期間短縮目指す 厚労省・薬事検討会

公開日時 2023/10/16 05:52
厚労省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」は10月13日、医薬品の製造方法等の変更管理の手続きをめぐり、新たな変更カテゴリ「中等度変更事項」の試行的な導入に合意した。現行制度では、一部変更承認申請と軽微変更届出の2種類しかなく、“中リスク”に対応するカテゴリがないことから、新たにカテゴリを設ける。あわせて、重要度の低い事項については参考資料として位置づけ、年次報告とすることも導入する。サプライチェーンのグローバル化が進むなかで、日本の変更手続きが欧米と比べて長いことが指摘される中で、新たなカテゴリの導入で審査期間を短縮し、日本への安定供給につなげたい考えだ。

◎進むサプライチェーンのグローバル化 一変申請の審査長さが安定供給に影響

サプライチェーンのグローバル化が進み、世界の特定の製造所で製造された製品が世界各国に出荷されている。医薬品の製造方法は承認後も随時見直されており、変更する場合は、国・地域ごとの規制当局で審査を受け、すべての出荷先の規制当局に対する手続きを完了する必要がある。ただ、日本では、欧米に比べて変更手続きの承認に時間がかかることが指摘されている。企業にとっては変更手続きが完了するまでの間、日本向けに旧製品の在庫確保が必要となるなど負担となっており、安定供給にも影響することとなっている。

◎日本には中リスクに対応するカテゴリなく

製造方法の変更管理の手続きは、ICH Q12(医薬品のライフサイクルマネジメント)で、「事前承認」、「届出・中リスク」、「届出・低リスク」の3段階で区分されており、欧米でも3段階。一方で、日本では“事前承認”に当たる「一部変更承認申請」、“届出・低リスク”に該当する「軽微変更届出」のみで、中リスクに対応するカテゴリがない。柏谷祐司構成員(日本製薬工業協会薬事委員会委員長)は、「同じ変更カテゴリにおいても、日本では欧米よりもかなり時間がかかる場合がある。特にバイオ医薬品などでは、かなり時間的な違いが生じ、日米欧で同時に変更していくときに、日本だけ足手まといになっているという現状がある。このあたりの生じている問題について可能な限り、解消していく必要があるのではないか」と訴えた。

◎中等度変更事項 審査期間は「受理までの期間+30営業日」に短縮

厚労省は、医薬品の製造方法の変更管理について、新たなカテゴリとして「中等度変更事項」を試行的に導入することを提案した。あらかじめ、“中等度変更事項”と特定された事項や、PMDAへの相談で該当性が確認された事項について、“中等度変更事項”に位置付け、審査を短期間で実施する。なお、試行に際しては、中等度変更事項についての薬事手続きは、現行の一変申請の一類型とする。審査期間は、欧米と同様に、「受理までの期間+30営業日」の方向で検討を進める。なお、現行制度では一変申請の審査期間(中央値)は化成品で6か月、バイオ医薬品で12か月とのデータもあり、一部の変更については大幅な審査期間の短縮が見込める。

現在、製造方法のうち、重要度の低い事項については、承認書の記載から外し、「参考資料」として位置づける。年次報告とする制度も導入する。年次報告の内容確認は、PMDAへの相談枠組みを活用し、過去に提出された軽微変更届の内容も含めて確認し、その確認を記録とすることも視野に検討を進める。

こうした見直しに伴い、承認書の記載事項のあり方についても、通知の全面改正を含めて検討する。製薬業界が「リスクベース」での制度設計を求めるなかで、「国際的に整合したリスクベースの変更管理が実現できるよう」、製薬業界・行政間で議論を進めることも合意された。

一変申請の審査期間が欧米に比べて長いが、厚労省医薬局医薬品審査管理課の松倉裕二課長補佐は、「今回変更手続きを見直すことで、これまで事前承認(一変申請)という形をとっていた部分が一定程度、中等度変更事項に区分が変わり、事前承認の対象からは外れる。事前承認が必要なものが相対的に選別され、減ってくれば、リソースを集中することで(審査期間を)改善できる部分もあるのではないか」と説明。「当面の間、試行的な導入で試行錯誤をする形になると思っているので、直ちに(一変申請の)審査期間が大幅に短縮するという高い期待値を持っているわけではないが、努力はしていきたい」と述べた。

◎柏谷構成員「将来的には都度、変更時にカテゴリ分けについて議論させていただく形に」

中等度変更事項の対象については、“あらかじめ特定する”とされたことに対しても意見があがった。柏谷構成員は、「業界としては、事前に一変(申請)の事項だとか、軽微事項だとか、そういう決め打ちではなく、時間の経過とともにカテゴリが行ったり来たりすることもある。できれば、その都度、変更時にカテゴリ分けについて議論させていただく形で将来的には落としていただきたい」と要望した。成川衛構成員(北里大学薬学部教授)も、「フィージビリティをフィージビリティ・スタディの中で十分検討していただきたい。実際の運用のあり方も試行のなかで検討いただくことを要望する」と述べた。

これに対し、厚労省の松倉課長補佐は、「実際に進めるうえでは、何が中等度に当たるのかというある程度の基準も必要になるし、その都度相談で対応するとなると、大量の相談が一気に来た場合は処理できないこともある。オペレーションがうまく回るかも含めて施行期間のなかで検討する必要があると思っている」と説明。「試行的にやることに委ねている部分もあるので、試行的にやった結果によって最適な姿が見えてくるかと思う。それも踏まえて最終化させていただきたい」と述べた。

なお、今後はGMP適合性調査や薬事監視などについても議論される見通し。
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