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武見厚労相 鎮咳・去痰薬の供給不安解消へ「増産などあらゆる手立てを」 製薬企業24社を呼び要請

公開日時 2023/11/08 04:52
武見敬三厚労相は11月7日、鎮咳・去痰薬の供給不安解消に向け、製薬企業24社の経営幹部を省内に呼び、「増産をはじめとした、あらゆる手立てを講じていただきたい」と要請した。武見厚労相が製薬8社に緊急対応を要請し、年内には鎮咳・去痰薬の供給量を1割以上増加させる見通しが立った。ただ、年末に向けてインフルエンザや新型コロナの流行も予想される中で、供給不安の悪化を防ぐために改めて要請した格好だ。この日は、国からの要請を受けたシオノギファーマ、東和薬品が増産に取り組んでいる現状を報告した。東和薬品の吉田逸郎代表取締役社長が「国策として薬価制度をはじめとする政策誘導を要望する」と訴えるなど、増産に向けた国の支援を求める意見が出た。

鎮咳・去痰薬をめぐっては、インフルエンザや新型コロナの感染症拡大に伴って、9月末以降、供給がひっ迫した。厚労省は鎮咳・去痰薬を製造する主要8社に緊急対応を要請。他の医薬品の製造ラインの緊急融通や在庫の放出などにより、9月末時点と比べ年内には、鎮咳薬約1100万錠、去痰薬約1750万錠、供給量が1割以上増加する見通しが立った。

◎24年度改定「供給不足の不採算品品目は薬価上の措置も」 原薬対応の一変申請迅速対応も

対応が進められる中で、武見厚労相は冒頭の挨拶で、「まだ薬が足りないという声を頂戴している。あらゆる手段により対応をお願いさせていただきたい」と要請した。

厚労省としても、増産対応する企業に対する支援策を講じてきた。年明け以降のさらなる増産に向けて11月2日に閣議決定された総合経済対策には、「感染症等に対応する医薬品の供給不安を解消するため、これまで増産要請に対応してきた企業が更なる増産を行う場合の人員体制の整備や、設備の増強を支援するとともに、2024年度薬価改定において、安定的な供給確保に向けた薬価上の措置を検討する」と明記された。

武見厚労相はこの対策が「メーカー側から、年明け以降にさらに増産するためには、一定の教育訓練を受けた製造人員を新たに確保したうえで、24時間の生産体制へと移行することや、他の医薬品の生産ラインからのさらなる緊急融通を図ること、効率的な生産に向けた設備の増強を図ることが必要との声があった」ことを踏まえたものだと説明。「補正予算においても、所要の措置を講ずることとしている。あわせて、24年度薬価改定において、供給不足が生じていて、不採算品と考えられる品目については、薬価上の対応も検討している」と述べた。

さらに、原薬について代替的な供給源を確保する必要がある場合への対応として、「製造所等の一部変更承認申請に迅速に対応することとした」として、すでに通知を発出して周知を図っていることにも触れた。

◎武見厚労相「あらゆる手立てを講じて国民に必要な医薬品を確実に届ける」

武見厚労相は、「我々としても、国民に必要な医薬品を確実にお届けできるよう、あらゆる手立てを講じて今後もこの役割を果たしていくつもりだ」と述べ、集まった製薬企業の幹部に対し、改めて増産をはじめとした供給不安への対応を要請した。

◎シオノギファーマ メジコン増産へ 中長期的には人員増強、設備投資などが必要に

要請を受け、シオノギファーマの加藤晃代表取締役社長は鎮咳薬・メジコンの増産に向けた取り組みを報告した。原薬の納期前倒し・生産量アップに向けた調整、他製品のリソースの振り替え、試験中製造着手の実施などで、23年11~12月には2468万錠/月、24年1~3月には3702万錠/月と、23年1~10月の1704万錠/月から大幅に増産する計画だ。さらに、中期的には人員増強、長期的には製造所追加・設備投資などを進め、増産することも検討中とした。

◎東和薬品・吉田社長 中長期的にはバックアップ生産体制で安定供給を

東和薬品の吉田社長は、一部3班3交代制でマンパワーをかけて対応しているほか、生産の効率化、バラ包装品など包装形態の簡素化により、23年度中に10%以上の増産(原薬・副原料・資材状況含む)に取り組んでいると説明した。短期的な行政支援としては、バラ包装などの医療機関・薬局への理解支援や、国の買い上げによる備蓄、人員確保や生産計画調整で発生する企業負担に対する支援を訴えた。

中・長期的に安定供給体制を構築していくためには、「現在の製造ライン以外でも補完できる、いわゆるバックアップによる生産体制を構築していくことも必要」との考えを表明。中期的(今年度~来年度)は別事業所等でのバックアップ、長期的(来年度以降)は他企業も含めたアライアンスによるバックアップ生産体制の構築に取り組む考えを示した。これにより、原薬調達のリスクが低下するほか、適正在庫にコントロールできるという。吉田社長は、「施策の実現には、時間と投資が必要になる。バックアップ生産体制を含んだ安定供給体制構築を可能にするために、環境整備の実現を支援いただくとともに、国策として薬価制度をはじめとする政策誘導を要望する」と訴えた。

◎安定供給は「社会インフラ」 増産への投資に対する資金援助を要望

会議後、吉田社長は本誌に対し、安定供給体制は「社会のインフラ」と述べ、国や行政が一体となってこうした体制を構築する必要性を訴えたと話した。そのうえで、「会社の経営状況から見たら、これ以上銀行から借り入れてはいけないところを、社会インフラを構築するために、覚悟を持って個社として投資している」と述べ、増産に向けた設備投資が企業経営のうえでもリスクになっていると説明。銀行の金利引上げのリスクも口にし、「会社の経営としては、資金繰りが大変だ。国には、返還も含めて、資金援助のようなものが必要だ」と述べた。

◎製造所追加の一変も迅速化求める声あがる 在庫リスクへの対応も

このほか、出席者からは、鎮咳・去痰薬の需要が季節性で流行による影響が大きく、在庫を抱えるリスクが高いとして、薬価や国の買い取りを含めた下支えを求める声があった。また、増産に向けて、原薬だけでなく製造所の変更が必要になるケースもあることから、製造所追加のための一変承認審査期間の短縮化・優先審査課を求める声もあった。


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