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基礎的医薬品 “収載後25年”要件見直しへ 平均乖離率超の品目は「企業努力の見える化」踏まえ評価を 中医協

公開日時 2023/11/13 05:00
中医協薬価専門部会は11月10日、製薬業界が要望する基礎的医薬品をめぐる議論を行い、“収載後25年”要件の緩和について、診療・支払各側から「検討に値する」などの声があがった。一方で、「全品目の平均乖離率以下」を満たせない品目があることについては、流通上の課題を指摘する声があがり、加重平均による薬価引き上げについては慎重な意見が聞かれた。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、基礎的医薬品のなかに平均乖離率を超える銘柄があることを「理解に苦しむ」としたうえで、「薬価上評価する場合は、安定供給に向けた情報を開示するなど、何らかの企業努力を“見える化”することを求めることも検討に値するのではないか」と述べた。

基礎的医薬品をめぐっては、2016年度薬価制度改革で導入後、22年度改定で安定確保医薬品(カテゴリA)が追加されるなど、対象品目が拡充されてきた。一方で、毎年薬価改定の導入などで薬価の下落スピードが大きくなり、平均乖離率程度の品目であっても改定対象となるなど、制度設計の前提が大きく変化してきた。このため、厚労省は基礎的医薬品の要件の一つである薬価収載からの期間と、価格帯のあり方について議論の俎上に上げた。

基礎的医薬品は、要件の一つとして、「薬価収載の日から25年を経過しているもの」という薬価収載からの期間が決められているが、毎年薬価改定の導入で薬価が引き下がりやすいことに加え、収載後25年未満でも不採算品再算定が適用される品目があるものの、25年を経過しないと、基礎的医薬品の対象とならないことが指摘されている。

また、“全品目の平均乖離率以下”が要件とされる中で、これを満たさない品目は同一成分・規格でも、基礎的医薬品と異なる価格帯となる。基礎的医薬品の対象外となった銘柄が再び対象となった場合は、それ以外の基礎的医薬品まで薬価を戻さないものの、価格が一定程度引き上げられるほか、対象から外れた銘柄については加重平均して価格を集約され、結果的に改定前薬価よりも薬価が引き上がることもある。制度設計当時は基礎的医薬品とそれ以外の2つの価格帯を想定していたが、価格帯が増えるなど、複雑な仕組みとなっている。

◎“25年要件”見直しへ 診療側・森委員 総価取引による引上げを危惧「層の流通改善を」

“25年要件”の見直しについては、診療・支払各側から検討に前向きな意見が出た。診療側からは、「25年未満で不採算品再算定の対象となる品目があるのであれば、安定供給確保のため要件である年数を見直すことも検討に値すると考える」(長島公之委員・日本医師会常任理事)、「薬価の中間年改定により、長期間にわたり収載されている品目という意味合いが変わってきている。倍のスピードで短期間に薬価が下がってしまう現状に鑑みても、基礎的医薬品の要件である収載から25年というところは見直す必要があると考える」(森昌平委員・日本薬剤師会副会長)との声が出た。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「毎年の薬価改定の導入など、以前と状況が変わってきたことを踏まえれば、そもそも25年要件が妥当なのかを検討することは否定しない」と述べた。診療側の森委員は、「平均乖離率以下が対象となることから、総価取引等による予期しない引き上げとならないように、一層の流通改善の必要」との考えを示した。

◎支払側・松本委員「運用が複雑だからと、加重平均での薬価引き上げは慎重に考えるべき」

一方で、“平均乖離率以下”の要件を満たせない品目があり、価格帯が複数存在するなど複雑な仕組みとなっていることについては、診療・支払各側から慎重な検討を求める声があがった。

診療側の長島委員は、「基礎的医薬品という価格が維持されていることを期待されている品目が、全品目の平均乖離率以下の乖離率となる場合もあることは、制度の目的を考えると、理解に苦しむ」と指摘。「薬価上の評価を与えるのであれば、安定供給に向けた情報開示するなど、何らかの企業努力を“見える化”することを求めることも検討に値するのではないか」と述べた。

支払側の松本委員も、「基礎的医薬品を対象から外れた銘柄について、特に市場で大きな値引きが行われているものであり、運用が複雑だからという理由で、加重平均で薬価を引き上げることについては慎重に考えるべき」と述べた。

◎価格帯の複雑化を懸念する声も

診療側の森委員は、「価格帯が分かれすぎないよう、合理的な整理が必要」との考えを示した。支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、「対象から外れた銘柄を価格集約する際には、改定前薬価までの引き上げとするなど、価格帯が一定の範囲に収束するような仕組みとすべきではないか」と述べた。

業界代表の石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)は、「基礎的医薬品は、不採算に至る前に薬価を下支えする制度であるということを踏まえると、不採算品再算定対象品目における収載からの年数が考慮された要件の見直し等は、必要なこと。ぜひこの方向でご検討いただきたい」と要望した。
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