中医協薬価専門部会 「逆ザヤ」問題 低薬価品の下支えが必要 支払側は「既存ルールでの対応」を主張
公開日時 2025/11/20 05:31
厚労省保険局医療課は11月19日の中医協薬価専門部会に、医薬品流通に関する課題として「逆ザヤ」を論点にあげた。納入価の逆ザヤ品目をカテゴリー別にみると、その他の品目の割合が高く、次いで後発医薬品が多い。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「低薬価品は物価、原材料価格、流通経費の高騰、賃金上昇の影響を受ける。これら医薬品は下支えが必要だ」と指摘した。これに対し支払側の松本真人委員(健保連理事)は、「薬価を下支え」に理解を示しながら、「既存のルールの中で対応すべき」と述べた。一方、物価高騰下での調整幅についても議論した。診療側は、「物価・賃金の上昇を踏まえれば議論する環境にない」と調整幅の見直しに慎重姿勢を唱えたが、支払側は、「カテゴリー別や投与経路別、剤型別、高額薬剤など調整幅を変える余地は十分にある」と反論するなど、見解の隔たりが浮かび上がった。
◎医療用精製水などの水物の輸送費が高騰「薬価の下支えが必要」
逆ザヤ問題をめぐっては、11月5日の流改懇にカテゴリー別の逆ザヤ品目数の割合が報告され、その他の品目と後発医薬品の占める割合の高さが示された。診療側の森委員は、「低薬価品の中には、医療用精製水などの“水物”が多く含まれており、輸送費が非常に高騰している。こうした医薬品への配慮が重要と考える」と述べ、「後発医薬品や薬価の低い医薬品の下支えは必要」と訴えた。
これに対し、支払側の松本委員は、「医療機器と異なり医薬品は銘柄別収載ということを踏まえて慎重に判断する必要があり、薬価を下支えする既存のルールの中で対応すべきだと考える」と述べた。また、支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、「原材料の高騰や製造、流通のコスト増により、原価計算の結果が薬価を上回ってしまう場合には、今回の改定で適切に対応していく必要がある」との見解を述べ、対応の必要性を認めた。
◎支払側・松本委員「一律2%で固定されていることに疑問を持っている」
医薬品流通の安定化を目的に導入した「調整幅」は、2000年度に改定前薬価の2%に相当する額と設定してから、現在に至るまで変更されていない。この日の議論では、物価の高騰等の現状を踏まえ、「薬剤流通の安定のため」に設定されている調整幅についてどう考えるかが論点となった。支払側の松本委員は、「一律2%で固定されていることに疑問を持っている」と指摘。「25年度の薬価改定でカテゴリー別に実勢価改定の対象範囲を変えたことを踏まえると、調整幅を変える余地は十分にある」と主張した。これに対し診療側の森委員は、「厳格な管理が必要な医薬品も出てきており、流通管理コストも増えている。また、薬局、医療関連の管理コストや損耗廃棄コストも増加している」と述べ、「近年の物価上昇や流通費の高騰などを踏まえた検討が必要だ」と慎重姿勢を示した。
◎江澤委員「調整幅の縮小について議論する環境にはない」
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)も、「近年の物価・賃金の上昇を踏まえれば、むしろ現在の2%では不足しているとも思われる状況だ」と訴え、「現時点で調整幅の縮小について議論する環境にはない」とクギを刺した。
◎中間年改定 安定供給や物価高騰など「総合的に判断すべき」江澤委員
診療報酬改定がない年の薬価改定(いわゆる中間年改定)も論点にあがった。支払側の鳥潟委員は、「薬価差が生じているのであれば、4大臣合意を踏まえて粛々と行っていくべき」と主張。一方で診療側の江澤委員は、「来年実施される薬価調査の結果も踏まえて判断すべき」と述べながら、「国民負担軽減の観点のみならず、安定供給の確保や物価の高騰など、さまざまな要素を踏まえて、総合的に判断すべき」と強調した。
◎森委員 販売包装単位の適正化「可能なものからすぐに対応を」 業界にも見解求める
このほか薬価専門部会では、販売包装単位の適正化にも議論が及んだ。診療側の森委員は、「今後必要に応じて薬価上の対応の必要性を検討するのでなく、可能なものからすぐに対応の検討を進めていただきたい」と課題の緊急性をアピール。特に高額医薬品が増えていることから、「処方実態と包装単位が合わなく、調剤のたびに残薬となるようなものについては、販売包装単位での薬価の収載など早急に対応していただきたい」と厚労省に要求し、加えて製薬業界に対してもヒアリングの機会を通じて見解を求める姿勢を示した。