厚労省・薬事検討会 薬事監視強化へリスクに応じたGMP調査を推進 合同無通告立入検査を開始
公開日時 2023/11/16 05:30
厚労省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」は11月15日、リスクに応じたGMP調査を推進することを了承した。具体的には、PMDA と都道府県が合同で無通告立入検査を行う、「合同無通告立入検査」を開始するほか、後発品の GMP 調査において重点的に調査すべき事項を整理するなど、薬事監視の強化を図る方針を示した。
小林化工が業務停止などを受けた2021年2月以降、現在までに15件の行政処分があるなど、相次いでいる。後発品メーカーを中心に行政処分が相次ぐ中で、厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」では、薬事監視の強化の必要性が指摘されており、対応の方向性を示した。
業界代表の柏谷祐司構成員(日本製薬工業協会薬事委員会委員長)はこうした状況を説明し、「現状では品目単位の調査が基本だが、短期的には製造所単位の調査に拡充し、最終的にはリスクベースによる製造所単位ごとの調査とすることが、GMP調査の目指すべき姿ではないか」との意見を表明。厚労省も、リスクに応じたGMP調査を推進する方針を示した。
◎リスクに応じた合同無通告査察で高度な立ち位置検査を実現
現状でも、欧米などと同様にPIC/Sの内容を踏まえて品目や製造所の特性を踏まえたリスク評価を行い、調査を書面で行うか、実地で行うかの判断や立入頻度を検討している。今後は、さらに合同無通告立入検査を開始する。現在でも都道府県とPMDAが合同で無通告立入を行っているが、これを発展させ、国と都道府県が連携し、品質製造管理上のリスクが高い製造所に合同で無通告立入する。これにより、より高度な立入検査を可能にしたい考えだ。製造所のリスクについては、直近の立ち入り調査からの経過期間や品目数の多さ、後発品の取り扱いの有無、自主回収の情報などから分類し、すでに省内の内部資料としてリスト化されているという。
業界側は書面調査を縮小・廃止し、実地調査とすることなども求めたが、「現状のGMP 調査員のリソースで、書面調査等を縮小・廃止しても高頻度での実地調査は見込めず、監視体制の低下につながり、製造業者のコンプライアンス意識の低下や不正事案のさらなる発生を招くおそれがあるため、その実現は困難」とした。
◎GMP調査で重点調査すべき事項を整理、都道府県へ周知
都道府県に対し、GMP調査に際し、製造品目数や製造量等に見合った製造・品質管理体制が確保されていることを確認することを依頼しているが、今後さらに後発品のGMP 調査において重点的に調査すべき事項を整理し、都道府県へ周知を図る。また、2024年度予算事業で、PMDAが全国の GMP調査で判明した不備事項を収集・蓄積・共有・分析等を行う体制の検討・構築を行う事業を開始。国と都道府県が速やかに情報共有を含めた連携体制の整備し、薬事監視の質的な向上を図る。
◎製造上流に課題も 製造前、承認早期のOOS監視強化
行政処分を受けた企業の第三者委員会の報告書を見ると、製造開始時の製剤開発や工業化の検討が不十分など、上流に問題があることも指摘。後発品の承認審査時のGMP調査で、品質問題の予防、発見に力を入れるべきとして、製造前の検討がきちんとなされているか確認するほか、承認早期の初回調査で、OOS(規格外試験結果)の監視を強化し、製造上の問題が生じていないことを確認する方針を打ち出した。
このため、当面の対策としては、無通告立入検査の強化・実施、都道府県調査員の教育・訓練、後発医薬品のGMP 調査において 重点的に調査すべき事項を整理・周知 することによる、都道府県 GMP 調査員の調査技術の向上を図る方針。
◎都道府県格差大きく 査察に民間の力活用も一考
都道府県の調査員数は2~33人と人数に差があるなど、GMP調査の経験や調査員数に都道府県格差があることも論点にあがった。
構成員からは、民間企業を活用する必要性を指摘する声もあがった。川上純一構成員(日本薬剤師会副会長)は、「企業の製造部門の経験がある人でなければ見抜けないものもある。PMDAも企業出身の方をできるだけ採用し、査察舞台に入れていく」体制の構築の必要性を指摘した。宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、「都道府県はそれほど余裕がない。民間を使うなど、実際的なことを考えなければ動けないということを前提で考える必要がある」と述べた。