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中医協総会 後発品の供給不安めぐる特例措置 延長で診療・支払側対立 患者の利益めぐり

公開日時 2023/11/24 04:52
中医協総会は11月22日、後発品の供給不安による診療報酬上の特例的な引上げ措置が今年12月に期限を迎えることから、今後の取り扱いについて議論した。供給不安は昨年末よりもむしろ悪化しているとして、診療側は特例措置の継続を要望。これに対し、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は診療報酬の引上げが患者負担の増加に直結することから、「納得できる合理的な理由が示されない限り、単純に賛同できるものはない」と指摘。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「患者にとって最大の不利益、不幸は何か。必要な医薬品が安定して供給されないことだ」と述べ、特例措置の継続を再度訴えた。このほか、バイオシミラーについては、バイオ後続品導入初期加算の対象範囲拡大などに診療・支払各側が賛同した。

◎後発品供給不安の特例措置年末で期限切れ 続く供給不安で現場の負担は増加

後発品の供給不安を踏まえ、2022年末の大臣合意に基づき、診療報酬では一般名処方加算(+2点)、後発医薬品使用体制加算(+20点)、外来後発医薬品使用体制加算(+2点)、調剤報酬では地域支援体制加算(+1点または3点)を臨時特例的に引き上げる措置が行われた。特例措置は今年4月から12月までとされており、間もなく期限を迎える。

引上げを決めた際の附帯意見では、「医薬品の適切な提供に資する医療現場の取組状況の把握や、加算の実施状況及び安定供給問題への対応状況について調査・検証等を行う」とされていた。

供給不安をめぐっては、20年から供給停止・限定出荷が繰り返されているが、23年9月時点でも出荷制限や供給量が減少している品目が2割を超えている状況にある。厚労省が23年度に実施した調査によると、後発品の供給体制について、1年前と比べて改善したと回答する診療所・病院・医師・薬局の割合は低かった。一般名処方の件数は増加傾向を示していたが、「保険薬局の備蓄」を理由に後発品を調剤できなかった場合が47.4%あった。日本薬剤師会の調査によると、昨年末よりも負担感が悪化していると回答した薬局は約86%。供給停止等により先発・後発を問わず平均で200品目超の医薬品が入手困難となっている上に、薬局では日常的に追加的な業務負担が発生しているとしている。

◎継続求める臨床側に支払側・松本委員「納得できる合理的な理由ない限り、単純に賛同できない」

特例措置をめぐり、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)が「患者さんに安定的に医薬品を供給する取り組みを促していく観点からは、まずは本年12月に終了予定である一般名処方加算等の特例措置を継続していただく必要があると考える。また、供給が滞っている品目を加算の対象から除外するリストについても、内容をアップデートしながら、当面は継続していただくことが必要だ」と訴えた。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も、「医薬品の供給問題への対応は、全ての薬局に影響を及ぼすものであり、薬局の使命である地域の医薬品提供体制の維持と、その前提となる医薬品の安定確保のためには、現在適用されている特例措置の内容も踏まえて、医薬品供給問題の対応に多大な苦労をしている薬局を広く評価していくことが、この長く続く未曾有の危機を乗り越えていくために必要と考える」と延長の必要性を訴えた。

一方で、支払側の松本委員は昨年末に議論した際に「供給不安の真の被害者は患者であるということを主張したにもかかわらず、当面の対応ということで、やむを得ず了解した経緯がある」と振り返った。供給不安により必要な医薬品が手に入らないだけでなく、診療報酬の引上げにより、患者負担が増加するためだ。そのうえで、「納得できる合理的な理由が示されない限り、単純に賛同できるものはない」と突っぱねた。

◎診療側・長島委員「患者にとって利益になる」 森委員「疲弊する現場、しっかり業務をしている」

これに対し、診療側の長島委員は、「状況をよく見てください。後発品の供給不安定は解消されておらず、むしろ悪化している。そして、患者さんの視点に立ってください。患者さんにとって最大の不利益、不幸は何か。必要な医薬品が安定して供給されないことだ。この現状および患者さんの視点に立てば、患者さんにとって利益となる、安定供給に資する特例措置は当然継続すべき」と反論。

診療側の森委員は、供給不安が悪化しているとのデータを示したうえで、「現場は本当に疲弊をしている。何とか現場で他のメーカーの後発品や先発品、また他の剤形を入手し、それから近隣の薬局から手配する、そして医師に相談をして処方変更をお願いして、今の状態を保っている。患者のためにしっかりと業務をしているところだ。、ぜひ継続をしていただきたい。後発品の使用促進をこの問題で止めてはいけない」と理解を求めた。

◎診療側「見直し議論できる状況にない」 支払側「きめ細かい対応で検討の余地ある」

一般名処方加算や後発医薬品使用体制加算などの基準値の引上げについても診療側の長島委員が「後発医薬品の供給不安定が解消されておらず、むしろ悪化しているとも言える現状では、後発医薬品使用体制加算等の基準を変更する議論ができる状況にはなく、現場にこれ以上の混乱を与えるべきではない」と強調した。

一方で支払側の松本委員は、「限定出荷等の対象になっている成分を、後発品の数量割合を計算から除外する等の対応をきめ細かく行った上で、引き続き後発品の使用促進することは重要だ。後発医薬品の数量割合を指標とする各種加算の下限値を引き上げることは検討する余地があると考えている」と反論した。また、「現行は補足的な使用となっているカットオフ値、すなわち全医薬品に占める後発品と長期収載品の割合にも着目して、患者負担を考慮した医薬品の処方を推進することも検討すべき」とも述べた。

このほか、診療側の森委員はインフルエンザ治療薬・タミフルの小児用ドライシロップを利に、剤形によって入手しづらく、通常では発生しない同じ有効成分での先発・後発の変更や、剤形・規格の変更が増加していると説明。この状況が医師への問い合わせや患者の待ち時間増加につながっているとして、「医療現場や患者の負担を軽減させることを目的に、医師と薬剤師が連携した上で、一定の範囲内での変更調剤等に関して、柔軟な運用を認めるなどの見直しをお願いしたい」とも訴えた。

◎バイオシミラー普及へ バイオ後続品導入初期加算の対象範囲拡大へ 医療機関の評価も

バイオ後続品(バイオシミラー)についても議論した。政府が「29年度末までに、バイオシミラーに80%以上置き換わった成分数が全体の成分数の60%以上」とする新たな政府目標が設定されたことを踏まえ、さらなる推進策の必要性が指摘されている。

現行制度では、適切な情報提供を推進する観点から、診療報酬上では「バイオ後続品導入初期加算」で評価されている。20年度改定では在宅自己注射、22年度では外来化学療法を実施している患者と範囲を拡大しているが、対象とならない薬剤もある。例えば入院治療で用いられているものの、置き換え率が30%未満であるアガルシダーゼベータやラニビズマブはバイオ後続品導入初期加算の対象になっていない。成分によって置き換え率に開きがあることから、厚労省はバイオ後続品導入初期加算の対象範囲拡大を提案した。

支払側の松本委員が「新たに政府目標が設定され、来年度からの医療費適正化計画の記載事項ともなり、保険者としても取り組みを進めるが、患者が安心してバイオ後続品を使用するためには、医師、医療機関からの働きかけが最も効果的だ。バイオ後続品導入初期加算の対象成分を拡大することには賛同する」と述べるなど、診療・支払各側が賛同した。

診療側の長島委員は、「現場感覚としては、すでに外来でバイオ医薬品を使用していた患者さんについて、入院時に切り替える場合など、途中から後続品に切り替えることは、適応症の違いもあることも加わり、実際的には難しく、一般的な後発医薬品の切り替えとは同等に論じられないことに留意していただくことが必要であると考える」とも述べた。

厚労省はまた、入院医療においてバイオ後続品の有効性や安全性について十分な説明を行い、それぞれの成分の特性や置き換え率を踏まえた目標を達成した医療機関に診療報酬上で評価することも提案した。支払側の松本委員が「DPC等の包括評価が重複しないようにしつつ、診療報酬で評価することも十分に検討できる」と述べるなど、これについても異論は出なかった。

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