日本新薬 DMD治療薬・ビルテプソ 承認条件の国際共同P3解析結果速報で主要評価項目で有意差認められず
公開日時 2024/05/28 04:50
日本新薬は5月27日、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬・ビルテプソ点滴静注(一般名:ビルトラルセン)について、承認条件とされた国際共同第3相試験(RACER53)の解析結果の速報で、主要評価項目で有意差が認められなかったと発表した。同社は、詳細なデータ解析や結果に影響を及ぼす要因の検討を進める方針。「この結果を踏まえ、規制当局と綿密に連携し、DMD患者さんに最善の利益となるように、今後の進め方を決める予定」としている。
ビルテプソは2020年3月25日、「エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィー」を効能・効果に承認された。条件付き早期承認制度が適用されており、国際共同第3相試験成績の提出と、レジストリを用いた調査を市販後に行うことが承認条件となっていた。
◎主要評価項目の立ち上がり速度 プラセボとの有意差認められず
承認条件として実施された「RACER53」は、エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子変異を持つ歩行可能なDMDの男児77例を対象とした多施設共同比較試験。ビルトラルセン投与群80mg/kgまたはプラセボ投与群に二重盲検下でランダムに割り付け、週1回、48週間投与し、有効性・安全性を比較した。
主要評価項目である床からの立ち上がり時間の速度(rise/sec)は、48週投与後のベースラインからの変化ではビルトラルセン投与群、プラセボ投与群ともに増加傾向が認められ、統計学的な有意差は認められなかった。安全性に関しては、「有害事象の発現率は本剤投与群とプラセボ投与群との間に差はなく、本剤投与群で発現した有害事象はいずれも軽度または中等度であり、治療中止に至った症例はなかった」としている。
◎詳細なデータ解析、結果に影響及ぼす要因の検討続ける
同社は、骨格筋におけるジストロフィン産生の増加に加え、第2相非盲検継続投与試験の結果を踏まえ、「先行試験の結果から、本剤は治療を必要としているDMD患者さんに対して価値ある薬剤であると考えており、現在、さらに詳細なデータ解析、及び結果に影響を及ぼす要因(ステロイドを含む併用薬の影響、年齢等の背景因子、投与期間など)の検討を続けている」としている。
ビルテプソは、日本新薬と国立精神・神経医療研究センターが共同で見出した、アンチセンス核酸医薬品。DMD患者の筋肉中のジストロフィン遺伝子のエクソン 53 を迂回して、機能のあるジストロフィンタンパク質を産生することによって、疾患の進行を抑制し、病態を改善することが期待される。DMDは、筋肉細胞の骨組みを支えるジストロフィンタンパク質の遺伝子変異が原因で、正常なジストロフィンタンパク質が産生されないことにより筋力が低下する遺伝性筋疾患。男児に発症する頻度が高い。