卸連・宮田会長 流通改善GLへの対応が「卸の運命を左右する分水嶺」 会員に「自ら変わる」こと呼びかけ
公開日時 2024/05/31 04:52
日本医薬品卸売業連合会(卸連)の宮田浩美会長は5月30日の通常総会で、3月に改訂された流通改善ガイドライン(GL)への対応が、「医薬品卸業界の運命を左右する分水嶺になる」と強調し、会員各社に「自らが変わることが最も重要」と呼びかけた。同GLは流通関係者全員が遵守すべきガイドラインだが、まずは卸各社が内容をしっかり理解し、総価取引や未妥結・仮納入など過去からの商慣習の抜本的見直しを図るよう求めた格好だ。宮田会長は、「(流通改善の)環境は整い、私たちにとって待ったなしの状況となった。今こそ真に実効性ある流通改善に邁進していきたい」と力を込めた。
また、宮田会長は、「流通改善をやりあげることが医薬品の安定供給につながると確信している。一番大事なことは患者さんに必要な医薬品が届き、治療できることだ」とも述べた。
◎中間年改定に「抜本的な見直しを求めていく」
中間年改定については、政府が6月に策定するとみられる「骨太の方針2024」を見据え、「抜本的な見直しを求めていく。引き続きあらゆる機会を通じて卸売業としての考えを伝えていく」と話した。
卸連はこの日に決定した24年度事業計画の中で、中間年改定については関係団体との連携も図りつつ、「医薬品の安定供給確保等について見直しの方向性が盛り込まれるよう取り組む」としており、“安定供給確保”を御旗に関係各所に抜本的見直しを働きかけていくとみられる。
◎広報活動強化 大規模災害・パンデミック時の流通体制確保の仕組みづくりも
医薬品卸が平時、有事に果たしている役割やその活動が持つ社会的価値を広く社会に知ってもらうため、広報活動を強化する方針も表明した。若手社員を中心に退職者が増加していることも念頭に、「医薬品卸で働く皆さんが自信と誇りを持って働ける職場環境や、働きがいのある魅力的な産業を目指す。医薬品卸で働きたいと次世代を担う若者にも共感してもらえる取り組みを一層強化していく」と強調した。
このほか、能登半島地震などこれまでの大規模災害やパンデミックへの対応・教訓、浮き彫りになった課題を整理・検討し、今後の大規模災害やパンデミックの発生時における流通体制確保の仕組みづくりに取り組むとした。
返品問題にも触れ、特に「中抜き返品」(納品した医薬品の一部を使用し、残りを返品する)への対応を図る考えを示した。24年度事業計画では、中抜き返品について、「独占禁止法に抵触しないよう留意しつつ、情報共有の在り方について検討を行う」としている。
◎卸連総会 「過去からの商習慣を一新する」など4項目を決議
卸連はこの日の総会で、コンプライアンスを徹底するとした上で、「自律と自立の精神を持ち、医薬品卸自らが率先して流通改善に取り組み、過去からの商慣習を一新する」など4項目を、会員総意の下に決議した。
このほかの3項目は、▽医薬品業界のサスティナブルな発展と医薬品の持続的な安定供給確保の阻害要因となる中間年の薬価改定については、抜本的な見直しに向けて取り組む、▽医薬品流通産業が魅力ある産業となるよう取り組みを進めるとともに、大規模災害やパンデミック時における盤石な流通体制の構築に取り組む、▽デジタル技術を活用し、取引伝票の標準化・効率化を推進する――となる。
決議文では流通改善について、「先の流通改善ガイドラインの改訂は全ての流通関係者にとって大きな転換点であり、医薬品卸は、過去からの取引慣行から脱却し、流通改善をさらに進めることが求められている」と記載した。