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MR1人当たり生産性 トップは中外製薬で5億円超 経営環境を踏まえるとMR数の適正化は避けられず

公開日時 2024/07/02 04:52
ミクス編集部は製薬各社が公表した直近の国内医療用医薬品売上高と、MR数調査結果(ミクス6月号掲載)を用いてMR1人当たり生産性を試算した。トップの中外製薬は5億2100万円で、前年度比2400万円減。ただ、コロナ中和抗体薬ロナプリーブの政府買上げ分(812億円)を除くと、生産性は4億4600万円となる。一方で23年度に国内医療用医薬品売上が1500億円以上のトップ10社の業績を集計したところ、国内の医療用医薬品の売上収益は3.6%減収となった。内訳は、増収企業4社に対し、減収企業は6社に及んだ。

◎国内大手製薬企業 全世界に占める日本市場の売上シェア減少続く

国内製薬ビジネスは大きな転換期を迎えている。国内大手製薬企業の全世界に占める日本市場の売上シェア減少が続いている。すでに武田薬品は国内売上シェア10.6%、アステラス製薬は16.9%となり、ともに8割以上を米国、欧州、中国・アジア諸国等で稼ぐビジネスモデルに転換した。第一三共、大塚HD、エーザイの各社も、日本国内の売上シェアは30%台となり、日本以外の海外売上比率は7割前後と年々拡大している。第一三共に限ってみると、2019年当時の国内売上シェア58.6%から23年度は34.1%まで24.5ポイント減らしている。

一方で、国内トップ10社の23年度国内医療用医薬品の売上収益を前年度実績と比較したところ、塩野義製薬15.9%減、中外製薬14.8%減、武田薬品11.8%減、エーザイ9.8%減、田辺三菱製薬3.0%減、参天製薬1.5%減と、いずれも減収だった。なおトップ10以外で住友ファーマは37.5%の大幅減収となっている、逆に、トップ10社の中で増収企業は、第一三共の13.3%増、小野薬品7.1%増、アステラス製薬3.0%増、大塚HD1.6%増の4社だった。

◎中期的な経営リスク抱える国内企業 次なる主力品シフトに備えた投資も

減収企業に限らず、増収企業も中期的な課題を抱えている。第一三共は国内業績で好調なリクシアナの特許切れを数年後に控えており、グローバル製品の抗体薬物複合体(ADC)・エンハーツへのシフトが求められる状況にある。同様に、アステラス製薬はグローバル製品のイクスタンジが、小野薬品はオプジーボが数年後にそれぞれ特許切れを迎える。各社とも次世代を担うグローバル製品の育成や海外の振興バイオファーマとの提携によるパイプライン獲得に腐心している状況で、これに伴い、社内組織、人材育成、デジタル・AI投資など、大幅なビジネス転換を進めているところだ。アステラス製薬が23年度に早期退職者を募集し、MR数400人減の800人体制に改めたことも、その一つと言える。

◎MR数適正化に限らず、社内のデジタル化(DX)やデジタル人材育成に注力

こうした経営環境の変化を踏まえ、国内製薬企業のMR1人あたり生産性をみると、国内減収企業だけでなく、中期的に主力品の特許切れなど経営リスクを抱える企業にとって、MR数の適正化(削減)は避けられず、その分をデジタル化(DX)による生産性向上やデジタル人材の育成を進めながら、短期的にMR1人当たり生産性を維持・向上させる傾向を強めていることも分かった。

◎中外製薬のMR1人当たり生産性 ロナプリーブの政府買上分を除くと4億4600万円

MR1人あたり生産性トップの中外製薬は5億2100万円で、前年度比2400万円減。ただコロナ中和抗体薬ロナプリーブの政府買上げ分(812億円)を除くと、生産性は4億4600万円となる。2037億円の政府購入分があった前年度の生産性は3億7500万円。MR数130人減もあり、生産性が向上し、2年連続のトップとなった。

◎各社ともMR数減らして一人当たり生産性を維持

2位の参天製薬も5億円台に乗せ、2年連続の2位となった。MR数は前年度比80人減となる。初の大台に乗ったアステラス製薬は、前年度比1億1900万円増の3億3800万円。同社の国内市場の売上高は前年度3%増だが、MR数を400人削減したことが大きく影響した。塩野義製薬も国内医薬品売上高は前年度比15.9%減としたが、MRを170人減らした影響で生産性を上げた。このほか生産性を伸ばした小野薬品や第一三共で、約100人のMRの減員があった。なお、住友ファーマのMR一人当たり生産性は、1億2600万円で前年比1300万円減となった。同社のMR数はこの1年間でほぼ横ばい(2人増員)。ただ、23年度の国内売上高が前年度比37.5%減だったことや、現在の取扱品の特許切れが迫っていることを踏まえると、MR数については、さらなる適正化が求められる水準にある。

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