製薬協・森専務理事 中医協の業界陳述「できることはやったとの認識で一致」 「約1名厳しい委員が」
公開日時 2024/10/18 04:51
日本製薬工業協会(製薬協)の森和彦専務理事は10月17日、理事会後の会見で、中医協での業界ヒアリングについて、「今回の報告時点で、できることはやったという認識で(理事会では)一致していた」と述べた。「製薬協として説明が足らなかったという認識では明らかにない」と明言。中医協では製薬業界の主張に対して厳しい指摘が相次いでいる。森専務理事は名指しこそ避けたが、「厳しい意見をおっしゃった約1名の委員いらっしゃるのは確かだが、新薬開発には時間がかかる、プロセスには変化をするにしても時間がかかるだろうということにかなり理解を示すご発言も色々あった」と説明。「中医協委員にも、もっとわかりやすく説明する必要があるとの意見交換があった」と述べた。
◎中医協では支払側・奥田委員(経団連)が業界に理解求めるも釘さされる
この日の理事会では9月25日、10月9日の中医協での議論について報告を受けた。中医協では、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は2025年度薬価改定に向け、「残念ながら貴重な医療財源を投入して、薬価で評価しても効果が期待できないと判断せざるを得ない」と強調。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も「しっかりと取り組んでいるというプロセスの変容を見えるようにしていただきたい」と釘を刺すなど厳しい意見が相次いだ。一方で、製薬企業も属す日本経済団体連合に属す支払側の奥田好秀委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)は、医薬品開発に時間がかかるとして、「今年開発要請したから来年出てきますか、そういうものではない」と説明。これに対し、診療側の長島委員が再度、「薬価上の対応がどのような効果をもたらしたのかは少なくとも、業界企業の内部ではっきりわかる。もっと具体的に明らかにしない限り、議論は進まない」と釘を刺していた。(関連記事は
こちら、議事要旨は
こちら)
◎「中医協委員にもっとわかりやすく説明する必要がある」
森専務理事は中医協の報告を受けたうえでの総会での意見交換を紹介した。森専務理事は、「製薬協として説明が足らなかったという認識では明らかにない」と明言し、厳しい意見の委員が「約1名いた」との認識を表明した。そのうえで、「ラグ・ロス品目に対する取組みが進んでいるということを中医協のメンバーの方々にもっとわかりやすく説明する必要があるということが議論された」と説明した。「具体的に医薬品の開発は時間がかかる話なので、まず自身が変わり、そして行動が変わり、そして結果が表れるという段階だが、どこがどのくらい目に見えて動いているのかもっとわかりやすく説明する必要がある。そういう認識が共有された」と述べた。
◎制度改革から半年での開発計画「変更」は変更を予定、あるいは検討時期に来ていた品目
製薬業界が8月7日のヒアリングで示した製薬30社を対象にした調査によると、2024年度改革が直接・間接に影響して国内開発計画を前向きに「変更した」との企業が8社ある。森専務理事は、「長期的計画を急に変更するというのはよほどでないと行われない。制度改革をやって半年もたたないうちに調査をした。そこで出てくるものは、たまたまそのタイミングで計画変更を予定した、あるいはそれにはまるような案件がちょうど検討の時期に来ていたところから方針を変えたというのが8社くらいあったということだと思う」との見解を表明。「この段階でできるのは、このぐらいの個別事例の紹介と、全体を見て一部方針を変えた、ポジティブになったと大部分が前向きに受け止めたという意識の変容が表れたというところまで。今回の報告時点で、できることはやったという認識で一致していた」と話した。
◎製薬協・木下理事長 25年度改定改めて廃止と強調 「選挙後に本格的に調整」
製薬協の木下賢志理事長は、同日の会見で25年度薬価改定について問われ、「選挙が終わってから本格的な調整作業にあるものと我々は思っている」との認識を表明。改めて、「我々は、中間年改定は廃止すべききものだと思っている」と強調した。
木下理事長は、「24年度薬価改定はこれまでの改革と違い、イノベーション評価の大きな第一歩。継続的に俯瞰的にやっていただきたいというのが我々の想いだ。しかし、中間年でもう一度薬価改定することは、日本市場でせっかく第一歩を踏み出し、これから革新的新薬を評価していただくという機運の中でやられることで、やはりこれは問題だ」との認識を表明した。物価上昇下での薬価改定についての課題も指摘。「賃金・物価が上がり、全体的に原価が上がる中で、中間年をやるのかという問題意識がある。中間年改定を廃止していただきたいというのが我々の考えで、こういったことを今後、調整過程の中で選挙後に主張していきたい」と述べた。