杏林製薬・荻原社長 ムコダインへの選定療養影響「現時点で大きくはない」 供給不安解消後を注視
公開日時 2024/11/11 04:50
杏林製薬の荻原豊代表取締役社長は11月8日、2024年度第2四半期決算説明会で、去痰薬・ムコダイン(一般名:カルボシステイン)への長期収載品の選定療養導入の影響について「今の時点では大きくはないとみている」と述べた。ムコダインを含む鎮咳・去痰薬をめぐっては、インフルエンザや新型コロナの感染症拡大に伴って供給不安が起き、23年11月に武見前厚労相が製薬企業に対し増産などの対応を要請していた。現在も、ムコダインや後発品で限定出荷の状況が続いている。荻原社長は、供給不安の解消後に選定療養の影響が出る可能性も口にした。
ムコダインの数量ベースでのシェアは約2割。武見前厚労相からの要請を踏まえ、子会社のキョーリン製薬グループ工場が新たに高岡工場(富山県高岡市)を建設するなど対応を進めているが、限定出荷を解除できていない状況にある。荻原社長は、「できるだけ供給を増やしてはいるが、他社の供給も安定しないと需要に合わせたコントロールはできてこない」と話した。
◎24年度上期業績は増収・営業増益 主力の新薬群が伸長 新薬比率は54%
24年度上期業績は、売上高が前年同期比0.4%増の551億3900万円、営業利益が16.0%増の15億4900万円だった。過活動膀胱治療薬・ベオーバや、ニューキノロン系抗菌薬・ラスビック、抗アレルギー薬・デザレックスなど主力の新薬群が伸長。薬価改定や長期収載品とオーソライズド・ジェネリック(AG)の売上減少などのマイナス要因を吸収した。
新薬比率は24年度上期で54.0%と、中期経営計画で示した25年度目標50%以上を上回って推移した。加えて主力5製品(ベオーバ、ラスビック、リフヌア、デザレックス、フルティフォーム)の売上拡大を掲げており、24年度上期は計画比101.3%の236億円に達した。25年度には560億円を目標としている。
◎ベオーバ、ラスビックは順調にシェア拡大 リフヌア浸透に課題も通期予想は維持
ベオーバは前年同期比26.4%増の104億円だった。過活動膀胱(OAB)治療剤市場が拡大しており、ベオーバ自体の新規処方獲得率や売上シェアも想定通りに進捗。患者シェアは前年度上期31.7%から39.9%に伸ばし、25年度に50%の目標を見据える。
ラスビックは19.8%増の30億円に伸ばした。経口抗菌剤市場ではAMR対策推進により処方抑制の傾向にあるが、ラスビックは治療推奨薬として診療ガイドラインなどへの掲載も追い風となって伸長。経口NQ市場での売上シェアは前年度上期22.7%から32.1%となり、25年度の40%獲得を目指す。
慢性咳嗽治療薬・リフヌアは7.6%増の4億円だったが、中間期計画の6億円には届かなかった。課題である「難治性の慢性咳嗽」の疾患概念の浸透や服薬継続日数の向上などの解消を図りつつ、荻原社長は「今年度予想の15億円達成の旗は降ろさずに取り組んでいきたい」と強調した。
◎後発品事業 AG売上減も「後発品市場シェアで50%以上を維持」
後発品事業は7.2%減の157億円だった。AGの売上減少が響いたが、AG3製品(キプレスAG、ナゾネックスAG、ウリトスAG)の後発品市場内シェアは「いずれも50%以上を獲得しており、戦略通り維持できている」(荻原社長)と自信をみせた。
【24年度上期連結業績(前年同期比) 24年度予想(前年度比)】
売上高 551億3900万円(0.4%増) 1234億円(3.2%増)
営業利益 15億4900万円(16.0%増) 65億円(4.3%増)
親会社株主帰属純利益 12億5500万円(33.6%減) 50億円(8.7%減)
【24年度上期の国内主要製品売上高(前年度実績) 24年度予想、億円】
ベオーバ 104(83)220
ラスビック 30(25) 64
リフヌア 4(4) 15
デザレックス 34(31)96
フルティフォーム 64(62)125
ペンタサ 62(61)116
キプレス 18(26)53
ムコダイン 15(20)43
ウリトス 2(3)3
ジェネリック計 157(169)382
うちキプレスAG 50(58)118
うちナゾネックスAG 7(9)43
うちウリトスAG 3(3)5