日医・松本会長 25年度薬価改定「技術料に還元」 医薬品の安定供給は補正予算踏まえた補助金で実現を
公開日時 2024/12/05 04:52
日本医師会の松本吉郎会長は12月4日の定例会見で、年末の予算編成に向けて議論の進む25年度薬価改定の考え方について、「乖離があることに対して医療技術料にしっかりと還元する、戻していただくのが基本的な考え方」と強調した。不採算品再算定のあり方が焦点の一つに浮上する中で、松本会長は、薬価の決定は「市場に委ねている」としたうえで、「過度に薬価を引き上げること、これも問題だと思う。企業の体力を考慮することも重要だ」と指摘した。さらに、日本医師会として医薬品の安定供給に向けて、国が支援した「半導体」の事例に絡めて、医薬品の安定供給に向けた「補助金や税制を活用した支援」を訴えてきたことを説明。結果として、補正予算案に安定供給関連の施策が盛り込まれたとして、「製薬業界において、確実な改革や体制整備が進み、現下の医薬品供給不安が改善につながっていく」ことに期待感を示した。
25年度薬価改定をめぐってはこの日午前の中医協で、平均乖離率が約5.2%との24年薬価調査の速報値が報告され、議論が本格化している。日本の薬価制度は市場実勢価格主義であることから、松本会長は平均乖離率“5.2%”について、「市場を反映した数字だと思うので、これに対して何か、ということはない」と指摘。その上で、「薬価調査の結果をもとに薬価改定が行われるとすると、乖離があることに対して医療技術料にしっかり還元する、戻していただくのが基本的な考え方。不足する技術料に対して補うという考え方は変わらない」と述べた。
◎医薬品の安定供給 「半導体と同様補助金を活用した支援を要望」 補正予算でも計上へ
医薬品の安定供給について日本医師会として重視する姿勢も強調。「患者の生命、健康にかかわる安全保障の問題として重く受けとめ、医薬品供給不安の当初から国や業界団体に対して要望と意見を行ってきた」と振り返った。松本会長は4月に開かれた内閣府の健康・医療戦略参与会合の場で、医師会として“医薬品の安定供給に向けた提言”を公表し、「半導体産業等に対する大規模な支援等が行われているのと同様に、国による積極的な補助金等を用いた支援を実施していただきたいと要望してきた」と振り返った。
24年度補正予算案では、バイオシミラーを国内で製造し、バイオ医薬品産業を育成するための国内製造施設整備として65億円が計上された。また、海外依存度の高い原薬や医療機器、βラクタム系抗菌薬の安定確保事業も予算措置された。松本会長は、「こうした取り組みを続けることにより、医薬品の国内生産力が高まり、国益に寄与するとともに、日本経済地方経済の成長にもつながっていく」との見方を表明。「医薬品の安定供給の確保に資する広範な施策の予算が交付されることで、製薬業界において、確実な改革や体制整備が進み、現下の医薬品供給不安が改善につながっていくこと、また継続した安定供給の確保に資する予算額を期待したい」と強調した。
◎賃上げの予算措置「医療界の切実な訴え、実を結んだ」
補正予算案では、「医療・介護・障害福祉分野の更なる賃上げの支援等、医師偏在是正に向けた対策の推進」に2861億円が計上された。松本会長は、「日本医師会のみならず、全国の地域医師会や医療関係団体、そして医療従事者等の医療界全体による切実な訴えが今回の予算措置として実を結んだ」と評価した。
「医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・職場環境改善等による更なる賃上げ等の支援」では、ベースアップ評価料算定機関に対して経費相当分の給付金が支給される。松本会長は、「日本医師会としては、これからベースアップ評価料を算定する医療機関も対象とするよう国にしっかりと働きかけ、国全体の賃上げに寄与していきたい」と表明。届け出医療機関を増やすためにも、手続きや補助金申請の簡素化を訴える姿勢も示した。
◎電子処方箋普及へ「来年度以降も一層の補助率や金額の拡充実現を」
「医療・介護DX等の推進」には1447億円が計上された。松本会長は、電子処方箋について言及。導入率は医科・歯科で低率だが、「電子処方箋は地域で面として導入を進めていかなければ、最大のメリットである重複投薬や使用併用禁忌のチェック機能を十分に発揮することができない」と指摘した。
電子処方箋の普及が進まない背景については、「医療機関が導入に踏み込めない最大の理由は、先行して導入することのメリットが乏しいにもかかわらず、補助金が不十分で、導入運用に大きな自己負担が発生しまうこと」と説明。「もう一つは五月雨式に機能追加がなされるため、先行導入するとその都度、改修の費用がかかってしまう。ある程度機能が出揃ってから導入した方が、結果的に効率が良くなってしまう。それを懸念する考えが強い」と続けた。
そのうえで、「これらを解決するためには十分な補助金が必要不可欠だ。今回、年度内の導入や新機能対応の補助が計上されたが、それにとどまることなく、来年度以降もより一層の補助率や金額の拡充をしっかりと実現していただきたい」と要望した。