参天製薬の後天性眼瞼下垂用点眼液・アップニークミニなど新薬7製品が承認へ 医薬品第一部会が了承
公開日時 2025/12/04 04:50
厚生労働省の薬事審議会・医薬品第一部会は12月3日、参天製薬の後天性眼瞼下垂の治療に用いるアップニークミニ点眼液(一般名:オキシメタゾリン塩酸塩)など新薬7製品の承認の可否を審議し、承認を了承した。
この中には、キッセイ薬品の子宮筋腫に対する新規ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)拮抗薬・イセルティ錠(リンザゴリクスコリン)や、バイエル薬品のケレンディア錠の慢性心不全の適応拡大が含まれる。
また、前回の部会において、委員から承認前に添付文書の修正が求められた塩野義製薬の抗うつ薬・ザズベイカプセル(ズラノロン)について、厚労省が委員からの指摘を踏まえた修正内容を報告、了承された。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽アップニークミニ点眼液0.1%(オキシメタゾリン塩酸塩、参天製薬):「後天性眼瞼下垂」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は4年。
α1及びα2受容体作動薬。オキシメタゾリン塩酸塩(0.05%)を有効成分とする医薬品には、OTCのナシビン点鼻薬があり、新効能・新用量・剤形追加で申請された。
適応となる眼瞼下垂は、何らかの原因により上眼瞼が下がり、ものが見にくくなる疾患。多くの治療手段は手術となっている。アップニークは、後天性眼瞼下垂の適応を持つ国内初の点眼薬となる。参天製薬は決算説明会などで、自由診療(保険適用外)での販売展開を予定していると説明している。
用法・用量は「通常、成人には、1回1滴、1日1回点眼する」。海外では、2025年10月現在、米国において、本薬0.1%を有効成分とする点眼剤が成人における後天性眼瞼下垂に係る効能・効果で承認されている。
▽セピエンス顆粒分包250mg、同顆粒分包1000mg(セピアプテリン、PTCセラピューティクス):「フェニルケトン尿症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
フェニルアラニン水酸化酵素の補酵素BH4の前駆体。適応となるフェニルケトン尿症(PKU)は、必須アミノ酸のフェニルアラニンの分解に必要な酵素の生成を助ける遺伝子の欠陥に起因して発症する希少な先天代謝異常症。
海外でセピエンスは、PKUに係る効能・効果で25年6月に欧州で、同年7月に米国で承認されており、25年10月現在、欧州及び米国を含む5つの国又は地域で承認されている。
国内では、PKUに用いる薬剤として、BH4製剤・ビオプテン顆粒(サプロプテリン塩酸塩)やパリンジック皮下注が承認されている。
▽ラヴィクティ内用液1.1g/mL(フェニル酪酸グリセロール、オーファンパシフィック):「尿素サイクル異常症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
フェニル酪酸のプロドラッグ。適応となる尿素サイクル異常症(UCD)は、生体内で発生する有毒なアンモニア(NH3)を無毒な尿素に変える代謝経路(尿素サイクル)に関与する酵素等に先天的な異常があり、高アンモニア血症などを呈する一連の疾患群。
海外において、ラヴィクティは2013年2月に米国で承認されて以降、25年10月現在、欧州及び英国を含む12の国又は地域で承認されている。
オーファンパシフィックでは、UCD治療薬として、ブフェニール錠・顆粒(フェニル酪酸ナトリウム)を2013年1月から販売している。
▽①プリミーフォート経腸用液6、②同経腸用液8、③同経腸用液CF(①②人乳/グリセロリン酸カルシウム/グルコン酸カルシウム水和物/塩化カルシウム水和物/無水クエン酸ナトリウム/クエン酸カリウム/リン酸一水素マグネシウム/硫酸亜鉛水和物/塩化ナトリウム/硫酸銅③人乳、クリニジェン):「極低出生体重児等の体重増加不全を呈する新生児及び乳児の栄養管理」を効能・効果とする①②新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤③新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
海外では、2024年5月時点において欧米を含む10の国又は地域で栄養製品として販売されている。
▽イセルティ錠100mg(リンザゴリクスコリン、キッセイ薬品):「子宮筋腫に基づく下記諸症状の改善。過多月経、下腹痛、腰痛、貧血」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
キッセイ薬品が創製した経口ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)拮抗薬。承認申請は、子宮筋腫を対象とした国内第3相KLH2301及びKLH2302試験の結果に基づく。
用法・用量は「通常、成人には200mgを1日1回経口投与する。なお、初回投与は月経周期1~5日目に行う」。
海外では、2022年6月に欧州及び英国において子宮筋腫に係る効能・効果で承認されて以降、25年9月現在、子宮筋腫に係る効能・効果で30以上の国又は地域において承認されている。
国内で既承認の経口GnRH拮抗薬にはレルミナ錠がある。
▽ケレンディア錠10mg、同錠20mg(フィネレノン、バイエル薬品):「慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。
非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)。承認申請は、心機能の指標である左室駆出率(LVEF)40%以上の心不全(HF)患者を対象とした国際共同第3相FINEARTS-HF試験の結果に基づく。ケレンディアにとって「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」に続く2つ目の適応となる。
HFの用法・用量は「通常、成人には以下の用量を1日1回経口投与する。▽eGFRが60mL/min/1.73m2以上:20mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に40mgへ増量する。▽eGFRが25mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満:10mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量する」。
海外では、25年9月現在、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に係る効能・効果について米国及び欧州を含む90 以上の国又は地域で承認されており、HFに係る効能・効果については、25年7月に米国で承認されている。
▽①オプスミット小児用分散錠1mg、②同小児用分散錠2.5mg、③同錠10mg(マシテンタン、ヤンセンファーマ):「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。特定用途医薬品。再審査期間は10年。
エンドセリン受容体拮抗薬。現在、成人用量(10mgを1日1回経口投与)が設定されており、小児用量を追加するもの。小児用分散錠は新剤形となる。
オプスミット錠の小児用量は「通常、体重50kg以上の小児には、10mgを1日1回経口投与する」。小児用分散錠の用量は、3カ月以上の小児に対して年齢や体重に応じた設定となっている。
海外では、2025年8月現在、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の効能・効果で欧米を含む81の国又は地域で承認され、小児のPAHに係る適応は欧州を含む32の国又は地域で承認されている。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽アジンマ静注用1500(アパダムターゼアルファ(遺伝子組換え)/シナキサダムターゼアルファ(遺伝子組換え)、武田薬品):「先天性血栓性血小板減少性紫斑病」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量医薬品。再審査期間は残余(令和16年3月25日まで)。
遺伝子組換えADAMTS13製剤。現在、成人及び12歳以上の小児の用量が設定されており、今回、12歳未満の小児への投与も可能となる。
海外では、本適応症について成人及び12歳未満を含む小児に対して、米国及び欧州でそれぞれ23年11月及び24年8月に承認され、25年8月現在、欧米を含む7の国又は地域で承認されている。