くすり未来塾 26年度薬価改革へ問題提起 イノベーション評価「まだ終わっていない」 類似薬効比較方式も
公開日時 2025/10/01 04:51

薬価流通政策研究会・くすり未来塾は9月30日、2026年度薬価制度改革に向けて、「イノベーション評価の薬価改革はまだ終わっていない」と問題提起した。細胞医療などの新規モダリティを引き合いに、類似薬効比較方式の問題点を指摘した。また、デフレからインフレへと局面が変化するなかで、「インフレ時代の薬価改定のあり方を検討し、実現可能なものから26年に実施すべき」とした。くすり未来塾では年末の予算編成を見据え、論点を踏まえた議論を深め、11月中にも提言を取りまとめたい考え。
◎類似薬効比較方式 類似薬との比較、類似性の判断基準に問題意識
提言では、現状のイノベーション評価を論点にあげた。現行の類似薬効比較方式の問題点として、先行新薬と“どれだけ近しいか”という類似性を評価しているとして、標準治療・既存治療からの有効性・安全性の改善度(優位性)を評価の主軸にすることを提案した。また、諸外国では評価に際して、必要に応じて間接比較データを活用しているとして、間接比較データを認め、相対比較の結果を薬価に反映することを主張。「医薬品の価値の適正な評価の仕組みを国際的な視野に基づいて引き続き検討すべき」と強調した。
現在の“類似性”の判断基準が薬理作用や化学構造式、投与形態など“物質(モノ)”に重点を置いているが、CAR-Tなどの遺伝子・細胞治療を引き合いに、細胞の生物学的な違いや細胞の体内活性の違い、免疫抑制(短期・長期)などの臨床上必要な手技の煩雑さの違いなどを類似性評価に導入することを提案した。
高額薬剤が医療費を引き上げるとの論調も、後発品の使用促進や特許切れの品目の薬価低下、薬剤使用の適正化などの影響で、「少なくとも2015年以来の伸びは、ほとんど医療費を押し上げる要素になっていない」と牽制。抗がん剤・オプジーボが特例拡大再算定に加え、用法用量再算定や市場拡大再算定で複数回の薬価引き下げを受けたことを示しながら、「過度に下がり過ぎた医薬品」が効能追加などで広く使われた場合の「再評価」の仕組みを検討する必要性にも言及した。
◎インフレ時代の薬価・診療報酬「実現可能なものから26年に実施を」
26年度薬価制度改革では、デフレからインフレへと局面が変わる中で、物価・賃金高騰などへの対応も焦点となることが想定される。くすり未来塾は、電気やガスなどの公共料金がインフレ対応されている一方で、医薬品は価格転嫁が難しいと説明。「インフレ時代の予算編成のあり方、診療報酬のあり方、薬価制度のあり方を理念や基本に遡って議論すべき」として、「実現可能なものから2026年に実施すべき」と強調した。
◎流通の「対応策急ぐべき」 製薬企業の仕切価上昇で卸は「サービス低下でやりくり」
流通についても「インフレ下には価格転嫁が極めて困難。一方で、医薬品卸は他の取引先からの価格転嫁は認めなければならない」と説明。製薬企業からの仕切価が引き上げられ、流通コストの増加を反映したものとなっていないことにも問題意識を示した。物流コストが増加するなかで、医薬品卸は人件費も燃料費も抑制せざるを得なくなり、賃上げなどの単価上昇をサービスの低下(配送減、拠点減、在庫減、人員減等)でやりくりしている実態にある」と指摘。具体的な対応策は示さなかったが、「対応策を急ぐべき」と危機感を露わにした。
同日は、製薬企業や医薬品卸などの賛助会員が集い、議論を行った。会合後に、共同代表を務める長野明氏、武田俊彦氏が会見に臨み、提言や議論の内容を紹介した。