沢井製薬 製剤研究部にDX導入で年間2800時間効率化 生成AI活用で効率的に知識伝承、行動変容も
公開日時 2026/03/16 05:59

沢井製薬研究開発本部製剤研究部の西村卓朗氏は3月13日、大阪市内で開いた同社のイベントInnovation Meetupで講演し、デジタル技術を活用し業務効率化により、「年間2800時間以上の時間を捻出した(26年2月時点)」ことを明かした。製剤研究部では、安定生産に向けて生成AIを用いた社内ナレッジ共有基盤を構築。属人的ではなく、効率的に知識が伝承され、手を動かす実験や次の計画立案など、「本来の創造的な業務を実現できるようになった」と意義を強調した。部員の発想の転換などもすでに表れているといい、「DX は知識創造のサイクルを非常に加速させるエンジンになる」と期待を寄せた。
◎安定生産に向けて高まる効率的な開発 カギ握るナレッジと基盤技術の共有
製剤研究部は、コンセプト実現に向けて、処方設計、製造方法の検討、申請に必要なデータ取得を進める。沢井製薬は全国6拠点の工場で約800品目を製造しており、品目が多いだけに安定生産に向けて効率的に開発することの重要性も高まっている。
西村氏は、「ナレッジや基盤技術が共有されていない場合、どうやって効率的に作っていくか、一から全て検討していかなければならない」と説明。その結果として、属人的に検討が進むほか、安定生産を支えるデータが十分蓄積されないリスクがあると指摘した。一方で、ナレッジや基盤技術が共有されている場合は、「最初から基盤技術に落とし込んだ検討ができたり、足りないようなデータをナレッジで補完することができたりする。効率的に開発が進み、安定生産を支えるようなデータを蓄積していくことができる」と意義を強調した。
◎生成AI活用でナレッジ共有 製剤開発の検討やPMDAとのやり取りデータベース化
こうした中で、同社では生成AIを用いてナレッジを共有する取組みを進めてきた。研究員が社内資料に基づいた内容をチャット形式で AI に相談できるシステムを構築した。2005年以降の製剤開発の検討報告書約1000報、PMDAとのやり取り約800回分をデータベース化。製剤特許の回避戦略や添加剤の種類やグレード、配合比率の検討方法、各工程の管理戦略などの情報に瞬時にたどり着ける。これまでは、Google ドライブを活用してきたが、キーワード検索がメインとなり、ほしい情報に数時間たどり着かないようなケースもあったといい、「これまで文書検索などにかかっていた時間も実際の実験業務に割り当てることができようになり、効率的な製品開発に取り組むことができている」と強調した。
◎「継続的に再現性の高い研究成果が得られる」 研究員の思考レベルがボトムアップ
さらに、導入初期には「〇〇について教えて」など簡単な質問が多かったが、リスクを洗い出すような質問に活用されるなど、部内のITリテラシーも高まりを見せているという。経験の浅い研究員でも、見落としがちなトラブル事例や別品目での工夫を知ることで、ベテラン研究員のような質の高いアセスメントができたことを紹介。「AIによりナレッジを活用することで、研究員の思考レベルがかなりボトムアップした」と話した。さらに、浮いたリソースをまた基盤技術の研究に応用していくことによって、検討のレベルが標準化されるとして、「この2つのボトムアップにより、継続的に再現性の高い研究成果が得られることを目指して取り組んでいる」と強調した。
このほか、報告書の作成や評価・解析など間接業務のDX化もすすめているという。これらの取組みにより、製剤研究部約50人で年間約2800時間の削減を実現した。「部内のリテラシーが非常に高まり、IT技術をどう取り込めばより効率化できるか、という発想の転換も生まれてきている」と話した。
◎AIと研究者が互いに手を取り合って実験を進め「より自由な発想で革新的な技術を」
今後もさらに取組みを進める姿勢も強調した。治験薬の製造段階での文書作成支援やデータベース化などを進めていく考えも示した。西村氏は、「AIと研究者が互いに手を取り合って実験を進めていくイメージ」を示し、計画段階から検討結果の解析、データに基づく討論など全ての段階のパートナーとしてAIを活用する姿を医飯、「この流れをぐるぐるぐるぐる AIと研究者が一緒に回していくことによって、より自由な発想で革新的な技術が生まれるのではないかと期待している」と話した。