新薬・再生医療等製品4製品 7月15日収載へ 日本ベーリンガーのジャスケイドはピーク時578億円
公開日時 2026/07/09 04:50
中医協総会は7月8日、新医薬品2製品と新再生医療等製品2製品の計4製品の薬価収載を了承した。収載日は7月15日の予定。収載予定品目の中には日本ベーリンガーインゲルハイムの肺線維症治療薬・ジャスケイド錠があり、ピーク時売上は578億円と予想された。同錠は有用性加算(I)(A=35%)、市場性加算(I)(A=5%)の補正加算がつき、汎用規格の18mg錠の薬価は加算前の5973.60円が加算後に8363.00円に引き上げられた。また、フェリング・ファーマの高リスク筋層非浸潤性膀胱がんに対する遺伝子治療法・エドスチラドリン膀胱内注入液はピーク時売上203億円と予想された。
エドスチラドリン膀胱内注入液とイシンファーマの表皮水疱症に対する再生医療等製品・アロステムシートは最適使用推進ガイドラインが策定され、保険適用上の留意事項通知が14日に発出、収載予定日の15日から適用される。
◎ハイツエキシンとアロステム 企業都合で収載まで90日超に
一方、収載予定の4製品のうち海和製薬の卵巣明細胞がん治療薬・ハイツエキシン錠とアロステムシートの2製品は、「企業都合」により承認取得から90日超の収載となった。厚労省は収載が遅れた理由について、ハイツエキシン錠は「原価計算にあたりグローバル本社から詳細な情報を得ることに時間がかかったため」、アロステムシートは「当初90日以内の収載を目指したが、原料のひとつの調達が困難になり、安定供給確保のため新たな調達ルートを構築する必要が生じたため」と説明した。なお、ハイツエキシン錠は3月23日付で承認、アロステムシートは4月3日付でそれぞれ承認されている。
◎「希少疾病に苦しむ患者にとって容認しがたい」「ドラッグラグと全く同じ結果」と委員から苦言
承認から収載まで90日超となったことに対し、支払側の高町晃司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、ハイツエキシン錠は希少疾病用医薬品の指定を、アロステムシートは希少疾病用再生医療等製品の指定を受けていることを引き合いに、「希少疾病に苦しみ、新薬を待ち望む患者にとっては容認しがたい」とし、「最近、収載が遅れるものが目に付く」と苦言を呈した。
公益側の飯塚敏晃委員(東京大学大学院経済学研究科教授)は、「収載が遅れる事態はドラッグラグと全く同じ結果をもたらす」と指摘。厚労省に対し、承認から収載まで90日超を要しているケースの精査と、これがドラッグラグにつながる懸念がないかの調査・報告を求め、厚労省がこれに応じる場面もあった。
7月15日付で収載される製品は以下の通り(カッコ内は成分名と薬価収載希望会社)。
〈新医薬品〉
▽ジャスケイド錠9mg、同錠18mg(ネランドミラスト、日本ベーリンガーインゲルハイム)
薬効分類:399 他に分類されない代謝性医薬品(内用薬)
効能・効果:特発性肺線維症、進行性肺線維症
薬価:9mg1錠4,190.10円
18mg1錠8,363.00円(1日薬価:16,726.00円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数1.8万人、販売金額578億円
加算:
有用性加算(I)(A=35%)「本剤はホスホジエステラーゼ(PDE)4B阻害作用を有し、既存の抗線維化薬や肺高血圧症の適応を有するPDE阻害薬とは作用・標的分子が異なる新規作用機序医薬品であること、臨床試験において、既存の抗線維化薬との併用群も含めて有効性が認められたこと等から、有用性加算(I)(A=35%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算(I)(A=5%)「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。本剤は優先審査の対象とはされていないことから、例外的な下限として、5%が妥当と判断した」
革新的新薬薬価維持制度への該当性:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当する(H1)
経口のホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害剤。抗線維化作用および免疫調整作用をもち、特発性肺線維症(IPF)及び進行性肺線維症(PPF)の適応を取得した初の経口PDE4阻害薬。IPFでは10年以上ぶりの新薬の登場となる。
IPFは、指定難病である特発性間質性肺炎の病型の一つ。肺に進行性の線維化が生じる予後不良の特発性(原因を特定できない)の難治性疾患であり、未治療の場合の生存期間の中央値は約3年と報告されている。国内では、ニンテダニブ(オフェブ)とピルフェニドン(ピレスパなど)がIPFの適応を持っている。
PPFは、自己免疫性間質性肺疾患を含む間質性肺疾患(ILD)の臨床診断に関連しており、特に関節リウマチ、全身性硬化症、過敏性肺炎などの疾患によって引き起こされる。進行性の呼吸症状の悪化や肺機能の低下を来し、患者の全生存期間の中央値は約3.7年と報告されている。国内の最大患者数は4万8000人程度と推定されている。国内では、オフェブが名称は異なるが、同一病態の疾患である「進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)」の適応を持っている。
ジャスケイドのIPF、PPFに対する用法・用量は「通常、成人には1回18mgを1日2回経口投与する。なお、患者の忍容性に応じて、1回9mg1日2回に減量することができる」。
▽ハイツエキシン錠10mg(リソバリシブメシル酸塩水和物、海和製薬)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(内用薬)
効能・効果:がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞がん
薬価:10mg1錠7,313.40円
市場予測(ピーク時9年後):投与患者数586人、販売金額14億円
加算:
有用性加算(II)(A=5%)「本剤はPI3Kα阻害作用を有する新規作用機序医薬品であり、化学療法歴のあるPIK3CA遺伝子変異陽性の卵巣明細胞がん患者に対する有効性が示されたこと等から、有用性加算(II)(A=5%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算(I)(A=10%)「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす」
迅速導入加算(A=10%)「本剤は国際共同試験により開発され、優先審査の対象であり、かつ本邦における承認申請及び承認は欧米より早いことから、加算の要件を満たす。国際共同試験における日本人症例数が比較的多いことを踏まえ、加算率は10%が妥当である」
なお、製造原価開示度50%未満のため、加算係数はゼロ。
革新的新薬薬価維持制度への該当性:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当しない
親会社の中国Shanghai Haihe Biopharma社が創製した新規PI3Kα阻害剤。用法・用量は、「通常、成人にはリソバリシブメシル酸塩として1回40mgを1日1回空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」。
対象疾患の卵巣明細胞がん(OCCC)は、上皮性卵巣がんの中でも希少かつ悪性度の高いサブタイプ。再発性OCCCには確立された有効な標準治療がなく、予後は、より一般的な漿液性卵巣がんと比べて著しく不良。ゲノム研究により、PIK3CA遺伝子変異が高頻度に認められることが明らかになっている。
〈新再生医療等製品〉
▽アロステムシート(ニバドストロセル、イシンファーマ)
効能・効果又は性能:難治性又は再発性のびらん・潰瘍を有する栄養障害型、接合部型及び単純型(重症汎発型に限る)表皮水疱症
薬価:5cm×5cm1枚182,096.00円
市場予測(ピーク時9年後):投与患者数25人、販売金額7.9億円
加算:市場性加算(I)(A=10%)「本剤は希少疾病用再生医療等製品に指定されていることから、加算の要件を満たす」
なお、製造原価開示度50%未満のため、加算係数はゼロ。
革新的新薬薬価維持制度への該当性:該当する(主な理由:希少疾病用再生医療等製品として指定)
費用対効果評価:該当しない
最適使用推進GL:策定する(適用日:26年7月15日)
ヒト(同種)脂肪組織由来間葉系幹細胞(ALLO-ASC)シート。健康成人ドナーの皮下脂肪組織に由来する間葉系幹細胞を単離・培養しシート状にしたもの。表皮水疱症(EB)の病変部へ貼付することにより、創傷治癒を促進する。用法及び用量又は使用方法は「通常、週1回、皮膚潰瘍の面積に応じて貼付枚数を定め、皮膚潰瘍をその辺縁を含めて本品同士が重なり合わない様に覆い、貼付する」。
なお、東邦ホールディングスが7月6日付でイシンファーマを子会社化した。
対象疾患となるEBは、表皮基底膜を構成するタンパク質をコードする遺伝子の変異が原因で発症する遺伝性疾患であり、単純型、接合部型、栄養障害型及びキンドラー症候群―が4大病型とされる。アロステムシートは、栄養障害型、接合部型及び単純型(重症汎発型に限る)を適応対象とする。
国内では、再生医療等製品として、ヒト(自己)表皮由来細胞シート・ジェイスが、難治性又は再発性のびらん・潰瘍を有する栄養障害型又は接合部型EBの適応で、また、遺伝子治療用製品・バイジュベックゲルが栄養障害型EBの適応で承認されている。
▽エドスチラドリン膀胱内注入液(一般名:ナドファラゲン フィラデノベク、フェリング・ファーマ)
効能・効果:BCG膀胱内注入療法後に残存・再発した上皮内がんを有する高リスク筋層非浸潤性膀胱がん
薬価:20mL1瓶2,327,036.90円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数488人、販売金額203億円
加算:
有用性加算(II)(A=10%)「本品は、ヒトインターフェロン アルファ-2b遺伝子を搭載した非増殖性の遺伝子組換えヒトアデノウイルスであり、膀胱上皮内癌を対象疾患とした初の遺伝子治療薬として新規の作用機序を有すること、当該疾患領域で新規の作用機序の新薬収載が約30年間なかったことから、有用性加算(II)(A=10%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算(I)(A=10%)「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす」
なお、製造原価開示度50%未満のため、加算係数はゼロ。
革新的新薬薬価維持制度への該当性:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当する(H1)
最適使用推進GL:策定する(適用日:26年7月15日)
非複製型アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療法。インターフェロン・アルファ2b遺伝子を含み、カテーテルを用いて3カ月に1回、膀胱内に直接投与する。化学療法とは異なり、患者自身の膀胱上皮細胞をインターフェロン産生工場へと変換する新しい治療アプローチとなる。インターフェロン・アルファ2bタンパク質を局所的に高濃度かつ一過性に発現させることで、体の自然な抗がん力を強化し、再発を抑えたり、残存した腫瘍に対する抗腫瘍効果を持つ。
用法・用量は、「通常、成人には1回あたり75mL(3×1011vp/mL)を3カ月間隔で膀胱内投与する」。
BCG療法が奏功しなかった場合の次の治療選択肢が膀胱の完全切除となるなか、エドスチラドリンは、BCGが奏功しないNMIBC患者に膀胱を温存する治療選択肢を提供することになる。日本では日本化薬と共同販促し、販売はフェリングが担当する。