【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

ノーベル賞受賞者・坂口志文氏 日本発創薬力強化策を提言 クロスオーバー投資家が少ない 人材育成は重要

公開日時 2026/07/16 04:52
ノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター特別栄誉教授)は7月15日、東京都内で開催した「医療産業成長戦略セミナー Annual Forum 2026」で、自身の経験を踏まえた日本発創薬力強化策について講演した。坂口氏は、「日本は米国に比べて投資規模が小さく、クロスオーバー投資家が少ないことが創薬ベンチャーに対する中長期的支援の課題だ」と強調した。その上で、「アカデミアと産業界を双方向でつなぐ人材育成が求められている」と警鐘を鳴らし、学生のうちから起業マインド醸成し、社会実装することを学べる教育が必要になると提案した。セミナーには、産官学のトップが多数参加。上野賢一郎厚労大臣、松本尚デジタル大臣も出席し、挨拶した。

この日のセミナーには、会場参加250人、オンライン視聴250人の計500人が参加した。特別講演は2025年にノーベル賞を受賞した坂口志文氏が「医薬の基礎研究と社会実装への期待」をテーマに登壇。坂口氏は、Treg細胞の生物学と機能に関する研究の第一人者として、制御性T細胞(Treg)の発見から、その後の免疫寛容の維持、自己免疫疾患の予防におけるTreg細胞の役割や今後の期待などについて語った。

◎グローバル試験や事業化加速で 25年3月から米国拠点に移行 26年中にFIH実施へ

坂口氏はまた、自身が経験した研究成果の社会実装に言及。2016年にTreg研究の臨床応用を目的としたバイオベンチャー「レグセル」を創業。その後、グローバルでの臨床試験や事業化を加速する目的で、2025年3月に米国カリフォルニアを拠点とする企業「RegCell, Inc.」に移行したと強調した。また、同時期にAMEDから株式希薄化を伴わない最大3730万ドル(56億円)の資金提供を受けたことを明かし、今年中に、抗原特異的自己免疫疾患を対象としたヒト初回投与試験(FIH:First-in-Human試験)を開始すると述べた。

◎「日本で創薬ベンチャーがIPOする利点がなく、事業発展させる道筋が見えない」と警鐘

坂口氏は、日本のバイオベンチャーが成功するための課題に触れ、「特に創薬開発は事業期間が長く、開発費用が高い。さらに成功率が低いなど、事業化の難易度が高いビジネスモデルで、実用化には大規模かつ中長期的な投資が不可欠」と指摘。さらに、IPO(新規株式公開)後に資金面を支える投資家の不足に加えて、「開発後期になるに従い費用が大きくなる一方で、多くの創薬ベンチャーがIPO時に”モノ“はあるが利益を得られていない」と述べ、「IPO後に赤字が膨らみ、株価が低下して資金調達が困難になり、会社存続が厳しくなるという悪循環がある」と指摘した。坂口氏は、大学発ベンチャーの多くが潰れている現状に触れながら、「現状の日本で創薬ベンチャーがIPOする利点がなく、事業を発展させる道筋が見えないというのは一つの問題だ」と警鐘を鳴らした。

◎日本は投資規模が小さく、アカデミアから事業化をつなぐ「クロスオーバー投資家」が少ない

さらに、日米間の違いにも触れ、日本は投資規模が小さく、アカデミアから事業化までの垣根をつなぐ「クロスオーバー投資家」が少ないことを問題視した。加えて人材育成にも触れ、学生が企業マインドを持つための教育について今後の検討課題にあげた。

◎上野厚労相 MFN価格問題 「国民や患者に革新的新薬が迅速に届くよう確実に対応する」

上野賢一郎厚労大臣と、松本尚デジタル大臣がこの日開催された「医療産業成長戦略セミナー」で挨拶した。上野厚労相は、高市首相の掲げる日本成長戦略17分野の一つとして「創薬・先端医療」を推進し、責任ある積極財政のもと成長投資を戦略的に進める方針を明示。「我が国の特許品市場の成長を目指し、スタートアップ支援、人材育成、研究開発促進、AI利活用の推進、国際共同試験の倍増などの取り組みを通じ、日本発のイノベーション創出を強力に加速をしていく」との考えを強調した。

また、米国のMFN価格設定への対応について触れ、「国民や患者の皆様に革新的新薬が迅速に届くよう、確実に対応してまいります」と述べ、政府をあげて取り組む決意を表明した。

◎松本デジタル大臣「国産AIの必要性やAI主権の問題を考慮する必要がある」

松本尚デジタル大臣は挨拶で、自身が医師として働いていた30年前から比べると、「日本の製薬産業の創薬力が落ちてしまった」との印象を語ったが、一方で、「これを取り戻す良い機会が今回の成長戦略ではないか」と表明。「(成長戦略を)確実に実施して頂き、再び日本の製薬産業が元気一杯になることを期待したい」とエールを送った。また、「AIを使った診断や治療の普及に伴い、日本の患者や国民がAIを信頼できるよう、国産AIの必要性やAI主権の問題を考慮する必要がある」と強調した。

プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(6)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事

一緒に読みたい関連トピックス

創薬力強化 投資家が注目する“目利き人財” の確保

創薬力強化 投資家が注目する“目利き人財” の確保

2026/07/01
「日本には、世界屈指の基礎研究やアカデミアの強みがある。それを商業的な価値や社会実装へと接続する段階で大きく目減りしている」――。
1位はイーライリリー 売上伸長を背景にM&Aを活発化
25年度研究開発費

1位はイーライリリー 売上伸長を背景にM&Aを活発化

2026/07/01
25年度の研究開発費ランキングのトップは、イーライリリーで、前年比14%増の2兆4161億円を投じた。GIP/GLP-1作動薬・マンジャロやゼップバウンドの売上好調を背景にSiteOne(疼痛)、Verve(心血管リスク)、Adverum(加齢黄斑変性)を買収。
【MixOnline】関連(推奨)記事
【MixOnline】関連(推奨)記事
ボタン追加
【MixOnline】記事ログ
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー