トランプ大統領 MFN政策導入で処方薬価格は3.9%下落 今後10年間の上市新薬で5290億ドル削減へ
公開日時 2026/08/20 04:53

米・トランプ大統領は8月17日(現地時間)、医療用医薬品に対する最恵国待遇(MFN)価格の導入で、処方薬価格は3.9%下落し、過去60年超で最大の年間下落幅を記録したと発表した。さらにMFN政策の枠組み全体から数千億ドル規模の長期的な節約効果が見込まれると強調。MFN政策に伴う財政影響の試算を公開し、今後10年間で上市される新薬(Prospective MFN)については、MFN政策と通商外交の組み合わせにより、米国のネット価格が30%低下(収束)すると仮定した場合、総額5290億ドルの節約効果が見込まれるとした。
米国の最恵国待遇(MFN)価格政策をめぐっては、すでにグローバルメガファーマ17社(ブランド医薬品市場の約86%)がトランプ大統領と直接交渉に臨み、処方薬価格の引下げに合意している。同日の発表でトランプ大統領は、「処方薬の価格は3.9%下落しており、2026年に入ってから毎月下落を続けている。一般用医薬品の価格は同時期に2.4%下落した」と明かした。さらに、医療機器や消耗品を含む医療関連商品の価格も過去1年間で2.7%下落したほか、退役軍人省は今年度だけで100億ドル以上の医薬品費削減を実現したと指摘し、「米国が何十年にもわたって安価な海外医薬品を補助してきた状況に終止符を打ち、国内の患者にとって公正な価格設定を実現した」と強調した。
このほか「Trump Rx」(直販サイト)プラットフォームについても、「すでに数百万人の米国患者に7億ドルの節約をもたらしている」と述べ、「過去に月額1000ドル以上も支払っていたGLP-1受容体作動薬が現在は149ドルから購入できる。不妊治療薬、インスリン、コレステロール治療薬など数十種類の高額医薬品も50~90%以上の値下げを実現した」と成果を強調した。
◎既存薬(メディケイドMFN)については今後10年間で643億ドルの節約効果
米政府はこの日の発表にあわせて、最恵国待遇(MFN)医薬品価格設定政策による削減効果を示し、今後10年間で5290億ドルの節約効果があるとの試算を公表した。同試算は、今後米国で発売されるすべての新薬の価格を、参照国の価格と同等に設定。民間保険を含む全市場に適用したもの。なお、参照国の価格は、日本を含むG7諸国とデンマーク、スイスの「ネット価格」のうち、最も低い価格(最安値)ではなく、「2番目に低い価格」を連動ターゲットとする。
一方で既存薬(メディケイドMFN)については今後10年間で643億ドルの節約効果があると試算。利用が一定と仮定した場合、年180億ドルの支出削減になるが、薬価が下がることで利用者が増えるため、その利用増(リバウンド効果)によって36億ドル(20%)分が相殺されると指摘。結果として年間14.4億ドルの純削減となり、平均連邦医療補助割合(FMAP)に基づき、57%(82億ドル)が連邦政府、43%(62億ドル)が州政府の節約になるとした。なお、特許切れに伴いこのスキーム自体の節約額は年々減るが、新薬枠(Prospective MFN)に移行するため、10年間の削減額は総額で643億ドルとなる。
◎日本を含む価格転嫁(通商政策との連動)に言及
このほか、日本を含む価格転嫁(通商政策との連動)にも触れている。米国が、「もう他国の薬価を補助するような高値は支払わない」とMFNで宣言することで、製薬企業は他国の政府(価格統制が厳しい国々)との交渉において、「米国並みに価格を上げなければ新薬を供給できない」という交渉のレバレッジ(テコ)を持てるようになるというものだ。すでに日本国内における骨太方針や薬価制度をめぐる議論において欧米系製薬団体を中心に、こうした動きを活発化させており、官民ともにその動向を注視しているところだ。
◎26年4月の米英協定を例示 このモデルを他の欧州や先進国にも拡大
米政権は、一つの成功事例として26年4月の米英協定を例示している。4月に締結された米英間の医薬品価格協定では、英国政府が製薬会社から徴収するクローバック率を引き下げ、新薬の経済評価における費用対効果の閾値を引き上げることに合意した。これにより、製薬会社が英国市場から得られる実質的な収益(ネット支出)が増加したというものだ。
トランプ政権はこのモデルを他の欧州や先進国にも拡大し、「米国内での減収分を、他国にフェアシェア(正当な負担)を支払わせることで補填する計画」の実行を視野に入れていることが示されている。
その一方で米FDAによる開発コスト削減策にも言及。製薬企業の開発原価そのものを下げるために、FDAが主導してAIを活用した審査の効率化や治験の推論を早めるベイズ統計学(Bayesian methodology)の導入、さらには特定の遺伝子疾患に対する個別化医療(Individualized therapies)の迅速承認枠組みを同時に展開することなども進める方針だ。