厚労省は８月19日、10月１日に実施予定の消費税率引き上げに伴う薬価基準改定を官報告示した。市場実勢価格相当部分に消費税率引き上げ分（８％→10％）を上乗せして、10月以降の新薬価とする。厚労省の担当官によると、改定品目全体の37％に相当する約6100品目が、現行薬価と比べて薬価が上がる。残りの６割強の品目の多くは消費税率引き上げ分を上乗せしても10月以降の薬価は下がる見込みだ。このほか、18年４月改定以降に後発品が参入した腎性貧血用薬ネスプなどのこれまでの新薬創出等加算品や、19年10月時点で収載後15年を超える新薬創出等加算品は今回、新薬創出等加算の対象から外れた。

薬価基準の告示数は１万6510品目で、内訳は内用薬１万201品目、注射薬3874品目、外用薬2407品目、歯科用薬剤28品目――となる。単純に現行薬価から薬価が上がるのは6121品目だとしている。

多くの新薬創出等加算品や基礎的医薬品のほか、薬価と市場実勢価との乖離が小さい品目、後発医薬品で価格帯変更があった品目も現行薬価を上回る。消費税率引き上げ分を上乗せすることで、薬価は最大で1.85％上がる（108分の110を乗じた額）。ただ、例外的に、基礎的医薬品や後発品の価格集約・価格帯変更があった品目では、ベースとなる市場実勢価相当部分が上がるため、結果として現行薬価よりも新薬価が1.85％超上がる場合がある。

また、新薬創出等加算品であっても、市場実勢価や企業要件次第で現行薬価よりも新薬価が下がる場合があり、品目ごとに精査する必要がある。

日本医薬品卸売業連合会はこれまでに、新薬創出等加算品や基礎的医薬品など薬価が上がる品目の仮需（駆け込み需要）と、長期収載品など薬価が引き下がる品目についての買い控えで、医薬品流通が混乱して安定供給に支障が出かねないとの懸念を一貫して示してきた。告示日をできるだけ遅くしてもらいたいと要望していた。通常改定では、告示日は薬価改定の１か月前が通例で、結果として２週間以上早い告示となった。厚労省は、「卸業からの懸念はあったが、一方で医療機関側の準備もあり、それらの兼ね合いで折り合った」と説明した。

■新創品　18年４月改定より25成分増

19年10月の薬価改定率は、医療費ベースで▲0.51％（薬剤費ベースで▲2.40％）。このうち、実勢価改定等分は医療費ベースで▲0.93％（薬剤費ベースで▲4.35％）、消費税対応分は医療費ベースで＋0.42％（薬剤費ベースで＋1.95％）――となる。消費税対応分は前述の通り、単価でみれば最大＋1.85％となるが、単価×数量で算出した薬剤費ベースでは＋1.95％になるという。

19年10月改定での新薬創出等加算品は339成分、591品目となる。18年４月改定以降に後発品が参入した腎性貧血用薬ネスプなどのこれまでの新薬創出等加算品や、19年10月時点で収載後15年を超える新薬創出等加算品は今回、同加算から外れた。一方で、18年４月改定以降に新薬創出等加算が適用された新薬は含まれる。結果、18年４月改定で新薬創出等加算品は314成分560品目だったが、19年10月改定では25成分31品目増えた。

■ノバルティスで最多25成分53品目に適用

企業別に新薬創出等加算品の適用成分数をみると、ノバルティスファーマの25成分53品目で最多だった。２位タイがファイザー（21成分40品目）とサノフィ（21成分23品目）、４位はヤンセンファーマ（20成分31品目）、５位はMSD（14成分25品目）――で、外資系企業が上位を独占した。

６位が中外製薬（11成分、24品目）で、ようやく７位タイにグラクソ・スミスクライン（９成分21品目）、アストラゼネカ（９成分17品目）とともに、武田薬品（９成分16品目）とノーベルファーマ（９成分10品目）の内資系企業が入った。

新薬創出等加算品の薬価維持の水準は、国内での開発実績などをポイント化した企業要件で決まる。新薬創出等加算品を持つ企業は83社。その企業区分は、区分１が23社、区分２が55社、区分３が５社――となった。

基礎的医薬品は261成分715品目あり、区分は▽不採算（122成分438品目）▽病原生物（80成分196品目）▽麻薬（９成分23品目）▽生薬（46成分53品目）▽軟膏基剤（３成分３品目）▽歯科用局所麻酔剤（１成分２品目）――となる。

なお、厚労省はこの日、18年９月薬価調査の詳細を公表し、妥結率（薬価ベース）は91.7％だったことを明らかにした。 

【おことわり】

武田薬品が保有する新薬創出等加算が適用された品目数は、１月に買収手続きが完了したシャイアー・ジャパン（４成分９品目）を加えると、計13成分25品目になります。