中医協 類似薬効比較方式Ⅱは収載時の薬価引下げへ 「公的保険は企業の投資回収の制度でない」
公開日時 2025/11/20 05:30
中医協薬価専門部会は11月19日、類似薬効比較方式Ⅱについて議論し、診療・支払各側からより収載時の薬価を引下げる方針について賛同する意見があがった。製薬業界からは、類似薬効比較方式Ⅱの品目でも開発への投資がなされているとの意見もあがっていたが、「公的医療保険制度は、企業が投資した資本を回収するための制度ではない」とバッサリ。“メリハリ”の付いた薬価制度を構築する必要性を指摘する声があがった。このほか、外国平均価価格調整や市場性加算も論点にあがった。
◎PPI・タケキャブ 新規性乏しくも収載時に後発品上回る薬価、患者数多くブロックバスターに
類似薬効比較方式Ⅱをめぐっては財務省の財政制度等審議会が問題視し、中医協でも2026年度薬価制度改革の論点に浮上していた。類似薬効比較方式Ⅱは、補正加算の対象外で薬理作用類似薬が3つ以上存在する新薬に用いる。18年度改定以降、23成分が算定されている。なお、類似薬効比較方式で算定されたのは275成分(全体の約65%)。
事務局は、PPIを例に、後発品上市後であるにもかかわらず、ネキシウムとタケキャブが“新規性の乏しい”とされながらも新薬として収載され、後発品を大きく上回る薬価が算定された。さらに、タケキャブは売上金額が1200億円とブロックバスターに成長。薬価自体は必ずしも高額ではないものの、患者数が多いため大型品に成長売る製品もある実例として示した。一方で、業界の意見陳述では、類似薬効比較方式Ⅱで算定された医薬品であっても、開発に対する投資が伴うとの意見があがっていた。「類似薬効比較方式Ⅱにより算定される新薬の算定額をより低くする」ことを提案した。
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「類似薬類比較方式Ⅱにより算定されたものであっても、企業として開発にあたり投資を行っていることは事実だが、公的医療保険制度は、企業が投資した資本を回収するための制度ではなく、国民、患者の生命と健康を守るための制度だ」と指摘。「限られた財源の中で運用していることを踏まえれば、新薬の特徴に応じて評価にメリハリをつける現行の取扱いは、やはり合理性があるものだと考える」と述べた。
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も、「承認するか、承認しないかは事前の確認ではなく、試験の結果に基づき判断するものだ」と指摘。18年以降に類似薬効比較方式Ⅱで算定された品目のうち、2品目は上市後に新たな有用性が明らかになり、改定時加算を受け、新薬創出等加算の対象となっていることを踏まえ、「改定時加算等で改めて評価をすべだが、これまでの類似薬効比較方式Ⅱで算定されるものに関しては、やはりメリハリをつけた考え方というのが必要ではないか」と述べ、収載時の薬価引下げには賛成した。
◎支払側・松本委員 新規性乏しい新薬に保険給付は「疑問」
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「新規性に乏しい新薬を保険給付する必要性には、疑問を感じている」と指摘。「今回の薬価制度改革で、薬価収載の可否まで踏み込むことは、企業に大きな影響があることは十分理解しているが、少なくとも課題はあるものと認識している」と述べた。
タケキャブについても言及。健保連のレセプト分析でもタケキャブの数量が多かったといい、「なぜこれほど使用されているのか個人的にも疑問を感じた。この理由がわかれば事務局に教えてほしいが、以前に業界ヒアリングの場で、“薬剤の選択については医師の判断なので、製薬企業からは特に強い答えはない”という趣旨のご発言もあった」とチクリ。「医薬品の適正使用は国民皆保険制度の持続可能性を確保する観点からも非常に重要であり、PPIに限らず、フォーミュラリの活用等により、医療現場でカットオフ値を引上げる取り組みも推進すべき」と強調した。
◎外国平均価格調整 ドイツは価格交渉後の価格を参照へ 自由価格から平均30%引下げ
このほか、外国平均価格調整について、対象とするドイツの価格について、公的医療保険中央連合会との価格交渉後の価格を参照することとすることも提案され、診療・支払各側から賛同する声があがった。
外国平均価格調整には、米(メディケア・メディケイド)、英、独、仏の価格の平均額を用いている。ドイツでは、新薬の販売価格を6か月間、製薬企業の自由に設定できるが、それ以降は公的医療保険中央連合会との価格交渉で合意された価格が償還価格として適用される。なお、2019年1月から24年12月までに、ドイツで医療技術評価を受けたものについて、自由価格からの価格調整率は平均で約30%だった。なお、ドイツの価格が掲載されているRote Listeは随時更新されないことから、価格の把握については、更なる検討が必要であることも言及した。
診療側の江澤委員(日本医師会常任理事)は、「外国価格を適正に反映するという意味で、賛同できるものであり、企業にもご協力いただきながら、公的評価が行われた後の価格を把握してはどうか」と賛成。支払側の松本委員も、「ドイツの参照価格を価格交渉後の価格にすることに賛同する。速やかに価格を把握するための工夫をぜひお願いしたい」と述べた。
◎市場性加算Ⅰ 加算率の下限を5%に 薬事規制の変更を受け
市場性加算Ⅰについても論点にあげた。薬機法改正に伴う薬事規制の見直しにより、希少疾病用医薬品(オーファン)指定を受ける品目が増え、市場性加算Ⅰを取得する品目が増加することが予想される。現行の加算率「10~20%」だが、事務局は「原則、現⾏の加算率の範囲を維持しつつ、希少疾病用医薬品の指定基準への該当性の内容に応じて加算率の下限を5%とすることができることとし、症例数等による治験の実施の困難さ等を踏まえて加算率を柔軟に判断すること」を提案した。これに対し、診療側の江澤委員は、「示された方向に異論はない」と述べた。