ジェネリックメーカー世界第３位のActavis Inc（旧Watson Pharmaceuticals Inc、本社：米ニュージャージー州パーシッパニー、Paul Bisaro社長兼最高経営責任者）は20日、米ナスダック上場のスペシャリティ製薬企業・Warner Chilcott plc（本社：アイルランド・ダブリン、Roger M. Boissonneault社長兼最高経営責任者）を株式交換方式により約85億ドルで買収すると発表した。両社は既に１週間前に経営統合協議入りしたことを明らかにしていた。買収によりActavisは単純合算で年間総売上高約110億ドルとなり、ジェネリックを中核とする製薬企業としてはノバルティスのグループ会社・サンドを追い抜き、テバに次ぐ世界第２位に躍り出る。同時に企業規模としては日本のアステラス製薬や第一三共を凌ぐ規模となる。また、女性健康関連、消化器病、泌尿器、皮膚科の領域での年間売上高約30億ドルを有するアメリカ第３位のスペシャリティ製薬企業ともなる。

買収は現在Warner Chilcottが本拠地を置くアイルランドの首都ダブリンに新会社を設立し、そこに両社を統合する。新会社の社名はActavisかあるいは別の名前になる予定で、経営陣は現Actavisが率いることになるため、実質的にはActavisによるWarner Chilcottの吸収合併となる。

合併ではActavis株主は同社1株当たり、新会社の株式1株が割り当てられ、Warner Chilcottの株主はWarner Chilcott株式1株当たり新会社株式0.16株が割り当てられる。５月17日のActavis株式終値を基準にした場合、Warner Chilcott株主が取得価値は1株当たり20.08ドル。５月９日のWarner Chilcott株価終値1株15.01ドルに34％のプレミアを上乗せした形になる。最終的に新会社でのWarner Chilcott全株主の持分は23％となる見込みだ。統合は関係当局の承認を得た上で2013年末までに完了したい意向で、新会社の株式はニューヨーク証券取引所に上場の見通し。

今回の買収でActavisは同社の重点領域でもある女性健康関連領域を強化することになり、さらには新たに消化器病領域や皮膚科領域にも強みを発揮し、スペシャリティ領域の開発パイプラインは合計25品目に拡大する。また買収後の税引後利益に対する業務上のシナジーやコスト・税金の削減効果は４億ドル以上と見込んでいる。

一方、今回の買収はメガファーマ各社も参戦する形でのジェネリック企業を巡る合従連合激化の契機になるとの指摘もある。現在、メガファーマ各社は成長著しい新興国市場への進出に狙いを定め、各国のジェネリック企業の買収や提携を盛んに繰り広げており、同市場でのジェネリック企業のマージンは低下しつつある。また、今後はバイオシミラー事業の拡大をにらみ、ジェネリック各社やメガファーマ各社にとっては注射薬製造能力を有するジェネリック会社は格好のターゲットとなる。こうした中で資本力のあるメガファーマに対抗するためにジェネリック企業側もジェネリック企業同士での統合や会社全体のマージンの底上げにつながる中堅スペシャリティ製薬企業の買収を仕掛ける機会は増大してくるとみられる。

実際、Actavisによる今回のWarner Chilcottとの経営統合協議開始の発表直後、ロイターとブルームバーグはActavisがこの直前にMylan Inc（本社：米ペンシルバニア州・カノンズバーグ、Heather Bresch最高経営責任者）から1株当たり120ドル、総額150億ドル超の買収提案を受けながらこれを拒否したと伝えていた。また、Actavisに関しては４月末にウォール・ストリート・ジャナールがカナダ最大の製薬企業であるValent Pharmaceuticals International Inc（本社：ケベック州ラバル、J. Michael Pearson最高経営責任者）が130億ドルでの買収を提案していたとも報じられている。