厚労省は12月26日、新薬14製品31品目を承認した。このうち8成分が、患者数が少ない難病などの治療薬だった。そのほか、7製品目となる2型糖尿病薬のSGLT2阻害薬、ダニアレルギーの減感作療法薬、重症乾癬症治療薬などが承認となった。通常どおりに進めば2月~3月にかけて薬価収載となる(既収載品除く)。
承認された医薬品は次のとおり(カッコ内は一般名と申請企業名)
▽リクスビス静注用250、同500、同1000、同2000、同3000(ノナコグガンマ遺伝子組換え バクスター):「血液凝固第9因子欠乏患者における出血抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
血液凝固第9因子が不足する血友病B患者用の薬剤で、定期的な投与も用法・用量で認められている。遺伝子組換え製剤は血液由来製剤より感染症リスクが低いとされるが、日本には血友病B用の製剤はこれまでに2製品あり、治療選択肢の1つとなる。日本の患者数は約1000人。
▽オーファディンカプセル2mg、同5mg、同10mg(ニチシノン、アステラス製薬):「高チロシン血症Ⅰ型」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
高チロシン血症Ⅰ型はチロシン分解経路の最終段階にある酵素が欠損する遺伝性疾患。重度肝機能障害や凝固障害などが発現する。食事療法が行われていたが、疾患の進行を防ぐことが難しく、予後不良だった。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で医療上の必要性が高いと判断され、開発企業が公募された。国内で確認されている患者数は7月時点で1例。
▽ノピコールカプセル2.5μg(ナルフラフィン塩酸塩、東レ・メディカル):「慢性肝疾患患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間4年。
選択的κオピオイド受容体作動薬。既存の抗ヒスタミン薬などと異なる作用機序でそう痒を改善する。肝疾患患者のうち、既存薬で効果を示さない難治性そう痒症患者は推定1.5~1.6万人とされる。有効成分が同一の「レミッチカプセル」(製造販売元:東レ)が2009年に血液透析患者におけるそう痒症の適応で承認されている。
▽メチレンブルー静注50mg「第一三共」(メチルチオニニウム塩化物水和物、 第一三共):「中毒性メトヘモグロビン血症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
メトヘモグロビン血症は、体内の酸素を運ぶ赤血球のヘモグロビンが運搬できないメトヘモグロビンに大量に変換されることで、臓器が低酸素状態に陥り、死に至ることもある。適応症は医薬品や農薬などによる中毒性のケース。同血症にメチルチオニニウム塩化物水和物が使用されたケースは約10年で33例という。国内では院内製剤で使用されていたが、日本中毒情報センターが開発を要望し、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適用外薬検討会議」でも開発の必要性を認め、同省が開発企業を公募。第一三共が開発に応じた。
▽ビミジム点滴静注液5mg(エロスルファーゼアルファ遺伝子組換え、BioMarin Pharmaceutical):「ムコ多糖症IV A型」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
適応疾患は、骨形成に関与するムコ多糖を分解する酵素の活性が低下していることにより、正常な骨格の形成が妨げられ、呼吸不全などを引き起こす遺伝疾患。08年に行われた調査では21例が確定診断されているが、治療薬はなかった。
▽イロクテイト静注用250、同500、同750、同1000、同1500、同2000、同3000(エフラロクトコグ アルファ遺伝子組換え、バイオジェン・アイデック・ジャパン):「血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
長時間作用の血友病A患者用薬剤。遺伝子組換えBドメイン除去型血液凝固第VIII製剤とヒト免疫グロブリンGのFc領域の融合蛋白質で、消失半減期が延長した初の長時間作用型血液凝固第VIII因子製剤となる。定期的に投与する場合、週2回投与から開始し、患者の状態に応じて3~5日間の範囲で適宜調節し、週1回投与が可能な場合もある。国内患者数は約5000人。
▽ロゼックスゲル0.75%(メトロニダゾール、ガルデルマ):「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌、臭気の軽減」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間6年。
がん性悪臭の軽減と嫌気性菌の消失に関連があるとの報告があり、メトロニダゾールの外用剤による処置が推奨されていた。国内では経口剤の調製外用剤が使用されるなどこの効能・効果を有する医薬品がなかったことから、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で医療上の必要性が高いと評価され、同社が開発を要請されていた。国内推定患者数は約2000人とされる。
▽ゼルボラフ錠240mg(ベムラフェニブ、中外製薬):「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
悪性黒色腫の約50%にBRAF遺伝子に特徴的な変異が認められ、この変異が細胞の異常増殖などを引き起こすとされる。ゼルボラフはBRAF遺伝子変異により生じる異常なセリン/スレオニンキナーゼを阻害し、腫瘍細胞の増殖を抑制する。この変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫の患者のうち、既治療の患者は約200人で、新規患者が年間100人程度とされる。
▽パリエット錠5mg、同10mg(ラベプラゾールナトリウム、エーザイ):「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制」の効能・効果を追加する新効能・新用量・剤型追加にかかわる医薬品。再審査期間4年。
既承認の用量よりも低用量で有用性が確認され、効能・効果の追加および5mg錠が新たに追加される(10mg錠は発売済)。この適応では、5mgを1日1回経口投与し、効果不十分の場合は10mgを1日1回経口投与する。同じプロトンポンプ阻害薬で、タケプロンやネキシウムもこの適応を取得している。
▽ジャディアンス錠25mg、同錠10mg(日本ベーリンガーインゲルハイム、エンパグリフロジン):「2型糖尿病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
尿中から腎臓へのグルコースの再吸収を担うSGLT2を選択的に阻害し、尿中グルコース排泄促進作用を介して血糖値を下げる。SGLT-2阻害薬で6成分7製品目となる。10mg錠を1日1回経口投与し、効果不十分な場合は25mg1日1回に増量できる。日本イーライリリーと共同販促する。
▽タケキャブ錠10mg、同錠20mg(ボノプラザンフマル酸塩、武田薬品):「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、低用量アスピリン投与時・非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少性紫斑病・早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃・ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
既存のプロトンポンプ阻害薬(PPI)と異なる阻害様式の酸分泌抑制作用を有する。胃粘膜壁細胞のプロトンポンプを可逆的かつカリウムイオン競合的に阻害して酸分泌抑制作用を持続的に発揮する。既存のPPIとほぼ同様の適応での治療選択肢の1つと位置付けられる。大塚製薬と共同販促する。
▽ベピオゲル2.5%(過酸化ベンゾイル、マルホ):「尋常性ざ瘡」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
いわゆる「にきび」に対する外用薬。洗顔後に1日1回、適量を患部に塗ることで、原因のアクネ菌などに対し抗菌または殺菌作用を示す。
▽治療用ダニアレルゲンエキス皮下注「トリイ」100,000JAU/mL、同10,000JAU/mL(鳥居薬品):「ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎、気管支喘息(減感作療法)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
室内塵ダニアレルギーの主要なアレルゲンとされるコナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニの2種のエキスを含有する。ダニによるアレルギー性鼻炎や喘息に対する減感作療法薬で承認されたものがなく、ダニエキスを成分とする減感作療法薬の開発が望まれていた。アレルギー性鼻炎のためアレルゲンテストを受けた患者における既存の室内塵ダニ陽性率は成人で29.3%、小児で47.1%との報告がある。
▽コセンティクス皮下注150mgシリンジ、同皮下注用150mg(セクキヌマブ遺伝子組換え、ノバルティス ファーマ):「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
インターロイキン-17Aを阻害する新規作用機序の薬剤。インフリキシマブやアダリムマブ、ウステキヌマブと同様に、既存治療に効果不十分な中等症または重症乾癬患者への治療選択肢となる。国内の乾癬患者数は推定43万人で、有病割合は0.3%と報告されている。マルホと共同販促する。
<訂正>(1月5日22時25分)
リクスビスの説明において、遺伝子組換え製剤の中で「血友病B用の製剤は1製剤」との記述は、正しくは2製剤です。下線部を訂正しました。