中医協 毎年薬価改定 診療・支払各側、業界専門委員いずれも反対 消費税増税改定と切り離した議論を
公開日時 2015/06/11 03:50
中医協薬価専門部会は6月10日、政府の経済財政諮問会議で議論の俎上にあがっている毎年薬価改定について議論し、診療側、支払い側、業界専門委員のいずれも反対の姿勢を示した。また、2017年度の消費税増税に伴い、16年度から3年連続の薬価改定が予定されることについては、今回の通常改定の改定頻度の問題とは切り離して議論すべきとの考えを示した。
◎白川委員「来年度の薬価調査の議論にとどめるべき」
診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、現場の混乱や価格の高止まりを憂慮。「きちんと精査して短絡的な年1回改定が良いということにつながらないように、中医協で重ねて議論していく必要がある」との見解を示した。
支払い側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長・専務理事)は、毎年薬価改定の実施による「薬価引き下げ効果はどれくらいあるのか」を検討すべきとの認識を示し、時間をかけてデータを精査した上で議論すべきと主張した。その上で、「2016年4月の改定作業の中では、来年度の薬価調査をどうすべきか、という議論にとどめて、それ以降はじっくり検討するということでよろしいのではないかと思っている」と述べた。一方、消費税増税改定については「その時点で正しい取引実態価格をベースに消費税を反映させなければならない」との考えを表明。消費税増税改定前年に当たる2016年度に「消費税引き上げを睨んだ薬価調査は絶対に必要だ」との見解を示した。
◎加茂谷専門委員「薬価改定の頻度だけ取り上げるのは妥当性を欠く」
加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬常務執行役員)は、毎年改定は製薬企業の競争力弱体化を招き、創薬や製薬企業発展への評価という視点を欠くと指摘。「改定頻度をあげることは容認できない」との認識を示した。
さらに財政審の建議では、次期薬価・診療報酬改定について、「薬価調査に基づく既存薬価のマイナス分は診療報酬本体の財源とはならない」と明記されているが、「診療報酬と合せて2年に1度改定するということを前提にルールが定まっている。薬価改定の頻度だけを取り上げるのは、妥当性を欠くのではないか」との認識も示した。
毎年薬価改定をめぐっては、昨年12月に開催された、医療機関、卸、製薬企業で構成される「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」でも賛成は見られず、新薬の創出意欲をそぐ恐れがあることや、単品単価取引の後退、人的・システム変更などの経済負担の増大などが懸念された。また、過去に1984年度から3年連続薬価改定が実施された歴史的経緯もあるが、薬価調査が実施されないなど課題があり、1987年の中医協建議でも「市場における価格の安定にある程度の期間を要するので、市場価格の形成をまっておおむね2年に1回程度の全面改定になることはやむをえない」としている。