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健保連・幸野氏 調剤権を処方権と同等に 分割調剤・リフィル制度、後発医薬品の処方権が焦点

公開日時 2016/10/12 03:52

健康保険組合連合会の幸野庄司理事(中医協支払側委員)は10月10日、愛知県名古屋市で開催された第49回日本薬剤師会学術大会で講演し、次期診療報酬改定では、「調剤権を医師の処方権と同等に近づける」との考えを提案した。具体的には、分割調剤、リフィル制度、後発医薬品への変更を薬剤師が判断する―などを盛り込む。2016年度診療報酬改定では、かかりつけ薬剤師が新設されたが、幸野理事は「かかりつけ薬局・薬剤師が普及していく状態でなければ説得力がなくなる」と説明。地域包括ケアシステムの中で、薬剤師がかかりつけ機能を発揮し、国民の求心力を高めることが、薬剤師の職能を取り戻す必須条件との見方を示した。

この日のシンポジウムは、中医協の各側委員や前薬剤管理官が出席するなど、さながらミニ中医協の様相を呈した。

◎調剤権の拡大・強化とセルフメディケーションの推進が次期改定の重点課題

健保連の幸野理事は、次期診療報酬改定の重点課題として、調剤権の拡大・強化とセルフメディケーションの推進をあげた。調剤権の拡大・強化として具体的には、▽分割調剤とリフィル制度を導入する、▽残薬・減薬に対する医療機関へ指示する、▽処方せんの後発医薬品変更不可欄を削除し、後発医薬品への変更は薬剤師の調剤権により判断する―をあげた。特に、残薬・減薬への対応で主導的な役割を求め、「残薬を確認した場合の分割調剤は薬剤師の判断で実施すべきだ」などと述べた。


幸野理事は、調剤偏重と指摘される現状を「国の施策として行ってきた医薬分業が歪んだ方向で進んでいった」と指摘。その一つの要因として、処方権と調剤権の格差をあげ、真の医薬分業を進めるためには、処方権と調剤権が同等であることが大前提との見方を示した。

調剤権は、調剤に加え、後発医薬品をはじめとした医薬品の選択や、残薬や減薬など薬学管理を主体的に担うことと定義。一方で、処方権は一般名で処方を行い、減薬や残薬へ協力することとし、医師と薬剤師が連携することが必要との考えを示した。幸野理事は、薬剤師は薬の専門家として、「もし間違ったこと、残薬の傾向があるときには自信をもって医師に申し上げる立場になってほしい」と強調した。


また、地域包括ケアシステムの中で、リーダー的な役割を果たすことへの期待感も示した。薬局が地域住民にとって気軽に相談できる場であることの重要性を強調。医薬分業の進展に伴い、調剤偏重となってしまった現状を「患者のニーズは変わっていないのに薬局が変わってしまった」と述べ、原点回帰を求めた。

風邪や腰痛などの軽い症状であっても医療機関にかかる患者が大半であることが医療費の伸びを押し上げているとの見方も提示。薬剤師がOTCの活用などによる医薬品使用の適正化で役割を発揮することで、「病院に行く前に薬局へ行くという方向転換ができるように国民の意識を変えていく」ことが必要だと訴えた。

一方で、「支払側としてこうした提案をしていくためには、かかりつけ薬局・薬剤師が増えていく、普及していく状態でなければ説得力がなくなる」と指摘。かかりつけ薬局・薬剤師の普及を通じ、国民の信頼・求心力を高めることが、薬剤師の職能拡大、地位向上につながるとの見方を示した。


これに対し、国立がん研究センター研究支援センター 研究管理部 の中井清人部長(前・厚生労働省保険局医療課薬剤管理官)は、「かかりつけ薬局・薬剤師の普及は、数的なものではなく、患者の認知、理解だと信じている」と述べる一幕もあった。


◎中井氏 次期改定に向け現場からのエビデンス発信求める かかりつけ薬剤師推進で


国立がん研究センターの中井部長(前・薬剤管理官)は、「かかりつけ薬剤師になるために、在宅医療、OTC、健康相談、かかりつけ医と連携した服薬管理などトータルで薬局の存在価値をアピールすべきではないか」との考えを示した。

中井部長は、議論となっている敷地内薬局を引き合いに、「敷地内薬局を門前薬局がおかしいというのは五十歩百歩ではないか」と述べるなど、立地と調剤に依存した薬局経営からの脱却を強く訴えた。その上で、地域包括ケアシステムの中での薬局・薬剤師の役割として、▽セルフメディケーションの推進(OTCや健康食品など)、▽かかりつけ医とかかりつけ薬剤師の服薬管理(薬学管理)の確立――をあげた。「薬局薬剤師の役割は地域包括ケアの中で必ずある。いかに戻すかということかもしれないが、医師と一緒になった服薬管理をどう考えていくか」と強調した。

その上で、次期診療報酬改定に向けて16年度改定の検証が必要であることから、少なくとも1年後までにはエビデンスを明確に示すことの必要性を強調。かかりつけ薬局・薬剤師と医師との連携により投薬数や薬剤数が減少するなどのデータを、学会や論文を通じて臨床現場から発信することを求めた。

16年度改定の検証、そしてエビデンスの構築について中井部長から問われた日本薬剤師会の安部好弘常務理事(中医協・診療側委員)は、「もちろん日本薬剤師会としては様々な調査をする。地域で実際にやっている好事例を調剤報酬に取り入れた事例はある。地域で行われていない取り組みを入れるのは無理だ。学会発表、論文発表という話があったが、把握して診療報酬の議論につなげていきたい」と述べた。
 

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