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AZ 社員3人が労働審判申し立て、MRから“追い出し部屋”に配転 集団訴訟も

公開日時 2017/05/12 03:52

アストラゼネカ(AZ)の現役社員3人が5月11日、降格や減給の基準や内容を定めた就業規則が存在しないにもかかわらず、会社側から一方的に降格・減給されたとし、地位確認と減給分の差額支払いを求めて東京地裁に労働審判を申し立てたことを明らかにした。3人の社員は、MR職から極めて単純な資材管理・倉庫業務に配置転換されたことは無効だと主張。毎日30分~1時間程度のパンフレットの管理や消耗品確認などの仕事しか与えられず、いわゆる「追い出し部屋」に配置転換されたとして、会社側の措置は不当なリストラを目的としたものだと訴えている。AZの労働組合がこの日、厚生労働省内で会見した。

申立書によると、3人の社員はいずれもMR歴20年以上の元ベテランMR。営業成績も良好で、なかには全国1位の成績を複数回とった社員もいる。

しかし、会社側が2016年に、一方的かつ詳細な説明がないままに、MRの新職務等級制度「MRキャリアレベル」を導入。3人の社員は「納得のいく説明は全くなかった」(申立書)なかで降格となったと主張している。さらに成績下位者に適用される「PIP」(=業務改善計画)の対象となり、退職勧奨を受けたこともある。3人の社員は、それぞれ富山分室、堺分室、青森分室に異動となったうえ、MR職から内勤の資材管理担当などに配転となり、給料は約30%減額された。同様の処遇を受け、退社した社員がいることも明らかにされた。

■申立人の山梨氏 「会社をより良くしたい」

申立人の一人で記者会見に臨んだ元MRの山梨理氏は、青森分室でパンフレットの管理を任されたものの、発注業務にも携われなかった。机やパソコンは共有で、名刺もなかった。分室の社員全員出席の会議も知らされず、たまたま同僚から会議があることを聞いたが出席も許されず、著しい屈辱を味わった。記者から心境を問われると、「さみしい。医師と、患者さんにどのようにしたら良いかと話していたが、いまは会話する相手もいない」、「どうしてここに追いやられたのか。会社に対する憎しみはなく、愛社精神で、会社をより良くしたい」と心中を吐露した。

申し立て代理人の梅田和尊弁護士は会見で、「どのような場合に減給、降格するのかの基準や手続きがきちんと示されるのが最低限必要だが、この会社は内容を明らかにしていない。団体交渉でも全く明らかにされない」、「降格や減額は一番重要な労働条件の変更で、労働者の同意が必要なのが大原則なのに、本件は労働者の同意もとらず、一方的だ」と指摘した。

訴訟ではなく労働審判としたことについて梅田弁護士は、申し立てから平均2か月半と早期に結論が出るためとし、「仕事内容やおかれている状況が非常にひどい。早期に会社に撤回してもらい、裁判所に無効を認めさせ、元のMR職に戻してもらう必要がある」、「誰が見ても違法性が明らかで、早期に解決したい」と述べた。

■現役MR8人 6月までに提訴へ マタハラ訴えの女性MRも提訴検討中

現在60人が加入しているアストラゼネカユニオンやその上部団体の東京管理職ユニオンはこの日の会見で、現役MR8人が降格・減給の無効を求めて、6月までに東京地裁に集団訴訟を行う予定があると公表した。また、産休・育休明けに復帰したが、「休んでいる期間中の評価ができない」との理由で降格となった女性MRも、マタニティハラスメントに該当するとして提訴を検討していることも明らかにした。

いずれも評価根拠があいまいな「MRキャリアレベル」やPIPが原因と指摘している。MRキャリアレベルは、▽大学病院など全国レベルの重点施設を含むテリトリー(M4)▽地域の基幹病院が中心のテリトリー(M3)▽地域の病院、開業医を含むテリトリー(M2)▽開業医が多いテリトリー(M1)――の4つのテリトリーに、一定期間のパフォーマンス、リーダーシップ、スキル、知識の各評価軸でMRを振り分けるというもの。

ユニオン側は、抽象的でどのようにでも解釈できる評価法と指摘。さらに、給与レンジがM4にいくほど高いとしたうえで、「(MRキャリアレベルは)MRの努力で培ってきた実績を白紙化し、大病院を頂点として医療機関を階層化し、会社がそれまで重要視してきた開業医を根拠なく下位に置き、担当MRはレベルが低いとして賃金を低く設定したもの」と批判した。そして、「給与水準の高い中高年MRを開業医担当にして給与を効率的に下げている」と主張、問題のある制度と訴えた。

また、「MRの客観的実績を無視しているだけではなく、医療という人の命や健康にかかわる領域で医療者を差別する、他の製薬企業で類をみない酷いシステム」とも批判した。

■「PIPの達成ハードルは高い。無理な目標を設定」 東京管理職ユニオン副執行委員長・遠藤氏

ユニオン側によると、PIPは年間評価で下位10%が対象となるが、会社側がその評価根拠を開示しないという。課題がひとつでも未達だと退職勧奨や降格・減給につながる。

東京管理職ユニオン副執行委員長でAZの現役MRの遠藤維大氏は会見で、PIPの達成ハードルは高いと指摘した。例えば説明会の回数が物理的にも時間的にも無理な目標が設定されたり、医師に質問して治療方針や患者の状況などを確認する“効果的なWhy”を行った後、同行した上司から「効果的にWhyが言えなかった」と客観的評価もなく不合格になるケースもよくあると説明した。なかには心が折れて退社した人もいるという。 

東京管理職ユニオン執行委員長の鈴木剛氏は会見で、「(AZは)非常に卑劣な不法行為を繰り返している状態。労働審判を含めて裁判を連続的に行い、社会に実態を広く伝え、改善したいという思い」と述べた。

■AZ広報部 「当社としては規定や法律に準じた適切なもの」とコメント

AZ広報部は本誌取材に、「これまで団体交渉で話し合いを続けてきた。当社としては規定や法律に準じて適切に対応してきたものと考えている」とコメントした。

「MRキャリアレベル」については、「医療機関それぞれに重要な役割がある。医療関係者のニーズに応じられるMRを配属している」と強調し、「地域や施設規模で、キャリアレベルや給与が上がり下がりするわけではない。パフォーマンスなどに基づいて評価している」とユニオン側の解釈を否定した。

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