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協会けんぽ静岡支部 地域フォーミュラリ導入へ本格始動 保険者が基幹病院薬剤部に呼びかけ

公開日時 2019/01/21 03:53

協会けんぽ静岡支部は1月19日、日本医薬総合研究所主催のセミナーで、基幹病院薬剤部と地域フォーミュラリの導入に向け、検討に着手したことを明らかにした。3月までに県内184の基幹病院に対し、PPIなど生活習慣病4薬効群についてフォーミュラリ導入による施設ごとの医療費削減効果を示し、フォーミュラリ導入を提案する。さらに19年度には静岡県や二次医療圏など地域単位での連携に向けた働きかける考え。同日講演した協会けんぽ静岡支部の名波直治企画総務グループ長は、“エリア”単位でのデータ分析ができる保険者としての役割を強調。「県内全体のデータを分析し、病院とそこに紐づく薬局でシミュレーションを行い、課題を示すことで、地域フォーミュラリが動き出すきっかけを作っていきたい」と意欲をみせた。

◎地域フォーミュラリ導入で年間13億6000万円の薬剤費削減効果 PPIで効果高く


協会けんぽ静岡支部は18年度事業として、①脂質異常症治療薬・HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、②消化性潰瘍治療薬・プロトンポンプ阻害薬(PPI)、③降圧薬・レニンアンジオテンシン系薬(ACE阻害薬、ARB)、④骨粗鬆症治療薬・ビスホスホネート系薬―の4薬効群について、レセプトデータを解析した。2017年1~12月までの95万8630枚(実患者数:15万1171人)を対象とした。フォーミュラリ導入による薬剤費削減効果をシミュレーションすると、合計削減額は13億5692万円。後発品への変更による9億37万円に加え、後発品のない先発品を標準薬へ切り替えなどで4億5655万円の削減効果があるという。特にPPIは、後発品のないタケキャブやネキシウムの処方量も多く、フォーミュラリ導入の効果が大きいという(本誌既報、関連記事)。

◎普及のカギ握る薬薬連携 保険薬局から積極的なフィードバックを

協会けんぽ静岡支部ではPPIのシミュレーションの削減効果額(全体、入院、外来)、数量ベース、金額ベースの薬剤使用状況を把握できるリーフレットを作成。18年度中に県内184の基幹病院薬剤部にフォーミュラリ導入を呼びかける考えだ。病院薬剤部には、医師向けの説明や説得に活用してもらえるよう、臨床効果やガイドライン、安全性比較や副作用情報などをまとめた参考資料も提供する。さらに基幹病院に紐づく保険薬局にフォーミュラリの導入を提案し、処方箋受付時のチェック、切り替えを促す。最終的には病院薬剤部と地域の保険薬局を軸に地域での情報共有体制を広げることを視野に入れる。

名波氏は、データを示しながら、薬剤費を押し上げる課題は医療機関ごとに異なることを指摘した。最終的にどの製品がどの薬局で調剤されたかは、医療機関側も把握できない状況にある。そこで、協会けんぽ静岡支部は、“基幹病院とそれに紐づく保険薬局”を一つの単位としてデータを分析し、エリアごとに課題をあぶりだした。この日のセミナーでも、基幹病院については一般名処方の割合や後発品使用率、保険薬局については薬剤費やレセプト枚数、患者数、後発品割合を解析したデータを数パターン示した。

すでに薬剤部から積極的に医師へと処方の切り替えを促している医療機関では、「医師の理解に加え、薬剤部と病院トップとのコミュニケーションがとれており、病院長の理解も深い」と名波氏。門前薬局だけでなく、周辺の地域保険薬局からも採用品目の問い合わせが多いと説明した。そのうえで、「基幹病院での採用品目は地域と連携が進むほど共有される傾向がある。フォーミュラリを導入する上でも同じことが言えそうだ」と述べた。

一方で、ある医療機関では、門前薬局のなかに極端に後発品比率が低い薬局があったことを把握していなかった。「門前薬局と顔を合わせての会議はされていない状況だった」と連携不足を指摘したうえで、保険者として、「薬薬連携のきっかけとなるような働きかけもあわせて行っていきたい」と意気込んだ。一方で、「これまでは病院から調剤薬局に働きかけるケースが多かったが、薬局からも積極的に働きかけを行っていくことも必要ではないか」と指摘。「一方的に病院薬剤部から情報提供するではなく薬局から質問、提案がある地域こそ地域フォーミュラリが生きてくる」と述べた。特に地域フォーミュラリの運用に際して保険薬局の果たす役割の重要性を強調した。「リアルタイムに医師別の動向まで見て、医師や診療科の状況を理解できるのは調剤薬局ならでは」として、保険薬局から病院薬剤部、医師への積極的なフィードバックを求めた。

◎保険者が地域フォーミュラリにかかわる意義を強調


地域フォーミュラリの浸透が進むなかで、患者紹介などを通じて基幹病院から診療所、療養型医療施設へ波及することにも名波氏は期待感を示した。そのうえで、「基幹病院、病診連携のある診療所、保険薬局が一堂に集う場こそフォーミュラリの情報連携体制のあるべき姿。これこそが地域包括ケアそのものだ」と述べた。情報共有の場を司る事務局については、「公共性の高い組織の方が機能するのではないか」と述べ、保険者が積極的に役割を担う姿勢を示した。

また保険者として、「地域と病院の分析を定期的に行っていくことが重要だ」と表明。フォーミュラリ運用後の動向確認だけでなく、後発品上市のタイミングなどで効果検証する考えも示した。名波氏は、「支払者側として声をあげることは、患者ベネフィットを考え、保険制度全体の維持のために取り組んでいくために必要だと思っている」と強調した。

◎山形県・日本海ヘルスケアネット ARBやスタチンも地域フォーミュラリ拡大へ


同日のセミナーでは、酒田市病院機構(山形県酒田市)らで構成される地域医療連携推進法人・日本海ヘルスケアネットを軸として山形県北庄内地域で運用されるフォーミュラリについても報告された。同地区では地区薬剤師会と日本海ヘルスケアネットの共同事業としてフォーミュラリの策定に取り組み、18年11月からPPIと2型糖尿病治療薬・αグルコシダーゼ阻害薬(α-GI)について地域フォーミュラリの運用を開始している。今後は、ARBやスタチンを追加する考え。ビスホスホネート系薬やH2遮断薬、糖尿病治療薬・DPP-4阻害薬などへの拡大も検討する。

酒田市病院機構日本海総合病院の栗谷義樹理事長は、フォーミュラリ策定に際し、PPIとα-GIのほかARB、スタチンを検討したと説明した。4薬効群の薬剤費は、地区の32薬局・3病院のデータによると年間3~4億円程度。特にPPIでは後発品のないネキシウムとタケキャブの処方が4割に達しており、後発品への置き換えで年間6400万円の薬剤費削減効果が期待できるとの試算を紹介した。

栗谷理事長は酒田市医師会の会員にフォーミュラリについて尋ねた調査結果も紹介。回答のあった20医療機関のうち、「関心がある」との回答は9医療機関だったと説明した。栗谷理事長は、「処方箋枚数が多い診療所ほど関心が高い」との見方を示した。

◎栗谷理事長 かかりつけ薬剤師の意義にも言及 地域薬剤師会が主導


医薬分業についても言及。門前偏重とも言われ、かかりつけ薬局の役割を果たしていないとの指摘もある。調剤医療費の伸びも踏まえ、「医薬分業の非効率な面だけ目立っているように思う」と述べた。そのうえで、同地区でのフォーミュラリ運用で、地域薬剤師会が主導的な立場を果たしたことを強調。19年通常国会に改正医薬品医療機器等法(薬機法)が提出されることにも触れ、「地域の対応としては時機を得たものではないか」とした。「フォーミュラリは、生活習慣病に対しては医療費効率化に大きな効果。地域に根付かせて地域の未来のために貢献していきたいと考えている」と述べた。

講演では、総務省の実証事業で調剤情報をクラウドで共有する仕組みを構築していることも紹介した。北庄内地域の59薬局中42薬局が参加している。調剤情報を共有化することで、重複や禁忌、相互作用をタイムリーに把握し、ポリファーマシーの解消なども期待されるが、地域フォーミュラリ導入時の実績調査にも活用されている。今後は国保連や後期高齢者連合、協会けんぽなど保険者とも連携を深め、包括的な評価を行う考え。

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