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【FOCUS 販売情報提供活動GLその後 MR、MSLの業務分担で覇権争い?】

公開日時 2019/06/07 03:52
厚労省の販売情報提供活動ガイドライン(GL)が施行して2か月を経過する。製薬各社とも社内ガバナンスの効く体制整備を進めているが、ここにきてMRとMSLとの業務分担や線引きで業界内から戸惑いの声を聞く機会が増えてきた。焦点となっているのは未承認薬・適応外薬に関する情報を誰が取り扱うか。GLでは、医療者等から求めがあった場合に限り、あらかじめ規定した「8要件」を全て満たすことを条件に情報提供することを認めている。問題は、この情報提供をMRが担うべきか、MSLに全面委託するかで業界内の意見を二分している。

2月20日付で厚労省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課が公表した「GLに関するQ&A」では、「未承認薬・適応外薬に関する情報提供をMRが行うことを否定しない」との見解が示されている。ただ、この前提条件としてMRは通常の販売情報提供活動と切り分けて行うことを規定した。すなわち、MRが医師から未承認・適応外に関する質問を受けた場合、一旦訪問活動を打ち切った上で、その内容を業務記録に残し、本社(販売情報提供活動監督部門)の判断を仰ぐ。本社は、情報提供の可否を判断した上で、妥当な場合は、当該MRが改めて医師へのアポイントを取り直す。その際、MRは医師との面談目的が「未承認薬・適応外薬」に関する情報提供であり、通常の販売情報提供活動でない旨を伝え、理解を頂いた上で医師との面談に臨む。

手続上は、従来のMR活動に比べてかなり煩雑になるが、担当MRからすると、情報提供の目的は異なれども、担当医師とのコミュニケーションを継続できる。ここで問題になっているのは、次の2つの事案だ。①MRが医療者から未承認薬・適応外薬に関する情報提供の依頼を受けた段階で、その後の対応はメディカル部に全面委託し、医師への対応は全てMSLが対応する、②未承認薬・適応外薬については、情報収集・提供を含めて最初から本社のメディカル部が担当し、MSLが医師等を訪問する-。

◎MA、MSLの基本的考え方は委員会報告事項 製薬協の機関決定ではない

前者の事案は、医療者からの求めはMRが受け、リアクティブな形でMSLが対応するというもの。一方、後者の事案は、最初からメディカル部が主体的に未承認薬・適応外薬の対応に関わるというものだ。こうした考え方を提案する背景に、製薬協のホームページにいまも掲載されている「メディカルアフェアーズの活動に関する基本的考え方」と「メディカル・サイエンス・リエゾンの活動に関する基本的考え方」(いずれも4月1日付)の存在がある。MSL推進派の方々は、この考え方を各所で取り上げ、製薬協の公式見解だと息巻いている点だ。実は、MA、MSLそれぞれの基本的考え方とも製薬協内にある担当委員会の報告事項で、製薬協として機関決定したものではないのだという。

◎「MRは、求められても未承認薬・適応外薬に関する情報提供は原則的にしない」

医薬教育倫理協会(AMEE)は6月6日、東京都内でプレス向けに「販売情報提供活動GL」に関する説明会を開催した。AMEEは製薬企業向けにGLセミナーを東京・大阪で開催しており、90社近く、140人弱の担当者が参加したという。同日のプレス説明会では、未承認薬・適応外薬に関する情報提供について、「MRは、求められても未承認薬・適応外薬に関する情報提供は原則的にしない」と製薬企業側に説明していることが報告された。一方、医療者等から問い合わせがあった場合は、「コールセンターからの専門スタッフ(MSLでも可)による説明」や「MSLによる訪問(審査済みの回答文書)・該当論文等持参」、「回答文書(必要に応じて論文等含む)を該当医師に送付する」と提案していた。あくまで医師側から求めがあった場合を前提としている。その対応はリアクティブを基本とする。

加えて、MR活動の範囲についての考え方も示している。「MRの説明は資材の範囲内に限定することを徹底する」とし、日々の販売情報提供活動については、これを逸脱しないような対応を求めている。AMEE側は、監督部門が行うモニタリングを通じ、「MRによる不定形の未承認薬・適応外薬に関する情報提供をハンドリングすることは現実的に困難だ」という。よって業務記録は最小限とし、「MR負担の少ない日報」を想定しているのだと説明する。

◎MRが未承認薬・適応外薬の一時対応を任される可能性は高い

ただ、このスキームを運営するには課題も多い。MSLのスタッフ数もそれになりに揃える必要がある。MR1000人以上を抱える企業の場合、リアクティブな対応をメディカルが担うとしても、医師が未承認薬・適応外薬について、日々訪問するMRに質問する可能性は否定できない。結果的にMRが未承認・適応外薬の一時対応を任される可能性が高い。すなわち理想はあっても、現実のMRによる情報提供が行われている中で、MRとMSLの業務分担や線引きを行うことは難しいことを示唆している。

さらに重要な点は、情報の受け手である医師自身が、MSLという役割者を認識していないことにある。ミクス6月号の調査でも6割の勤務医はMSLという職種を理解していなかった。厚労省も今回のGL策定にあたり、医療者側がMSLについて、「その位置づけ及び活動が一律に定まっているものでない」との見解を示しており、MSLもMR同様にGLで規定する考えを明示している。製薬企業側が、いくら「MSLに売上目標を課していない」といっても、肝心の医療者が認識していない状況下では、コマーシャルと何ら見分けがつかないという訳だ。

◎顧客の声に耳を傾ける 教育や研修の体制構築こそ先行すべきではないか


すでにMRを軸とする製薬各社の営業体制が構築されているなかで、未承認薬・適応外薬の取り扱いを「MR」、「MSL」とにクリアカットに分けることは得策ではない。重要なことは、GLの趣旨を十分理解することにある。先ずMRの業務記録については、最小限に止める発想ではなく、むしろ、医師の発する声に耳を傾け、その内容を書き止め、当該製品のバリュープロポジションを向上させるための情報収集にMRは注力すべきだ。そのスキルや能力を発揮できるMR教育や研修体制の構築こそ先行すべきではないか。これまでの営業日報は「処方獲得!」など上長向けのメッセージが中心だったが、今回のGLの趣旨を理解するならば、それは医療者に寄り添いながら、自社製品の価値を医師や薬剤師と一緒になって高める活動に転換することに他ならない。

未承認薬・適応外薬についての対応も同じだ。実は医師がMRに質問する内容の多くが実診療に起因する事象である。患者が高齢化し、錠剤を呑めない患者も増え、懸濁や粉砕が求められるのは現場目線で言えば当たりまえのことになる。さらに、複数の合併症を抱える高齢患者の場合、腎機能が低下した事例に対し、承認用量を下回るドーズでの投与の妥当性をMRに質問することも日常あるだろう。こうした課題や口頭ベースの質問についてMRは、先の業務記録に残し、本社に報告する業務に注力すべきだ。と同時に、本社の監督部門もMRからの業務記録を分析し、必要に応じて、次なる情報提供を検討する材料として活用すべきだ。業界内からは「MRの業務記録なんて使えない」と吐き捨てるような意見を聞くことがある。同じ企業・業界でありながら、こうもMRを信用していないのかと落胆することもある。

今回のGLは、むしろMRの業務を見直すきっかけにもなるのではないだろうか。業務記録は社内における公文書でもある。虚偽報告への対応なども必要だ。社内カルチャーの醸成も同時に求められる。いまはMRの役割再生とともに、社内業務報告システムの整備や人財教育・育成にこそ優先課題として取り組むべきではないだろうか。MR活動に絡むメディカル部やMSLの役割も重要案件ではあるが、いまMR、MSLの覇権争いをしているタイミングではない。(沼田佳之)
 
 



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