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中医協薬価専門部会 製薬業界が新薬創出等加算の拡充を要望 診療・支払各側とも拒否の構え

公開日時 2019/07/25 03:53
日米欧の製薬団体は7月24日に開かれた中医協薬価専門部会で、意見陳述に臨み、新薬創出等加算の要件見直しなどを主張した。欧米製薬団体は、2018年度薬価制度抜本改革により新薬創出等加算が見直された結果、開発投資計画が見直され、優先順位が下がったなどの窮状を訴えた。これに対し、診療・支払各側は強く反発。診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「これまでの新薬創出等加算の要件が甘かっただけなのに、適切にしただけで日本の新薬開発における優先順位が下がるというのは、創薬を通じて健康寿命の延伸に貢献する製薬企業の姿勢として正しい姿勢と言えるのか」と糾弾。企業姿勢について質したが、窮状を伝えるにとどまる製薬団体に対し、「はっきりとした答えになっていない」と断じた。この日は、診療・支払各側とも現行の薬価制度の見直しについて「緩める」という発想はなく、逆に「強める」トーンが印象的だった。製薬業界と医療界との認識の差が浮き彫りとなり、20年度薬価改定に向けた議論の幕が開いた。

この日の中医協薬価専門部会で、日本製薬団体連合会(日薬連)、日本製薬工業協会(製薬協)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)は揃って、新薬創出等加算の見直しを訴えた。製薬協の中山讓治会長は、新薬創出等加算の見直しで対象品目は823品目(16年度)から560品目(18年度)に絞り込まれ、加算額も1060億円から810億円に減少したとの資料を提示。「次期薬価制度改革において、真に革新的新薬の創出を促進する仕組みへと改善すべく、新薬創出等加算の品目要件を拡充するとともに、企業要件の見直しを行うべき」と主張した。具体的には、品目要件として、先駆け審査指定制度や特定用途医薬品の対象品目まで対象範囲を広げるほか、追加効能や2番手以降の品目についても革新性・有用性にかかわる基準の該当性を判断すべきとした。

◎製薬業界 企業要件の見直しにも言及 ‟数の評価“は公平性に欠ける


さらに、これまで議論の俎上にあがっていなかった企業要件についても、見直しの必要性について言及した。現行制度では、国内試験の実施数や新薬収載実績などをスコア化し、3段階に区分される企業指標が用いられている。いずれの指標も“数”が評価されているとして、「企業規模の影響を強く受ける時点で公平性に欠ける」と主張。3段階の区分も、他の企業との相対評価で決まることから、「予見性に乏しい」として、廃止を求めた。創薬大国である米国ではベンチャーから革新的新薬が生み出されることを引き合いに、「(新薬開発にかけるコストが)多いか少ないかで生み出されたものの革新性を変えるというのは不合理だと思っている」(中山会長)と述べた。また、「会社は分割されたり買収されたり様々な変化がある」として、企業規模に変化のある可能性にも言及し、理解を求めた。

欧米製薬団体は、新薬創出等加算の見直しの結果、新薬開発への影響がすでに出始めていると説明した。PhRMAの原田明久在日執行委員会副委員長は、「実際に承認まで12年かかるが、予見性が保たれているのかという議論がある。実際、開発の優先順が下げられた企業や、グローバル開発に日本がすべて入っていたが入れないという案件も実際には出てきているのは確かだ」などと窮状を訴えた。EFPIAのハイケ・プリンツ副会長も、会員企業が研究開発戦略の見直しに迫られているとのデータを示し、「薬価制度が劇的に変わることで海外本社が大きくそれに注目し、また将来の展望に懸念を抱いた。日本の適切なイノベーションの評価に対する現状についても懸念を持っている」と危機感をあらわにした。

◎診療側・松本委員「数で評価は極めて自然」 支払側・吉森委員「代替プランはお持ちか?」


これに対し、診療側の松本委員は、製薬企業としての姿勢を質した。そのうえで、「適切な新薬開発のインセンティブという観点から言えば数で評価するのは極めて自然だ」と述べたうえで、公平性を担保できる要件の在り方についても聞いた。支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も松本委員に同調したうえで、新たな指標について業界の意見を聞いたが、業界は現行制度の不合理性を述べるにとどまった。

吉森委員は、「相対評価も予見性が持てないということであれば、どのようにすべきなのか代替プランをお持ちなのかを聞いたが、いまのプランはないということか」と再度質問。製薬協の中山会長は、「どれくらい開発費を投資しているかはパイプラインを分析すればできる」として、ベンチャーや小規模な企業への不合理を再度主張。これに対し、診療側の松本委員が再度、「小さな企業やバイオベンチャーであればということであれば、大企業はもう少し厳しい要件でも耐えられるということか」と質す一幕もあった。

◎支払側・幸野委員「予見可能性に乏しいとは言いすぎでは」と苦言

企業区分についても、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、製薬業界の提示した資料から9割の企業が0.9掛け以上を維持していると指摘。ベンチャーについては、開発実績によらず、区分Ⅱに該当することも指摘し、「予見可能性に乏しいということは言い過ぎではないか」と質した。

幸野委員は、焦点の一つである、新薬創出等加算対象品目を比較薬とする場合の薬価算定の見直しについても言及。「企業の評価が品目の評価に乗っている。類似薬になっているものでものせるというのは理屈上おかしい」と指摘した。新薬創出等加算の主張を最重点項目とした製薬業界側の主張は、診療・支払各側からの理解は終始得られなかった。

◎製薬業界-有用性系加算の見直し求める


製薬業界はこのほか、有用性系加算についても見直しを求めた。現行制度では、医療従事者における負担軽減・リスク低減についてキット加算で評価がされているが、有用性系加算に統合。インスリン製剤などを例にあげ、「製剤工夫などの有無にかかわらず、患者・医療従事者双方における治療上の負担軽減、治療の質向上に資する医療的価値を評価し得る要件の見直しについて検討が必要」とした。

◎診療側・今村委員「これが普通の市場原理だと思っている」

これに対し、診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は、「企業の要件性や経営的な問題で、ほとんどが価格を上げてくださいという話に結局はなっている」と指摘。そのうえで、「対象患者の数は決まっている。“数×価格”で売り上げは決まる」として、製剤の改良は「企業の競争で、これにより市場が入れ替わるのでは。これが普通の市場の原理だと思っている」との見解を表明。自身の日常診療での経験から、患者負担を意識するような変化があったとして、「価格を上げることが企業にとってメリットになるのかどうかは慎重に考えたほうがいいのではないか」と患者負担の観点からも苦言を呈した。介護負担の軽減など社会的価値についての製薬業界側の主張も、「HTAの議論でも介護費に影響するかということが客観的なデータがない。薬価の議論をするのは時期尚早ではないか」と指摘した。

一方で、診療側は政府がイノベーションを推進する必要性についても言及。Society5.0の実現によりデジタル革命が起きるなかで、製薬企業も個別化・先制医療に取り組む。こうした構造転換の変化はAMEDへの予算交付なども行われている。支払側の松本委員は、「薬価以外にもイノベーションの支援はすべき」と述べた。

◎日本ジェネリック製薬協会 改定後の薬価が改定前を超えるものは別価格に

後発品をめぐっては、20年度に価格帯の一本化が予定されるなかで、日本ジェネリック製薬協会は、「医療ニーズに応える医薬品を供給するためにも、同一価格帯のなかで改定後の薬価が改定前の薬価を超えるものを別の価格とする」ことを提案した(本誌既報)。これにより、

実際、2016年度薬価改定には80品目、18年度には124品目が改定前薬価より高い薬価となった。20年度改定では370品目が改定前薬価よりも高い薬価になる可能性があるとした。

これに対し、「薬価が上がってしまうのは非常に問題だと認識している。今後中医協でも検討すべき」(診療側・有澤賢二委員・日本薬剤師会常務理事)、「後発品の価格帯は、将来的には1価格帯に収れんすることを目指すべきだが、その過渡的な時期に、加重平均によって安いものが高くなったり、不当に引き下げられたりするのは容認できない」(支払側・幸野委員)など、診療・支払各側が、価格帯の議論の必要性を認めた。後発品をめぐる20年度改定の議論の焦点の一つに、価格帯の議論が浮上することになりそうだ。

このほか、再生医療等製品について、再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)の畠賢一郎代表理事会長は、従来の医薬品・医療機器とは製造や流通コスト構造が大きく異なるとして、「今後、再生医療等製品は別カテゴリーで、 その革新性・画期性の価値を十分に反映し得る新たな価格算定方式を検討していただきたい」と要望した。日本バイオテク協議会の塩村仁理事は、「難病・希少疾病用薬、とりわけウルトラオーファン薬は、高額算定が予見され なければ開発意欲は湧かない」として、新たな加算の創設などを訴えた。

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