厚生労働省医政局経済課は８月28日、医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議に取りまとめ案を提示し、大筋で了承された。抗菌薬・セファゾリンをきっかけに、医薬品の安定供給をめぐる課題が明るみになるなかで、安定確保について特に配慮が必要な“安定確保医薬品”については、「国も各企業の取組により積極的な関与が必要」と指摘した。疾患の重篤性や代替薬などカテゴリを踏まえ、供給不安を予防する取り組みや発生後の早期対応、事後対応のスキームを明確にする。今後、ワーキンググループを立ち上げ、議論を深める。

◎医薬品の供給不安「我が国の安全保障上の脅威」

取りまとめ案では、「医療用医薬品の安定的な供給が滞り、医療の円滑な提供に深刻な影響を及ぼすことは、我が国の安全保障上の脅威ともなる」と指摘。「医療用医薬品を安定的に確保し、切れ目のない医療供給のための取組が必要」とした。

◎安定確保医薬品　一覧表を公表へ　国がサプライチェーンを企業横断的に把握

安定確保医薬品については、①対象疾患が重篤であること、② 代替薬又は代替療法がないこと、③ 多くの患者が服用（使用）していること、④各医薬品の製造の状況（製造の難しさ、製造量等）やサプライチェーンの状況等―を現時点でカテゴリとすることを提案した。選定された品目については一覧表を公表する。

そのうえで、供給不安を①予防する、②いち早く捕捉し早期対応につなげる、③実際に供給不安に陥った―の３つのフェーズにわけ、対応策を明記した。

供給不安を予防するフェーズでは、国が各製造販売業者、原薬製造企業等の協力の下、出発原料から製品化されるまでのサプライチェーンを企業横断的に把握。これを基礎情報として対策を講じる。製薬企業側は、チェックリストを活用し、在庫の積み増しや複数ソース化、国内生産・移行などを検討する。

これまで供給不安に陥った品目については、薬価上の課題も指摘されてきた。「製造販売業者・卸売業者は、安定確保医薬品が不採算に陥ることのないよう努める」ことを明記。不採算品や基礎的医薬品を対象とした「薬価制度上の既存の仕組みを適切に活用できるよう検討する」とした。また、医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン（流通改善ガイドライン）を踏まえ、「単品単価契約など流通改善の取組みを普及徹底する」ことも明記された。このほか、医薬品の医療現場での使用のされ方は、学会の策定する診療ガイドラインが影響しているとして、「必要に応じて、診療指針等の記載内容の見直しが行われることが望ましい」とした。


◎医薬品の供給不安　国に報告する明確なルール策定へ

また、当面の対応として、「安定確保医薬品以外のものも含め、医薬品の供給不安に関する情報について、当該医薬品の製造販売業者から国に報告を求めるための明確なルール（対象範囲、報告時期等）を定める」と明記。年に１から２回製造販売業者からの報告を求める声や、理由によっては製造販売業者にペナルティを課すことも意見として盛り込まれた。また、医療現場への情報提供については、「情報の網羅性・信頼性を高める点から、各社の自主的な取組みに委ねるのには限界がある」と指摘する意見も明記。医薬品医療機器情報配信サービス（PMDAメディナビ）を活用することも盛り込まれた。

実際に安定供給に支障が出た場合は、「緊急度の高い医療機関に対して、当該医薬品やその代替薬を迅速に提供する仕組み（「安定供給スキーム」）を事前に準備する」とした。なお、抗菌薬・セファゾリンではすでに国が関与した形で安定供給を行っている。医療機関からの要請を受け、厚労省が製造販売業者と卸売販売業者との連携を促し、当該医療機関に必要な薬量が供給できるよう調整した。この時は、３病院からの要請に対応したという。

◎迫井医政局長　予算要求に向け「さらなる支援策を検討」

この日の検討会では、国内生産への移行を求める声があがり、予算措置を求める声があがった。国内生産への投資について補正予算を確保したが、厚労省医政局の迫井正深局長は、「９月末の予算要求に向けて、さらなる支援策について検討していきたい」と述べた。